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【大会8日目】NHKソチパラリンピックナビゲーター・為末大さんに聞く。

2014年03月16日(日)

大会8日目の放送を終え、ナビゲーターの為末大さんにお話を伺いました。

20140316_tamesue001.JPGソチパラリンピックナビゲーターとして、最初にお話をさせていただいたのは12月ぐらいからですかね。振り返っていかがでしたか?
体験としてはパラリンピックが初めてというのと、冬の競技も初めてというので、結構初めてなことだらけだったんですけれど、すごく勉強になりました。あと、もう1つは直感的にパラリンピックっていうのはおもしろいし、これから広がりそうだなっていうのを、現地で見て確信したので、それがすごく良かったなと思う点ですね。


具体的には現地で見た「感触の広がり」っていうのはどんなところですか?
競技性が高くなっていて、そこは僕は日本は少し認識がずれているんじゃないかと思うんです。リハビリテーションをした人たちの披露の場と思っているのが、もうそうではなくて、スポーツの新しいカテゴリが出来ているんだっていうことですね。オリンピックにパラリンピックが追いついていくという方向性じゃなくて、パラリンピックっていう新しいメッセージを発信出来るスポーツの舞台が出来たっていう印象があるんです。例えばアカデミー賞、ノーベル賞、オリンピックとか、そういう賞を与えたり、競争している場があると思うんですけれど、そういう中の1つのカテゴリとしてパラリンピックが出てきた。それに、より人に訴えかけているものとかコンセプトとかが強い気がするんですよね。選手個人のメッセージも強いですし、その魅力はすごく強く感じたと思います。


1つの議論としてはオリンピックの中に、1つの競技としてパラリンピアンたちが出来る競技をっていう意見もありますけれど、ある種パラリンピックを“平行”という意味で見せていく方法もあるのかもしれないですね。
チェアスキーなんかは障害者の方だけでなく、体験する器具さえ整えば、やりたいという人がいるんじゃないかと思うんです。そうなってくると多分、森井選手には勝てないと思うんですね、ほとんどの人が。もうそうすると何て言うんでしょうか、そういう“競技”っていう事なんですよね、 “チェアスキー”っていう競技が新しく出来るっていう。仮に何十年かした時にオリンピックの1競技にチェアスキーっていうのが入っている可能性もあると思いますし、そういう可能性を、今回すごく感じました。


しかし、出来島桃子選手が巻き込まれたバイアスロンのアクシデントなどもあって、まだ大会の運営者自体も成熟度っていうのがすこし足りないのかなという気がしてしまいましたけれど。
僕もそういうのの現れだったんだろうなという感じがしましたね。だからこれは自分事にとらえていくと、2020年の東京パラリンピックの時に運営体制がどのぐらいのものが取れるんだろうということと、あとは普及ですね。普及をするもう1つ前の段階として、町に車いすの方とか義足の方が自然に出て来られる状況をどうやって作るのかっていうことは、多分そういう方がグラウンドに出てくるよりもっと前の段階にもあって。そのあたりがちょっと日本がこれから気合いを入れてやっていかなきゃいけない領域だなっていうのはすごく思いました。


荒井秀樹監督の談話でもありましたけれど、ほとんど英語をしゃべれる人がいなかったと。コースの指示をする人が。それは日本でも・・・。
あり得る話ですね。だからその当たりのサポート体制とか今度は主催者側になるタイミングがあるわけですから。それはこれからやっていかなきゃいけないなと思うんですが、あと2回ありますよね。次が2年後のリオデジャネイロと、それからその次が4年後のピョンチャン(平昌)。それで2020年の東京ですかね。そのタイミングで日本からもどういうボランティア運営したらいいのかって学びに行くっていうのも含めて、だんだん“パラリンピック”になってほしい。
何か選手だけが突っ走っていって、周りのサポート体制がなってないとそれは選手もかわいそうなので。今度は協会の側とかサポートする側ですかね。それでみんなが成熟していくといいなと思います。


あとは国別でメダルでは、開催国ロシアがずば抜けてしまっていますよね。番組でロシアのアイススレッジホッケーは国が強化体制を作ったという話もしましたけれど、今後は日本もそういうことをどうやっていくのかっていうのは大きな課題になると思いますが。
スカウティングの領域、それから強化ですね、ロシアがやっているのはスカウティング強化はあったと思うんです。でも僕は、日本にはもう1つ得意技があると思っていて、それはモノ作りっていうんですかね。日本がこれから世界中のパラリンピアンたちの器具作りをリード出来る可能性があるんじゃないかと思っています。ぜひ選手と日本のモノ作りの中小企業、メーカーが一緒にくっついて、より高度なパラリンピックの器具を作っていって、結果としてそれが市場でも使えるようなものになっていって欲しいなと思うんです。そういう方向で行くと、日本自体の強化もありますし、一方で世界に向けてパラリンピックの普及の側面も出て来ると思うので、ぜひそれは日本の使命として、他の国より日本の方が出来やすい領域だと思うので、やっていって欲しいなと思います。


チェアスキーはメイドインジャパンということで、いろいろなところで普及していますけれど。他の競技ではアイススレッジホッケーはカナダ製であったりとか、スティックもカナダ製だったりとか。
義足もスウェーデンとかドイツですね。

器具作りをリードしながら、それが社会も変えていける力もあるんじゃないかなっていう。
個人的には機能性が究極に高まると絶対にデザインが良くなると思っていて、つまりかっこよくなるっていうことだと思うんですよね。そのことと普及ってあながち遠くないというか。何かあれがかっこいいからやってみたいって始まるスポーツもあると思うので。

確かにオシャレじゃないと。乗りたくないっていうのはあると思うんですよね。車いすもここ10年ぐらいで本当にオシャレで女の子でも乗れてみたいな。自分で色を使ったりしてね。変えちゃっている子もいたり。ファッションだっていう感覚になれるかっていうのも大きいですね。
それはすごく大きいと思いますね。だからデザインをどうやって入れていくかっていうのは日本は得意な気がするんですけれどね。デザインを入れていくっていうことが。だからそれがもっともっと広がっていくと楽しみですね。

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左から、山田アナ、為末大さん、
ノルディック解説・夏見円さん、スノーボードクロス解説・二星謙一さん



大会を振り返ってみて、日本チームの活躍をどのようにご覧になっていますか?
やっぱり選手達がね、いろんな取り組み方をしているっていうのはサポートしている方達とも話をして、すごくそれが胸に響いたなっていうのはあります。選手達の創意工夫をしている領域っていうか、そこがなるべく皆さんに知って欲しいなと思いました。本当にレベルが高くなってきているので、じゃあ身体を鍛えて、それで出たら勝てますかって話ではもう、ないんですね。どういう滑りがいいんだろうかとか、どの部位を鍛えたらいいんだろうかとか、どういうワックスにしたらいいんだろうかって、色んな戦略や戦術をもう高めないと戦えないという領域に入ってきていて、その側面をなるべく知ってもらえると、スポーツとしてのおもしろさもすごく分かると思うんですよ。僕自身が1番今回感じたのはそこの面白さです。選手達がどういう風に取り組んでいるかっていうことが今後伝わっていくといいなと。パラリンピックの発展にも繋がるのかなっていう気がしました。


今回私たちがすごくよかったと思うのは、スタジオゲストに来ていただいたアルペンの皆川賢太郎さんや川端絵美さん、ノルディックの夏見円さんに、オリンピアンの視点から、解説をしていただいたことです。
面白かったですね。なんでチェアスキーだとこういう動きが出るんだろう、肩が上がるんだろうって話なんかもしました。夏見さんとは実はシットスキーがもうちょっと稼働出来るようになったらもっと距離が上がるんじゃないか、とも話しました。ああいうのは逆にパラリンピックの方からオリンピアンに対して与えるインパクトもこれから出てくるんじゃないかと思うんです。何しろいくら先輩が教えるって言っても、かなりメソッドが確立されていない状況で選手達が手探りでやっているので。その創意工夫の履歴っていうのはすごく学ぶところも多いんじゃないかと思うので。そのあたりがもうちょっと伝わるといいですね。

 

◆シリーズ ソチパラリンピック
3/20(木)夜8時、熱戦の舞台裏を生放送!


 

過去放送
(1)目指せ!“ぶっちぎりの速さ” ―アルペンスキー 狩野亮―
(2)攻めてつかめ!まだ見ぬ“金” ―アルペンスキー 鈴木猛史―
(3)究極の走りへ!最強ロシアに挑む ―ノルディックスキー 久保恒造―
(4)ただひたむきに 前へ ―ノルディックスキー 出来島桃子―

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