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熊本地震と災害関連死 第2回 どのような人たちが災害関連死で亡くなったのか

2017年05月26日(金)

 
画像イメージ・第2回 どのような人たちが災害関連死で亡くなったのか

本地震と災害関連死
第2回 どのような人たちが災害関連死で亡くなったのか

 ▼高齢者を中心に既往症のある人が災害関連死に
 ▼災害関連死に至った事例
 ▼ハイリスクの人たちが死期を早めた


第1回 第3回 第4回

 



Webライターの木下です。

高齢者を中心に既往症のある人が災害関連死に


阪神淡路大震災や東日本大震災などの過去の巨大地震の際に、災害関連死で亡くなったのは主に高齢者でした。熊本地震でも約8割が70代以上で、男女ともにもっとも多い年代層は80代で、3割を超えています。また、死因が自治体から公表されている人のうち、約9割が何らかの既往症をもつ人でした。

図グラフ・年代別死者数。100代1%、90代20%、80代37%、70代20%、60代13%、50代4%、40代1%、30代2%、10歳未満1%、不明1%円グラフ・既往病あり89%、なし11%

災害関連死に至った事例

 
具体的には、どのような経過で死亡にいたったのか。各自治体から発表されている災害関連死の実例をいくつかご紹介します。

60代女性 エコノミークラス症候群


4月14日の前震の後から車中生活を続け、16日に車中で意識を失った状態で見つかり、搬送先の病院で亡くなった。エコノミークラス症候群が引き金となる「急性心筋梗塞」と考えられる。


80代女性 車中泊による睡眠不足


自宅で被災。4月下旬まで車中泊を続ける。睡眠不足などにより、体調不良になり、入院。急性腎臓病により死亡。

 

80代男性 病院の機能低下と既往症の悪化


自宅が被災して、車中泊をしていたが、「きつい」と言い出し、息子の職場に避難。熊本市にかかりつけの医者があったが、被災の影響で通えなくなり、既往症が悪化。県外の病院に入院した時には手遅れだった。

 

60代男性 繰り返す余震のショックで心停止に


本震後、自宅で生活していたが、長引く余震に不安を感じていた。4月の余震で一度自宅で倒れたが、安静にして体調を回復した。しかし、5月のある日、1日のうちに震度4の地震が4回あり、自宅で座位の状態で意識を失い、救急搬送された。一時的に心停止の状態になり、心拍は再開するも、入院後も意識は回復せず、死亡した。

 

60代女性 地震のストレスからうつ病に


前震、本震とも自宅で被災。前震後に車中泊。その後、不眠、食欲不振でかかりつけ医を受診。特に異常はなかった。しかし、不眠、不安、動悸等があったので、精神科を初受診。不眠については若干改善するも、動悸等の訴えは続いていた。精神科へ3回目の受診日の朝に、自宅にて自死。地震によるストレスでうつ病を発症したと考えられる。

 

60代男性 水不足で透析の処置が困難に


自宅は一部損壊。寝つけないという理由で、震災後5日、夜だけ車中泊。人工透析に必要な水が、給水車からだけで限られていたため、通常6時間分のところ3時間分しか処置できなかったことが、死亡の一因に。

 

90代女性 転院先の病院に患者が殺到


入院中に被災。県内の他の病院に転院。転院先は患者が殺到し、看護婦が忙しく対応が十分できなかった。慣れない環境で食欲が減退し、死亡。

 

80代男性 高齢者施設内の環境変化がストレスに


高齢者施設で被災し、建物が損壊。安全な部屋に移動したが、環境の変化によるストレスで死亡。被災のために家族も見舞いに来られなかった。

 

ハイリスクの人たちが死期を早めた


長引く余震による心的ストレスは、車中泊に限らず、自宅にいても、避難所にいても、リスクを抱えた人の体調悪化につながります。また、精神的な疾患のある人の中には、不安や恐怖から逃れられず、自死を選ぶ結果となったケースもあります。

災害関連死に詳しい神戸協同病院の上田耕蔵医師によれば、災害関連死は被災者すべてにそのリスクが及ぶのではなく、体力のない後期高齢者や心筋梗塞や脳卒中などの持病をもつ人や障害者など、何らかのハイリスクの人たちが、震災後の避難生活に耐えられず、死期を早めていくのだと言います。

画像・アンケート用紙
また、ハイリスクの人は、自宅で治療を続けていたり、入院していたり、高齢者施設で介助を受けていたりと、何らかの支えを得ながら健康を維持しているケースが多く、震災はそのような人たちから支援の手を奪うことになったり、環境の変化がリスクを高めることになります。危険を回避するための移動も移動先の環境の変化も大きなストレスにつながったと考えられます。


木下 真

▼関連ブログ記事
 熊本地震と災害関連死(全4回/2017年)
  第1回 屋外避難へと追い詰められた被災者

  第2回 どのような人たちが災害関連死で亡くなったのか
  第3回 病院の転院による被害の拡大
  第4回 過去の教訓の活用と想定外への対応
 熊本地震(全5回/2016年)


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▼関連番組
 
『ハートネットTV』
 2017年4月12日放送 シリーズ熊本地震から1年 (1)災害関連死170人 なぜ・・・
 2017年4月13日放送 シリーズ熊本地震から1年 (2)犠牲者をこれ以上出さないた

コメント

仮設住宅で神戸でも東北でもそうでしたが、災害が起きる前は全く飲まなかった「お酒」に日中でも手を出してしまう方や、ほぼ1日中外出もしなければ仮設住宅の集会所(熊本でいう「みんなの家」など)に顔も出さない方も、いないとも限りません。認知症や生活不活発症が出ないとも限りません。集会やイベントに出る・出ないはもちろんご自由ですが、呼びかけとご案内は、ご支援をなさるみなさまはご多忙かと思いますが、仮設住宅や「みなし仮設」が完全に改装するまでと、熊本で被災されたみなさまが終の棲家を全員が見つけるまで、ぜひ続けて欲しいです。

投稿:かめさん 2017年05月29日(月曜日) 12時30分

災害弔慰金や災害による障害見舞金は、熊本県民で申請なさったみなさんのなかで、出来るだけ多くの方々へ行き届いていますでしょうか。実質的な「公的支援の制度」の側面もございますし、義援金は500億円程度全国から文字通りのあたたかいお気持ちが寄せられているとは言え、人数で割るとあまり大きな金額でも無く、新潟(2004年・2007年)の例もありますし2度あることは3度・・・とは思いたくは無いですが、熊本の病院や避難所の耐震補強(場合によっては建て替え)は、それにかかる費用を出しても人命にはかえられないと思います。

投稿:かめさん 2017年05月29日(月曜日) 12時25分