本文へジャンプ

熊本地震 第1回 高齢者を襲う「震災関連死」

2016年05月31日(火)

 

001kumamoto_.jpgWebライターのKです。


熊本県内の避難者数は、4月17日のピーク時には約18万4千人でしたが、5月18日には1万人を切るまでに減少しました。電気、水道、ガスなどのインフラが徐々に復旧し、多くの避難者が自宅に戻り、避難所となっていた学校を授業再開のために閉鎖するなど、拠点避難所への集約も行われています。しかし、地震発生から1か月を過ぎて1500回以上繰り返される余震は未だに収まっておらず、気象庁は今後も震度6弱の大きな余震が発生する可能性があるとしています。自宅の倒壊を恐れ、戻ることができず、車中泊やテント生活を続ける家族も少なくありません。

過去の震災の例に見られるように、大きな災害の後には、建物の倒壊や火災などの「直接死」を逃れた人の命が避難生活の中で失われる「震災関連死」が起こります。阪神淡路大震災の際には、避難所で「インフルエンザの集団感染」が広がり、新潟県中越地震では「エコノミークラス症候群」を発症する人が相次ぎました。そして、東日本大震災では、「長引く避難生活によるストレスや過労」で、体調を悪化させる人が続出しました。

今回の熊本地震でも、関連死の疑いのある人が、すでに20人に上っています。車中泊の影響などから、51人がエコノミークラス症候群と診断され、そのうちの一人が亡くなるなど、今後も震災関連死の増加が懸念されています(5月20日現在)

 


東日本大震災の震災関連死は1年目の統計では、宮城・岩手・福島3県で1590人、災害後1か月以内が5割となっています。発生直後の初期対応だけではなく、中長期におよぶ今後の避難生活でも、被災者の心身のケアは重要になります。とくに65歳以上は、1年以内の関連死が東日本大震災では約9割におよび、長引く避難生活が高齢者に大きなダメージを与えることが明らかになっています。

震災関連死が初めて問題になったのは、平成7年に発生した阪神淡路大震災でした。神戸市では震災後に500人の震災関連死が発生しています。

平成7年5月に放送したETV特集「阪神大地震 問われる災害医療 第2回 避難所での死はなぜ起きたのか」では、過酷な避難生活のストレスで体力が低下し、持病を悪化させる高齢者の問題について取り上げました。避難所で健康を損ない、肺炎や胃潰瘍などで緊急入院しても、ベッド数が足りないために、治療が終われば、再び劣悪な環境の避難所に戻され、そこで、再び病気を悪化させてしまう。そのような高齢者の現状を憂いた神戸市の在宅医療を担う医師と、長田区の病院の院長と、特別養護老人ホームの施設長とが独自に開設した避難所に、身体が弱った高齢者を一般の避難所から移動させ、救済した事例を番組で紹介しました。

震災関連死という概念がまだなかった阪神淡路大震災の渦中でも、いち早く配慮の必要な高齢者の存在に気づき、迅速な対応によって、その命を救った医療・福祉関係者がいたのです。そのような貴重な試みがきっかけとなり、その後の新潟県中越地震、東日本大震災を経て、震災関連死を失くしていくためには、高齢者や障害者などの要支援者への配慮が欠かせないことが国の災害対策に盛り込まれるようになりました。そのような過去の震災の教訓が、今回の熊本地震に関しても生かされることが期待されます。


▼関連ブログ
 
熊本地震 第2回 どうやって命を守るのか
 熊本地震 第3回 福祉避難所を活用する
 
熊本地震 第4回災害時に配慮が必要な人とは
 熊本地震 第5回 誰も排除しない「インクルーシブ防災」

コメント

神戸市では震災関連死の統計は取っていない筈だと記憶しております。復興支援活動にいた人たちが作り出した言葉だったと思います。神戸では仮設住宅や復興住宅での自死や生活苦からの餓死も相次ぎました。
一方わたくしも熊本地震の復興支援のSNSにいくつか入っておりますが、多くの方が無料でもらえるものや、熊本県以外の被災地のみなさまから見て共感を得られやすい事例(たとえば女性への支援・ペット避難所など)に支援活動や寄付金が偏っている印象を受けます。高齢者や障がい者といったこの番組やNHK Eテレで取り上げて下さるような対象のみなさまには、あまり注目や支援があたっていないように感じます。

投稿:おかめかめかめ 2016年09月15日(木曜日) 15時23分

生活弱者の話題、大変参考になっています。Facebookで投稿していますが。障碍者だけにとどまらず福祉全般に関わる問題の定期もしていた飽きたい。投稿の中にはシングルマザーで災害目に決まっていた就職が就職先の被害で生活もこんなな状況になり公営住宅の退去を勧告されている方や、今現在、生活必需の食器などがありませんかといった問い合わせも多く寄せられています。地震で炊飯器が壊れ・支援物資の赤に無いか?などの問い合わせ、支援団体を紹介し解決はできてるようですけど、又仮設住宅ががけ崩れの横に建てられ二次災害を心配する報道などもあり、それと最後に、私は隣県の福岡に住んでいますが、多くの報道で避難地の住人の減少を多く伝えられ地震の沈静化を感じていました。しかし当初よりも個別にないますが、とんでもなく二次の土砂災害など多くの投稿があってます、ハートネットは福祉関連ですから他の番組でもかまいませんから被災各地区の現況なども報道していただければ幸いに思えます。
ハートネットのように専門的分野と一般の被災状況を報じる事ができれば大変助かります。(Facdbookの支援団体に多く参加しているものです。)

投稿:博喜 2016年07月21日(木曜日) 14時14分