本文へジャンプ

どうなっている?難病対策~前編・医療費助成~

2014年02月21日(金)

シリーズ 難病と向き合う
第1回  どう支える 難病医療
第2回  難病でも 働きたい

で放送した、難病医療の現状。

およそ40年ぶりの新しい法案の提出が閣議決定され、(2014年2月17日現在)
国会で採択されれば2015年から施行されます。

<制度の谷間>が問題といわれる難病対策。
番組ではご紹介できなかった疑問などについて、難病当事者で、作家の大野更紗さんに回答していただきました。


Q.日本の<難病対策>はいつ頃始まったのでしょうか。

A.日本の公的な「難病対策」は1972年(昭和47年)に厚生省が発表した「難病対策要綱」に端を発します。
 

1950年代ごろから日本でスモンという整腸剤・キノホルムの薬害が広がり、大きな社会問題になっていました。
そこで国は、実態の把握や原因究明を進めるため、研究班を組織するとともに1971年には入院患者さんに医療費(当時で月額約1万円)を助成することにしました。

こうした流れで「難病」全般に対する社会の関心が高まり、翌年、
「いわゆる難病については、従来これを統一的な施策の対策としてとりあげていなかったが、難病患者のおかれている状況にかんがみ、総合的な難病対策を実施するものとする。」と定めた「難病対策要綱」が発表され、行政施策がスタートしました。



Q.海外の「難病対策」の歴史と比べてどうなのでしょうか。

A.国によって「難病」の定義や対策の中身が異なり、一概にはいえません。
<国の施策>という面では、アメリカで2002年の「希少疾患対策法」、EUでは2009年の「欧州連合理事会の難病・希少疾患対策に関する勧告」などによって進められるようになりました。

たとえばEUでは、
その療養に長期にわたって高額な費用がかかる疾患を対象にして、各国の医療制度にあわせて、医療費の軽減制度が実施されています。
難病政策の国際比較は、前提となる医療供給体制や財源方式が国によって違うので、単純な比較は難しいですね。

ただ、日本は「難病」に関しては独自の制度を築いてきた、ということは言えると思います。
(希少医薬品の開発や承認促進ということについては、80年代にいち早くアメリカが法制化しています。またヨーロッパ各国でも、独自の難病対策を築いています)

*参考/厚生労働省より
資料2「今後の難病対策研究のあり方を考える」
 国立保健医療科学院 林謙治院長提出資料
※外部リンク・NHKを離れます。


Q.日本の「難病の範囲」にはどのような考え方があるのでしょうか?

A.1972年に定められた「難病対策要綱」には、 「難病対策として取り上げるべき疾病の範囲についてはいろいろな考え方があるが、次のように整理する」とあります。

①原因不明、治療方法未確立であり、かつ後遺症を残す恐れが少なくない疾病
②経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護等に著しく人手を要するため家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病

※しかし、『なお、ねたきり老人、がんなど すでに別個の対策の体系が存するものについてはこの対策から、除外する』と追記がされています。

つまり、「難病」とは特定の疾患を指す医学的な用語ではなく、特定の条件を満たす疾病についての、行政的な総称だと考えることができます。



Q.では、行政的に「難病」とされている疾患の数はどのくらいですか?

A.1995年に国は①②の定義「希少性」を加えて、2013年現在
 1)希少性
 2)原因不明
 3)効果的な治療法の未確立
 4)生活面への長期の支障
、の
4つの要素を満たす疾患を難病指定していて、その数は364疾患です。

しかし、これはあくまでも「難病対策における研究事業の対象として指定されている疾患」の数で、
「障害施策」(福祉サービスなど)の対象となる疾患数はそのうちの130疾患
さらに、「特定疾患治療研究事業」として、医療費助成の対象になる疾患数は、わずか56疾患のみにとどまっています。
 
難病について適切な診療を行える専門医は疾患ごとに限られています。
かつその専門医は概して、全国でもごく一部の病院や、各地の大学病院に点在しているというのが現状です。
難病の人の経済的負担は、医療費自己負担だけではありません。
療養にかかる諸費用や交通費など、負担は生涯にわたるにもかかわらず極めて重いものです。
医療費助成を受けられるかどうかは、治療を受けることができるかどうか、命をわける死活問題なのです。



Q.助成の対象が今度の改正で広がる見込みになったわけですが、
 なぜ、見直されることになったのでしょうか。

(注:医療費の助成を受けられる疾患を、56種から約300疾患まで拡大する方針。
 一方で、症状が軽い患者は助成の対象から外すことで「広く薄く」への転換ともいわれている。
 助成を「薄く」することに関しては、去年(2013年)、厚労省の難病対策委員会から出された案に対して患者団体から猛烈な反対があり、最終的には一部修正された)


*参考/厚生労働省より
2.【別冊1】難病対策の改革について(提言)説明資料1(現状と課題)
※外部リンク・NHKを離れます。

A 助成対象とそうでない病気との不公平感を減らそうという動きが強まっていたためです。
さらに、今年4月から消費税が上がり社会保障<充実化>のための予算がつくのに合わせて、難病対策も見直そうという声が高まりました。
40年前とは療養の考え方も変わり、
「病気であっても、ずっと入院しているのではなく、仕事をして社会生活を送れるようにすべきだ」と、ニーズに合わせた支援体制が求められるようになった、という背景もあります。

 

Q.対象が300疾患に広がってうれしい人もいますが、
  もれた人はまた苦しむことになりますね。

A 現在、一般的な概念での「難病」(=「希少で治療が困難な病気」)といわれるものは、約5,000-7,000種類あるとされ、今回の見直しでも、助成の対象から外れる病気は、まだまだたくさんあります。

国の発想は、
「みんなが必要な支援が行き届く制度のあり方を、まず考える」のではなく、「1つ1つの疾患について対策すべきか否かを検討し、  少しずつ対象疾患を増やす」という方法をとっているので、いつまでももれる人が出てきてしまいます。

*参考/厚生労働省より
資料3「難治性疾患対策について」
※外部リンク・NHKを離れます。


どうなっている?難病対策~後編・福祉政策~、に続きます。

 


◆放送
WEB連動企画“チエノバ” ―今日は「難病」を中心に― 2014年11月27日(木)

シリーズ 難病と向き合う(過去放送)
本放送:夜8時00分~8時29分
再放送:午後1時5分~1時34分

第1回 どう支える 難病医療 2014年2月10日
第2回 難病でも 働きたい  2014年2月11日

コメント

 おととし、筋ジストロフィー症が難病指定されました。都内では優遇されていたので、温度差を感じていました。ただ、お見舞金を貰っても年一回更新が大変です。そのたびに時間を費やすこと、保健所まで行くのが面倒です。
 職場は、理解がある上司のおかげで出来ないことは手伝ってもらえています。職場には、知的障害や視覚障害のハンディキャップがある人達と働いてしますが、適材適所で頑張っています。

投稿:ともみ 2018年02月01日(木曜日) 18時50分