2020年03月18日 (水)カープ番記者ブログ "内野の華"争う田中広輔と小園
小園海斗選手「負けたくない。全力でぶつかりたい」
田中広輔選手「もっともっと僕を脅かすような、突き上げがほしいですね」
春のキャンプから注目してきたのが“内野の華”と言われるショートのポジションを争う2人の選手。リーグ3連覇を支えたものの昨季は不振と手術を経験し再起を期す新選手会長の田中広輔選手。そして去年高校卒業1年目ながら58試合に出場した小園海斗選手です。互いに高めあいつつ、一歩も譲れない2人の競争を追いました。(カープ担当・松山翔平)
【明暗分かれた昨季】
昨季、田中選手と小園選手の明暗ははっきり分かれました。
田中選手は6年目の昨季も開幕から「1番ショート」で先発出場。しかし序盤から深刻な打撃不振に陥り、97試合の出場で打率1割9分3厘と低迷。6月には平成27年から続いていたフルイニング出場も635試合で途切れました。その後も状態は上がらず、8月には、勤続疲労で痛みが続いていた右ひざの半月板を部分除去する手術に踏み切り、地道なリハビリも続きました。
田中選手「悔しいシーズンではあったが自分が招いたこと。自分の技術がもう少しあれば、カバーできた部分もあるんじゃないかなと思う。右ひざは、続けててもよくならない症状だったので、登録抹消されたときには手術すると決めていた。迷いはなかった」
代わってショートに抜擢されたのが小園選手でした。高校卒業1年目ながら58試合に出場し、ホームランも4本をマーク。若手を2軍でじっくり育てる”育成の広島”としては異例の活躍を見せるとともに、そのはつらつとしたプレーに豊かな将来性も感じさせました。
【田中広輔 順調な回復】
迎えたことしの春のキャンプ、田中選手は再起を期して臨みました。調整を自身に任される主力も多い中、若手に交じって初日からすべてのメニューをこなしました。
その中でも力を入れたのが基礎的な守備の練習です。とりわけ鍛え抜いたのは下半身。「疲れて足が動かなくなったときに、いかに力を抜けるか、基本を丁寧にできるか」をテーマにキャンプでの守備練習に臨んだ田中選手。居残りで40分間にわたってゴロを受け続けるるなど徹底的に下半身に負荷を与える日も。手術した右ひざも順調な回復ぶりを伺わせました。
田中選手「けがのことを気にしながらは動いているが、自分の思った以上にしっかりと動けていた。去年は何をするにも右ひざが痛かった。そういうストレスがないので、それだけでも十分いいかなと思う。もう1回しっかりと、自分の仕事を1年間、最後までするんだという強い気持ちを持っている」
【田中広輔 選手会長として】
そして今季からは、選手会長としてチーム全体の目配りをすることも新たに求められています。練習では、若手も含めいろいろな選手に話しかける場面も多く見られました。自分のことだけではなく、チームがどうしたらいい方向に向くかも考えています。
田中選手「1番はやっぱりチームが勝つこと。1人でも多く自己犠牲ができる選手が出るように。あまり自分から発信するタイプではなかったので難しい部分ではあるが、少しずつ厳しいことも言わなきゃいけない」
【小園 体も大きく飛距離も伸びる】
一方の小園選手。伸び盛りの19歳はカープ伝統の厳しい練習を1年経験し、下半身を中心に体が一回り大きくなった印象。そのことについて聞くとうれしそうに笑顔を見せ。
小園選手「めちゃめちゃ大きくなったわけじゃないんですけど、野球をやっているだけで大きくなっちゃいました。自慢の部分は、ケツです。もちろん!」
そんな小園選手が田中選手からレギュラーを奪うには、すべての面でのレベルアップが欠かせません。キャンプでは連日の早出・居残り練習で、徹底的に技術を磨いてきました。
中でも成長を印象づけたのがバッティング。去年秋のキャンプから徹底してバットを振り込んできた成果と、大きくなった下半身でスイングも鋭さを増しました。小園選手自身も「去年よりはかなり飛んでいる実感はある」と話すとおり、紅白戦や練習試合、オープン戦と、長打力もアピールしました。
【小園 “粘り”で変化】
さらに変化したのが「粘り」です。キャンプの実践でも追い込まれてから粘ってヒットにつなげる場面が見られました。それを可能にしているのが打席の立ち位置。これまでより30センチほどキャッチャー寄り、打席の一番後ろに立つようになりました。課題だった低めの変化球を見極めるための大胆な変更で、これまでよりボールを長く見られるようになったといいます。
小園選手「打率を残すには“粘り”や“選球眼”が1番求められると思う。(打席位置を変えることで)最初はちょっと変な感じがしましたけど、ワンバウンドのボールの見極めなどが徐々にできてきてる。積極的に振っていく自分の持ち味は忘れずに、その中でしっかりボール球の見極めをしていきたい」
【ショート争いの行方は】
小園選手はチームの方針で、オープン戦ではショート以外のポジションにも挑戦していますが、ショートについて聞くと田中選手への闘争心を隠しません。
小園選手「ショートとしてずっと出たい思いは強い。負けたくない気持ちはすごくあるので、本当に全力でぶつかっていきたい」
一方、開幕を前にショートのレギュラーを確実にしている田中選手。本来の安定したプレーを取り戻した30歳はまだまだ定位置を譲るつもりはありません。
田中選手「まだまだ僕はそんなに焦らないですし、もっともっと僕を脅かすような、突き上げがほしいですね。そこでしっかりと壁になれるような先輩になりたいですね」
【異例の開幕延期も前を向く】
今シーズンのプロ野球は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、シーズン開幕が延期に。それでも2人は前を向いて調整を続けています。
小園選手「何が起きるかわからない状況で難しい感じはあるが、いつでも開幕できるように気持ちの面で準備していきたい」
田中選手「早く収束してくれるのを望みながら、しっかり調整していくだけ。ファンの皆さんは開幕するのを楽しみに、今はグッとこらえて待っててほしい」
異例のシーズンとなる中、リーグ優勝奪還と日本一を目指す広島。2人の活躍がチーム浮上のカギを握ります。 (カープ担当・松山翔平)
投稿者:☆更新スタッフ | 投稿時間:19:00