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【チエノバ】山本潤「『私の責任じゃない』と思えることがすごく大事」

2017年07月21日(金)

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 2017年7月6日放送
 WEB連動企画“チエノバ” 性暴力被害

ご出演の山本潤さんに放送終了後、お話をうかがいました。

山本潤《山本 潤さんプロフィール》13歳から7年間に渡り、父親から性暴力を受けたサバイバー。2017年春、その体験を実名で出版。SANE(性暴力被害者支援看護師)として支援者の育成にも携わる。

 

―― 今回、放送でご紹介しきれなかったものも含め、被害を受けた当事者の方から多くのカキコミが寄せられました。中には、今まで誰にも被害を打ち明けたことがなかったという人もいました。このように体験を「書く」ことや「話す」ことは、当事者にとってどういった意味があると思いますか。

私も初めは、人前で話すことの恐怖が大きかったです。話したことで、より大きい被害に遭うんじゃないか、心ない言葉をかけられて傷つくんじゃないか、などいろいろ考えました。また、自分のコミュニティーや日本の社会から排斥されるんじゃないかとも思いました。でも、話してみたらそうでもなくて、話を聞いてくれた人たちが「これはおかしい」と言ってくれて、一緒に考えてくれ、物事が動いていきました。なので、人に伝えることはすごく大事だと今は思っています。

カキコミ板は匿名だからカキコめるという方が多いと思うんですが、一番効果的なのは、自分を受け入れてくれる人、肯定的に支持してくれる人たちの前で体験を話すことだと言われています。自分一人では抱えきれない苦しい気持ちを話すことによって手放していけるからだと言われています。また、外に出て自助グループや支援してくれる人たちとその苦しさを分かちあって、持ちやすい大きさにすることもできます。そういうことによって「私の責任じゃない」「私は悪くない」と思えるので、すごく大事なことだと思います。
ただ、自分のタイミングがあるので話したい、チャレンジできるかなと思う時に取り組むことが大切です。そして、話せるからよい、話せないからいけないというわけでもありません。自分にとって必要なことは、自分自身が知っています。自分の心と身体を大切にすることが、何より優先されることです。


―― 番組では時間の関係で深く触れることができなかったのですが、今回の改正刑法では「監護者わいせつ及び監護者性交等罪(※)」が新たに設けられました。このことについて、当事者でもある山本さんはどう思われますか。

“監護者”とは、生活や生計を共にし、保護・被保護、依存・被依存の関係にある者を監護する者のことで、民法上の監護権とは区別すると言っていますね。でも“監護者”は本当に狭い範囲なので、上下関係において起こる性加害を裁ける類型をきちんと作る必要があると思います。海外の法律では、教師やコーチなどの逆らいがたい立場の人、あるいは医療者と患者、刑務所職員と受刑者との関係など、地位や関係性が列挙されているものがあるんです。そういう上下関係を利用して性的な加害をされたとき、抵抗することも逃げることもできないということがあるから類型を設けているわけですよね。

日本ではそのことについての理解がない・・・。「ケースバイケースでちゃんとやっています」と言うけれど、法律家の見方に当てはまらなかった場合、加害者と被害者の立場の関係性を考慮することなく裁かれてしまう。そうなると、被害として認識してケアを求めたり、訴えるということもできなくなっていく。結局、被害者だけが苦しみを背負い続ける実態がすごく理不尽で、許されない状況だと思います。だから、何が起こっているのか、地位と関係性を利用して加害者は何をしたのかを明白にして、罰せられるような法律にしてほしいと思っています。

※監護者わいせつ及び監護者性交等罪・・・今回の改正で新設された項目。18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者(具体的には親など)であることによる影響力があることに乗じて、わいせつな行為や性交等をした者は、暴行や脅迫を用いていなくても処罰される。


―― まだまだ課題が残りますね。ただ、今回改正された刑法には“附則”が付き、施行後3年を目途に、実態に即して見直しをということになりました。被害者がこれ以上傷つかないために、今後、どういった声が反映されれば良いと思いますか。

“附則”がついたのは刑法では初めてで、奇跡的とも言えることなんです!
番組でチキさんも言ってくださいましたが、当事者抜きに施策を作っていくと、私たち被害者が使えないものになっていることが多い。本当に利用しづらいし、使って良かったと思えるものではない。当事者の声を反映して、当事者の立場から施策を作ってほしいと思っています。
だから、私自身は、“性暴力被害者の団体“を作りたいと思っています。支援者の団体にも当事者がいたりするんですが、被害者団体で法人化は今までなかったと思うんですね。法人の被害者団体として、被害者の声や苦しみ、どのような生活の困難があるのかということを届ける。それを施策者や法律を決定する人たちに伝え、この状況を変えるように求めていくことがすごく必要だと思います。そういうことが、後の見直しにつながると思うので。前々からこぼれ落ちてしまっている13歳以上の「暴行・脅迫」要件についてなど、いろいろ抜け落ちてしまっている論点も含めて全体的に評価をして、要件の撤廃や追加を伝えていければいいかなと思います。

▼関連番組 『ハートネットTV』
 2017年7月6日 WEB連動企画“チエノバ” 性暴力被害
 
出演者インタビュー
 荻上チキ「性暴力という概念を見直していく必要がある」
 小西聖子「自責の念を持たないで」
 

「性暴力被害」に関する情報・相談窓口
 お役立ち情報 性暴力被害
 ※相談窓口・支援機関の情報、過去の放送一覧、放送時に寄せられたみなさんからのメッセージなどをまとめています。

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