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どうなる地方鉄道 赤字路線“JR芸備線”の行く末は

  • 2022年06月02日

    「100円の収入を得るためにかかる費用はなんと2万5416円」。
    広島駅から岡山県新見市の備中神代駅を結ぶJR芸備線は全長159.1キロ。
    地域の過疎化が進み、利用客の減少が続く山間部では、厳しい収支が明らかになりました。
    地域住民からは、廃線になるのではないか、という懸念の声が聞こえます。
    地元では少しでも利用客を増やそうと取り組みが続けられています。 

    (広島放送局 榎嶋愛理記者)

    【1日平均利用客はわずか11人】

    山間部を走る広島県庄原市の東城駅と備後落合駅の25キロあまりの区間は、
    1キロあたり1日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度(2019年度)」の実績は
    わずか11人と、JR西日本管内で最も少なくなっています。

    JR西日本は、輸送密度が2000人未満をひとつの基準としていて、芸備線のこうした区間では、鉄道の強みである大量輸送の役割を果たせていないとしています。

    【利用促進へ動き出した地元】

    庄原市で生まれ育った住田則雄さんは、自宅の目の前にある畑の間を芸備線が走っています。
    住田さんは芸備線が維持されるのか、危機感を強めています。

    住田則雄さん

    4年前の西日本豪雨で橋が流されるなどの被害を受け、全線が再開するまで1年以上かかったときに、地元住民の間で交わされた会話がきっかけでした。

    「被災して止まっても、それでも困らなかったよね」

    その後、芸備線の厳しい利用状況が伝えられるようになり、去年8月からはJR西日本と沿線自治体が利用促進に向けた検討会が立ち上がりました。
    地元住民の関心を高め、少しでも利用を増やすことができないか。
    住田さんは地元の有志とともに、動き出しました。

    カープのラッピング列車

    その1つがカープのラッピング列車を走らせることです。
    “たる募金”による寄付で300万円以上を集め、実現しました。
    去年11月、初めての運行の日、駅や車内は多くの人であふれていました。
    住田さんは、地元でも芸備線のことが話題になることが増えたと一定の手応えを感じています。

    しかし、半年たった今、カープ号を目当てにした観光客は増えたものの、通勤や通学で
    日常的に利用する人はほとんど増えていないのが現状です。

    (住田則雄さん)
    「カープ号を見ると元気が出るとか、走っているのを見たよと声をかけてくれる人はいます。ただ見るだけじゃだめよといっているんです。乗らないと意味はないんだよと」
     

    【通勤・通学客をどう増やすか】

    こうした現状に、地元自治体の庄原市も動き出しています。
    庄原市役所の近くには備後庄原駅がありますが、およそ400人いる市の職員で芸備線を日常的に通勤で使っているのは、わずか1、2人。

    備後庄原駅を降り立つ市職員

    このため、市の職員が率先して通勤での利用を増やそうと、ことし3月から「利用促進デー」を設けました。月に2回、通勤で利用する取り組みで、およそ50人が参加しています。
    さらに、利用の輪を地元企業にも広げようと、商工会議所に呼びかけを始めています。
     

    (利用した市の職員)
    「芸備線がいつまでも私たちのそばにあってほしいし、少しでも力になればと思って利用している」

    【突きつけられる地元の覚悟】

    5月11日に開かれたJR西日本と沿線自治体の第4回の利用促進に向けた検討会議。
     

    5月11日 利用促進に向けた検討会議

    会議が終わろうとしたそのとき、JRの担当者から突如、新たな提案が出されました。

    (JR西日本担当者)
    「利用促進の取り組みを行っても、地域の足としての利用に十分に結びつけることができなかったと受け止めている。今後は利用促進にとどまらず、前提を置かずに、地域の実情を踏まえた将来の地域公共交通の姿についても、速やかに議論を開始させたい」

    利用促進だけではなく、バスへの転換や廃線も含めて、公共交通そのもののあり方を議論したという提案は、沿線自治体にとっては寝耳に水のことでした。

    利用促進に取り組んでも乗客が増えないのであれば、
    次のステージの議論を行いたいとするJR西日本。
    一方で、利用客を増やすには時間がかかり、
    あくまで利用促進の議論にこだわる地元自治体。

    地域の公共交通のあり方をめぐって、今後どのような議論が進められるのか、注目が集まっています。          
     

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