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うるう年に始まった「世界希少・難治性疾患の日」 もっと知ってほしい、つながってほしい

2018年02月20日(火)

20180220_RDD001.jpg2月28日は、「世界希少・難治性疾患の日」。
英語ではRare Disease Day、RDDと略されます。より良い診断や治療による患者さんの生活の質の向上とともに、患者さんと社会との間の架け橋となることを目指して、スウェーデンで2008年から始まった活動です。2010年から日本も趣旨に賛同し、活動に参加。今年は全国39か所で2月の最終日に向けてイベントを開催します。

希少・難治性疾患とは、患者数が少ないことや、病気のメカニズムが複雑なことなどから、治療・創薬の研究が進まない疾患のことであり、日本には指定難病に認定されている患者数だけでも100万人はいると言われています。今回は、この記念日の意義について、日本開催事務局でお話をうかがいました。※全国の公認開催地のイベント日程については、「世界希少・難治性疾患の日」のホームページでご確認いただけます。

 
執筆者:木下 真(Webライター)

 




世界95か国以上が参加するグローバルなイベント

 
RDD誕生のきっかけとなったのは、スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究者が患者会のメンバーとお茶を飲みながら、「来年はうるう年でRare(希少)だから、希少疾患(Rare Disease)とひっかけると記念日ができるのではないか」と交わした、たわいない冗談でした。そんな軽いノリで始めたイベントでしたが、いまや95か国以上が参加するグローバルなイベントに発展しています。

今年の日本のテーマは、「つながるちから Take Action Now!」。一人ひとりが踏み出して何かをやるだけではなく、立場の異なる人とも手を取り合って、互いを尊重しながら、より強い力にしていこうというアクティブな呼びかけです。


誰でもが関心をもてる楽しい記念日に


20180220_RDD002.JPG事務局長の西村由希子さん


日本開催事務局の事務局長である西村由希子さんは、「希少・難治性疾患に関する課題が重いものであることはわかっていますが、記念日のイベント自体は誰でも参加したくなるような楽しいものにしたいと思っています」と語ります。
毎年の東京でのイベントのプログラムには、講演会やパネル展示のような主催者側からの啓発を促すものだけではなく、ワークショップや患者の方の演奏やパフォーマンスをかならず入れて、参加型のイベントにしています。


20180220_RDD004.JPGALS患者と透明文字盤を使って会話する


2017年のイベントでは、ひらがなの印刷された透明文字盤越しに目線を追って、ALS患者とコミュニケーションを取るというワークショップが行われました。参加者同士が目線の先にある文字を読み取ることに成功すると、相手と気持ちが通じ合ったという喜びで会場は盛り上がります。知識だけではなく、そういう体験を持ち帰ってもらうことが、大切だと考えています。


 

個別の活動をしている人々が出会う場に


 RDDに日本が参加するようになったのは記念日創設の2年後でした。発端となったのは事務局長である西村さんが、2008年にアメリカのワシントンD.C.で開催された国際希少・難治性疾患創薬会議(ICORD)に出席したことでした。そこで知ったRDDの活動に関心をもち、帰国してすぐに準備にかかり、検討を重ねながら、協力者を募り、2010年から参加することになりました。

開催時の日本事務局のスタッフには、患者本人や家族、研究者、会社員など、多様な立場の人々が参加しました。RDDは、誰でもかかわることのできる間口の広さによって、「希少・難治性疾患と無縁だった人々への啓発」とともに、「個別の分野で活動している人々がつながりをもつこと」に意義を求める活動です。


20180220_RDD003.JPG2017年度RDD東京の会場風景


「全国各地でイベントが開かれますが、場合によっては患者が運営メンバーに入っていなくてもかまわない」と事務局長の西村さんは言います。当事者の視点は重要ですが、「研究者だけのRDD」、「行政だけのRDD」、「一般の人だけのRDD」があったとしても、それが最終的には同じゴールをめざし、理解や支援の輪を広げることに大きな意味があるのだと言います。



過渡期を迎えている難病支援


事務局長の西村さんが活動をスタートさせるときに、スタッフと確認したのは、「やり始めたら、途中でやめない」ということでした。イベントの規模を大きくして、一時的なブームを作ったり、煽ったりしただけで終わることのないように、地味な活動でも継続させることが重要だと考えていました。しかし、開催時には全国で3か所だったイベントは、現在では39か所にまで増えました。10年を経ることなく、全国規模のイベントに発展したのは、予想をはるかに超えた成果であり、それだけ必要とされていた活動だったことに気づかされたと言います。

これまで、希少・難治性疾患の人々の活動を支えてきたのは、主に同じ病気の人たちの患者会でした。同じ病気の人々の支え合いや交流の重要性は失われることはありませんが、70年代に中心を担った主要メンバーが高齢化するなど世代交代の新しい動きも起きています。また、いま全国では「難病カフェ」の活動などが始まり、病気の種別を超えて、共通する困難を抱えた人たちが力を合わせる活動も始まっています。さらに、2015年にはいわゆる難病法が施行されるなど、制度的にも変革が起きています。

 

新しい出会いと学びの場に足を運んでもらいたい


 「いろいろな意味でいまは過渡期にあります。これから時代に即した新たな動きが生まれてくるのだと思います。でも、既存の患者会や支援団体が、その新たな動きによって力を失っていくようなことがあってはならないわけで、RDDは、そういう既存の団体が活動の成果を持ち寄って、さらなる出会いが生まれる場所になればと思っています。また、それまで難病について無縁だった一般の人たちも、ともかくRDDの会場に足を運んでいただければと思います。自分も誰かの役に立ちたいと考える人があれば、その日にボランティアとして加わってもらうこともできます」

日本でRDDが開催されるようになって、今年で9年目を迎えますが、事務局長の西村さんは、毎年新しい出会いと、新しい学びを経験してきたと言います。今年も「つながるちから Take Action Now!」というテーマにふさわしい、人々の交流の輪が生まれることを期待しています。

 

RDD2018「つながるちから take action NOW!」
 開催日時:2018年2月28日(水)11:00 - 21:00

 開催場所:新丸ビル3FRare Disease Day アトリウム(東京都千代田区丸の内1-5-1)
 主催:日本開催事務局 (特定非営利活動法人ASrid内)

※詳細は「Rare Disease Day レアディジーズデイ 世界希少・難治性疾患の日」のホームページをご覧ください。

 

コメント

RDDをはじめまだまだ難病についてメディアは「見た目が普通のひと」について取り上げないように思います。
もっと身近にいるんだということを知って欲しいとおもいます。
指定難病に認定されているひとが人口の1パーセント程度だと大きな企業だと100人の事業所規模で1名はいることになりますが障害者手帳を所持していて自治体の医療費助成を受けているひとはわざわざ国の指定難病の申請をしないでしょうからきっと全国に2倍の200万人以上はいるのではないでしょうか?

同僚や後輩など身近に存在していてなんかあのひと体調悪くて休んだり入院したりするなと思ったら「ちょっとなにか手伝えることない?」って歩み寄ってください。
若い世代は特にこれから先の40年・50年と残りの人生が長いです。
生涯にわたって医療費助成以外にも医療費以外の交通費・衛生用品自費でかかる衛生用品など家計の負担は大きいです。
自分は指定難病になる前は県外通院もあり交通費含めて年間60万円ほどかかっていました。

働き方改革含め真剣にもっときちんとした政策ができることを期待したいです。

投稿:Nozomi 2018年02月23日(金曜日) 10時33分

感動しました。とても素晴らしい活動だと思います。もっとこの活動を知りたい。
これからも患者が社会との架け橋になってください。
28日に会場に行きます。

投稿:kaoru 2018年02月21日(水曜日) 17時40分

難病に対して、このような 画期的な、活動をされていることに感動しました!

投稿:みきてぃJr. 2018年02月21日(水曜日) 17時30分