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ウクライナ 生き残って復興を 平和公園ロシア語ガイドの思い

かつて見たキーウの空は青かった
  • 2022年04月01日

学生時代にウクライナでロシア語を学び、現地の人の温かさに触れた日本人。習得したロシア語を生かして通訳ガイドを務めている平和公園では、「原爆の子の像」で涙を流す姿を目にしてきました。
そしてウクライナへの軍事侵攻。ガイドの女性は、こう語ります。「広島が平和都市として復活したことをいつも語ってきた。ウクライナの人たちも、必ず生き残り自分たちが街を生き返らせたんだと人々に語って欲しい。それが私の願いです」

(広島放送局記者 石川拳太朗)

親しんだキエフの街が

現在、広島市西区に住む橋村ますみさん(47)。
日本語の先生になりたいと広島大学の日本語教育学科で学んでいた最中に、チョルノービリ(チェルノブイリ)関係の支援をしている団体と知り合ったことがきっかけで、現地で日本語を教えつつロシア語を学ぶ機会を得て、キーウの言語大学に留学しました。現地では通算2年ほど学びました。

橋村さん
「キーウで2年間過ごしていろんな人に優しくしてもらった記憶があります。また、キーウは空がすごく青いという印象があって、緑がたくさんあって、市場に色とりどりのフルーツが売られていて、いろいろな意味で賑やかな目で見ても楽しい街でした」

しかし、ロシアによる軍事侵攻で、かつて過ごした街が廃虚のようになり、灰色の煙が立ち上る映像に大きな衝撃を受けています。

独立広場

橋村さん
「毎日のように中継が入っている独立広場は、大学に行くときに歩いて通ったり、散歩したり、友達と待ち合わせをして遊びに行ったり、そういう場所だった。あそこから戦争に関する中継が入ること自体ショックですし、現地の知り合いの人とか友達は今どうしているんだろう、あの映像を見るたびに心配でたまらない」

ロシア語でロシア人も案内

橋村さんは「ひろしま通訳・ガイド協会」に所属しています。広島市の平和公園でロシアの人たちを案内したこともあります。特に、2歳で被爆し白血病のため12歳で亡くなった佐々木禎子さんが、回復を願って鶴を折り続けた話は、ロシア人の間でもよく知られているそうです。
 

平和公園にある原爆の子の像

橋村さん
「ロシアの方は広島の歴史にすごく興味があります。佐々木禎子さんの折り鶴の話は、現地の小学校の教科書にのっていたりするみたいで、小学生のころ読んだという人が大勢いて、すごく詳しいんです。案内すると、目に涙を浮かべる人もたくさんいました。冷戦があったので、アメリカが原爆を落としたことを学校でも教えられていたらしいんですね。平和公園を見学したあと、皆さん口をそろえて言われます『絶対こんなことやってはいけないんだ』と」

“ロシア人の思いも踏みにじる発言”

ロシアのプーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻を続け、核兵器の使用の可能性をもちらつかせています。こうした状況について、橋村さんは表情をこわばらせながら、「ロシアの人々の思いを踏みにじる発言だ」と言います。 

橋村さん
「核兵器を持っていること自体いいことではないですけど、それを使うと言って脅しの道具に使うというのはあってはならないことだと思いますし、絶対に許されません。一般のロシア人の人たちは戦争を望んでいない人が大半だと思うんです。プーチン大統領の発言は、ロシア国民の気持ちも踏みにじる発言だと思います。また、日本にもロシア人がたくさん住んでいるますが、絶対にその人たちが偏見や差別の目で見られることがないようにと、いつも心配しています」

街を生き返らせて!

ウクライナ、そしてロシアの双方の人々と交流してきた橋村さん。広島に生きる市民として、伝えられることがあると語ります。

橋村さん
「少し前まではインターネットもなくて、広島と言ったら原爆でやられてしまって焼け野原になっていまでもそんな感じで残っているんじゃないかと想像される方もわりといました。実際に広島に来ると普通の町で驚く人が多いんです。ガイドとしては、広島の人が原爆を投下されたあと頑張ってここまで町を復興して平和都市として復活したことをいつも力説させてもらっています」

今、ウクライナの青い空は灰色に変わり、街が次々と戦場と化しています。
橋村さんは、現地の人たちに、なんとしても生きて被害を受けた街を復興してもらいたいと願っています。

橋村さん
「ウクライナの人たちには絶対に死なずに生きてほしい。このあと戦争が終わった後に再建され、復興したウクライナの姿を必ず生き残って見て欲しい、そして自分たちがこうして街を生き返らせたんだと後の人たちに語って欲しい、それが私の願いです」

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