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那須正幹さん未発表作品「ばあちゃんの詩」全編初公開

  • 2022年08月04日

「ズッコケ三人組」シリーズなどで知られる児童文学作家、那須正幹さん。2021年7月に亡くなりました。那須さんは、広島市出身で、3歳の時に被爆。原爆の実態を伝える作品なども数多く手がけました。そんな那須さんが書いた未発表の作品「ばあちゃんの詩(うた)」が、2021年冬、広島市で見つかりました。作品には、改めて平和への思いを持ってほしいという、那須さんの願いが込められていました。

広島放送局 取材・撮影 カメラマン  中野夏実
取材・朗読 アナウンサー 安藤結衣

那須さんの未発表作品「ばあちゃんの詩」全編の朗読映像

今回、NHKの取材を通じて、初めて「ばあちゃんの詩」の内容を公開させていただくことになりました。広島県内で撮影した、作品全編の朗読動画です。

「ばあちゃんの詩」に込められた平和への思い

那須正幹さんが残した未発表作品「ばあちゃんの詩」。

主に登場するのは、孫の「ぼく」と「ばあちゃん」。「ぼく」が、原爆で亡くなった「ばあちゃんの兄ちゃん」と、間違えられるようになるという物語です。作品には、家族を亡くした人の悲しみや苦しみが何年たっても消えないことが日常生活を通して描かれています。

那須正幹さん

那須さんは、3歳のときに広島市で被爆。原爆症に苦しむ父親を目の当たりにしてきました。その後児童文学作家となった那須さんは、原爆に関する作品も数多く残しました。そして、被爆70年にあわせた歌の作詞を依頼されました。

那須さんの妻 美佐子さん
「(那須さんは)歌詞は書いたことはないけど、書くことは好きだからさらさらって書いたみたいでした」

那須さんは、およそ3か月で2つの歌詞を完成させました。そのうちの一つが、「ばあちゃんの詩」でした。しかし、「ばあちゃんの詩」は小説的な文章だったため、採用されませんでした。

那須さんに作詞を依頼した、山本真治さんです。那須さんの死後、自分の手元に残っている「ばあちゃんの詩」のことを思い出しました。

山本真治さん
「先生が送ってくださった作品が残ってたなと思って探したので、見つかったときは、すごくうれしかったですね」

改めて「ばあちゃんの詩」を読んだ山本さん。自分も似た経験をしたことを思い出しました。

山本さんの祖母・ユキミさんです。長男と長女を原爆で亡くしました。2人の遺骨は見つからず、ユキミさんは戦後も手がかりを探し続けました。そして晩年、ユキミさんは、孫の山本さんのことを、19歳で亡くなった長男・稔明(としあき)さんと間違えるようになりました。

山本真治さん
「おばあちゃんが “稔明” って言うんですね。え…って。稔明って誰だって。よく考えたら自分(祖母)の亡くなった長男、自分の息子のことだった。それと僕を間違えたんです。子どもを思う親っていうのね、いつまでたっても消えないんだなと思いましたね」

那須さんの作品をきっかけに祖母のユキミさんへの思いが強くなった山本さん。亡くなった稔明さんの名前が刻まれている慰霊碑を、祖母の写真とともに初めて訪れました。

慰霊碑に飾られた 祖母・ユキミさんの写真

久しぶりの家族の再会です。

山本真治さん
「実際にあてはまる家族も今いるかもしれないと思ってる。過去のことではなくて、続いているんだっていうことを、うまく言えないですが、考えてほしい。平和について考える。戦争はだめだって考えること。そういう心の持ち方が大切だということを那須先生が暗に表したかったのかな」

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