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ひきこもり 第1回 福祉ビデオでひきこもりの回復事例を学ぶ

2017年09月04日(月)

 ひきこもり 第1回 福祉ビデオでひきこもりの回復事例を学ぶ

きこもり
第1回 福祉ビデオでひきこもりの回復事例を学ぶ

多様な視点から理解を広げる
▼イメージではなく、“実像”を知る
第1回 第2回 第3回 第4回

 


Webライターの木下です。


多様な視点から理解を広げる


20170830_hiki001_nhklogo.jpg今年4月、NHK厚生文化事業団は、福祉ビデオシリーズの最新作として『ひきこもりからの回復』をリリースしました。

学術的な講義形式ではなく、ハートネットTVの制作経験のある番組ディレクターが当事者や家族、支援者などに取材し、専門医がそのVTRに丁寧にコメントを加えるというスタジオ番組形式の実用的なビデオです。司会は福祉ジャーナリストの町永俊雄さん、コメンテーターは長年ひきこもりの医療と支援に携わってきた精神科医の斎藤環さんです。ビデオは全3巻構成のDVDで、NHK厚生文化事業団の『福祉ライブラリー』のラインナップに加えられ、どなたでも無料で借りることができます(※送料のみご負担)。

20170830_hiki003_nhklogo.png司会:町永俊雄(福祉ジャーナリスト) 20170830_hiki002_nhklogo.png監修者:斎藤環さん(筑波大学 教授)

 

『ひきこもりからの回復』

第1巻「私がひきこもった理由~回復へのヒントを探る~」(91分)
第2巻「我が子がひきこもったとき~家族の役割と支援~」(73分)
第3巻「あなたは一人じゃない~様々な支援の形・地域編~」(72分)


3巻ともすべて回復に向かうための考え方やノウハウを学ぶためのものですが、第1巻は《ひきこもり本人の視点から》、第2巻は《家族の視点から》、第3巻は《支援者の視点から》と、多様な視点から課題を理解できる構成になっています。

映像はトータルで236分というボリュームのある長さになっています。VTRでは、さまざまな当事者や家族の思い、自助グループや家族会などの居場所づくりの様子、自治体や地域の最新動向などが盛りだくさんに紹介されます。スタジオでは、ひきこもりを理解するための基礎的な視座、ひきこもり状態から社会復帰に至るまでの段階的な支援のあり方がわかりやすく語られます。また、「女性のひきこもり」や「ひきこもりの高年齢化」など、これまで見過ごされがちだった最新のひきこもり事情についても紹介されます。さらにVTRに登場する当事者や支援者もスタジオにゲストとして招き、Q&A形式で、家族の疑問に答えるコーナーも設けています。

今回のブログでは、このビデオの見所やポイントを紹介しながら、4回にわたって《ひきこもり》について考えてみたいと思います。


イメージではなく、“実像”を知る


私たちは《ひきこもり》について知りたいと思っても、本人は社会との接点を絶っていますし、家族は周囲には語りたがりません。身内にひきこもっている人間がいない限りは、日常生活の中で、ひきこもりを理解する機会はほとんどありません。また、メディアにおいては、ひきこもりの青年が起こした事件のセンセーショナルな報道やテレビドラマによってステレオタイプのひきこもり像が流布されることもあります。実像があいまいなわりには、予断や偏見からイメージだけが独り歩きしているというのが現状ではないでしょうか。

 ひきこもりの定義 
・6か月以上社会参加していない。
・外出していても対人関係がない。
・統合失調症とは一線を画した非精神病性の現象。

(厚生労働省『ひきこもりの評価と支援に関するガイドライン』)より


内閣府の調査によると「ひきこもっている人」の数は54
万人余りになると推計されています。しかし、支援現場や専門家の間では実際には100万人近い人がひきこもっているのではないかと言われています。
決して、特殊な事例とは言えません。しかし、ひきこもりに関する情報が限られているために、ひきこもっている本人も家族も、何が起きているのか理解できないでいることがあるようです。斎藤環さんによれば、「こんな生き方をしているのは自分だけだ」「自分は最低の人間だ」「こんな事態に陥っているのは我が家だけだ」という当事者の嘆きの声は、臨床現場で始終聞かれると言います。当事者でも、戸惑いの中に置かれるわけで、まして部外者ではその実像を把握するのは難しいと言えます。

今回のビデオを通じて、さまざまなひきこもりの本人や家族の具体像に触れれば、共感の輪が広がり、理解も進むのではないでしょうか。文部科学省は、1992年に「《不登校》は特定の子どもに特有の問題があることによって起こるのではなく誰にでも起こりうる」という宣言を出しましたが、《ひきこもり》もまったく事情は同じです。このビデオは当事者の方たちにとって、貴重なヒントや情報を得てもらうものではありますが、一般の方たちの理解を深めてもらうためにも有効に活用していただけます。また、ひきこもり状態になくとも、「子どもが挫折体験に苦しんでいる」という家族の方たちにとっても、学ぶことの多いビデオだと思われます。

20170830_hiki004_nhklogo.png

VTR映像を掘り下げて解説するスタジオの様子。左から町永さん・斎藤さん・林恭子さん(不登校・ひきこもりの経験者)


 

木下 真

▼関連ブログ記事
 ひきこもり(全4回)
  第1回 福祉ビデオでひきこもりの回復事例を学ぶ

  第2回 「私がひきこもった理由」(第1巻):本人の視点から考える
  第3回 「我が子がひきこもったとき」(第2巻):家族の視点から
       第4回 支援者の視点から


★NHK厚生文化事業団・福祉ビデオライブラリー
 『ひきこもりからの回復』DVD3巻を無償で貸し出しています(※送料のみご負担)
 ※貸出しについては「NHK厚生文化事業団」のホームページをご覧ください。

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