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加速する円安 広島県で生活にも影響広がる

  • 2022年04月26日

    「1ドル=129円台に。20年ぶりの円安水準を更新」。
    3月初旬から4月20日までの1か月半ほどでおよそ15円も円安が進みました。
    私たちの暮らしにも影響が出始めています。
    (広島放送局記者 渡邊貴大 榎嶋愛理)

    円安でどう変わる?

    円安は、海外への輸出には有利に働きます。

    その一方で、海外から輸入する価格は増えてしまいます。
    例えば、1ドルのものを買うのにかかるお金は、3月はじめは115円だったのに対し、円安が進んだ4月20日は129円払わなければなりません。つまり、海外から輸入して国内で販売する企業にとっては、円安が進めばコスト増加につながります。

    2022年4月20日

    毎朝のコーヒーも

    広島県呉市にあるコーヒー豆専門店です。ブラジルやコロンビア、それにインドネシアなど20か国からコーヒー豆を輸入し、自家焙煎して販売しています。50年以上続くこの店では、これまで経験したことのない仕入れコストの上昇に直面しています。

    ブラジルのコーヒー畑

    去年の夏から、世界最大の産地ブラジルで、霜の影響で不作となり仕入れ価格の値上がりが続いていました。そこに追い打ちをかけるように円安が加速。
    仕入れ価格は、去年7月と比べると、なんと2倍以上になっています。

    「昴珈琲店」細野修平社長

    「いわゆるダブルパンチです。輸入品目の価格は今どんどん上昇しているんですけど、円安がずっと進行して大変厳しい状況です」

     

    現在は、価格を据え置いていますが、今ある在庫がなくなり、このまま円安が続いた場合、値上げも検討せざるを得ないと考えています。
    この店が選ぶ豆を信頼する固定客が多いこともあって、店では値上げには一定の理解が得られると考えていますが、その分、サービスの充実を図っていきたいとしています。

    細野修平社長
    「販売価格を上げるとしてもどこでお客さんに納得してもらうかが重要だと思います。飲んだときにお客さんがうなずけるものだというところが大事なので、そこを確保できるようにやっていきたい」

    私たちの住まいも

    多くを海外からの輸入に頼る住宅用の木材も影響は深刻です。

    呉市の大手製材メーカーでは、「はり」や柱に使う木材のうち、およそ6割をアメリカから輸入しています。木材価格は、世界的に木材が不足するいわゆる「ウッドショック」の影響で高止まりの状態でしたが、円安の影響で再び上昇。1年前と比べて、アメリカからの仕入れ価格は2倍に値上がりしています。

    中国木材 堀川智子社長

    「木材の調達コストはいままで見たことがないような価格になっています。わが社のように原料を輸入に頼っている企業にとって、円安の恩恵は全く無くて、コストの重みだけが増しています」

    ロシアによるウクライナ侵攻によって、日本に入ってくるロシア産やヨーロッパ産の木材が供給不足になっているため、国内では住宅用の木材の引き合いは強まっているといいます。このため、この会社では為替の影響を抑え、安定的な収益を上げるため、国産の木材の割合を今の4割からさらに増やすことにしています。

    堀川智子社長
    「木材が実際にアメリカから調達できるまでタイムラグがあるので、円安の影響はいまからさらに広がると考えています。国産の木材は為替の影響を受けませんので、より一層、力を入れていきたいと考えております」

    広がる生活への影響

    急速に進む円安について、広島経済大学副学長で財政学が専門の一橋信之教授は、海外進出が進み、生産構造が変わったため、製造業でもメリットが少なくなっていると指摘しています。

    広島経済大学 一橋信之教授
    「本来、広島県内で盛んな製造業などは、国内で生産して輸出を行えば、円安によって利益が増えるはずだが、近年は海外に生産拠点をうつしているケースが多いため、多くの企業で円安の恩恵を受けにくくなっている」

    その上で、私たちの暮らしに身近なものへ影響が広がっていくと指摘します。

    広島経済大学 一橋信之教授
    「すぐに影響が出るのは、仕入れたままの形で販売する海外ブランド品のバッグや時計、それに輸入ワインなどです。さらに、大部分を輸入している食料品も影響を受けやすくなります。例えば、輸入した小麦を使うパンやお好み焼きなどがあげられます。さらに、国内産の豚肉や牛肉でも値上がりの可能性があります。エサの多くを海外から輸入しているためです」

    これまでも原材料高や原油高で生活に身近な様々なものが値上がりしていますが、円安によって、さらに家計への影響が広がりそうです。

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