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【生きるためのダンス】振付・ダンス:ハラサオリ「遠い誰かのこころに」

2017年03月29日(水)

Mukiau_Logo_ol.pngJR東日本が運行している「生きる支援トレイン」の車内に流れている動画「生きるためのダンス」。動画制作に関わっていただいた 振付・ダンス:ハラサオリさんからのメッセージです


自殺に関する相談を寄せたり、実際に行動へ移してしまうのは圧倒的に10代が多いという統計には、経験上納得せざるを得ないものがあります。私自身、幼少期の時点で周りと上手くコミュニケーションが取れず毎日の生活が苦痛で仕方ありませんでした。子供の自分が、家と学校の2点を結ぶ線の世界に自力で逃げ場を作ること、さらに逃げる自分を肯定することは、いま考えても不可能だったと思います。

しかし、このような切迫した状況が大人にとっても珍しくなくなっているということも、特にここ数年の間に日常レベルで感じるようになりました。私は運良く(ある面では)寛容な、表現の世界に救いを見つけて生きていくチャンスをもらいました。それでも頭にこびりついた自己否定の記憶や息苦しさがフラッシュバックしてしまうような何かが、やはりこの社会には漂っているように思います。

今回のプロジェクトに関わる上で強く意識したのは「誰かの為になろうとしないこと」でした。代弁や救済を背負うのではなく、Aさんの身から切り出されたことばが私の身体を通過したときに生まれる「ゆらぎ」のようなものを捉えて残すことが、自分に与えられた役割だったと思っています。逆に言えば、普遍化できない「自殺」にまつわる事実や感情と向き合うには、完全に自分事として取り組む以外にできることはありませんでした。これは「私が生きるためのダンス」であり「誰かが生きるためのダンス」でもある、そんなことが伝わればいいなと思います。

 

20170328_harasaori2.pngハラサオリ

ベルリン・東京在住。幼少よりクラシックバレエ、モダンバレエを、大学にてデザインを学び、2012年より東京とベルリンを拠点に作家活動を開始する。その静物的佇まいと、動物的躍動感を兼ね備えた身体を活かしたパフォーマンス/映像/ドローイングを制作し、日本・ドイツ・ギリシャ・スペインなどで発表を重ねる。日常的な人間の運動や所作にひそむ違和感や美しさをテーマに振付をおこしながら、サイトスペシフィックな空間におけるモノとしての身体の在り方を探求している。

 

20170328_kakudou.png角銅真実(歌)
「この世のはじっこに」
20170328_tanaka.pngのサムネイル画像田中文久(作曲)
「手のひらの匂いがするような」
20170328_sasaki.png佐々木友輔(撮影・編集)
「見知らぬ誰かのもとへ」
20170328_goto.png後藤 怜亜(ディレクター)
「ほんのひとさじ分の勇気」

 

 関連情報
【特設サイト】自殺と向き合う

【関連番組】
『ハートネットTV』「生きるためのテレビ」(Eテレ)
 3月29日(水)夜8時[再放送:4月5日(水)昼1時5分]

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