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【第3回】合理的配慮

2013年12月13日(金)

「合理的配慮」という言葉は、障害者差別を考える上でとても大切な考え方です。

障害者を差別してはいけない、というのは、誰にでもすぐわかることです。
しかし、意図的に差別はしていない、というだけでは、不十分なのです。

ホームまでのエレベーターがないから車椅子のひとは電車に乗れない、点字の資料がないから目が見えないひとは会合に参加できない、など、結果的にやりたいことが制限される、社会参加できないことは、差別につながります。(「間接差別」とよぶ場合もあります)

障害者権利条約では、障害に基づく差別として「あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む)」という書き方で、合理的な配慮がなされないときは差別とする、としています。

では、「合理的配慮」とはどういうものでしょうか?

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合理的配慮って、なんだろう?


条約では、第二条に定義が書かれています。
少し長いのですが、引用してみましょう。
「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」

“特定の場合において必要”“過度の負担を課さない”といった表現でわかることは、それぞれ個別な対応である、ということです。

JDF(日本障害フォーラム)がだしているわかりやすい解説本では、
「障害者一人一人の必要を考えて、その状況に応じた変更や調整などを、お金や労力などの負担がかかりすぎない範囲で行うことが、合理的配慮です」
(「みんなちがってみんな一緒!障害者権利条約」日本障害フォーラム発行)
と書かれています。

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一人一人違うのだから。


私たちの番組で「合理的配慮がないことが差別である」という考えをとりあげたのは、2006年6月でした。

日本弁護士連合会が障害者差別禁止法(試案)をだしたときで、そのとりまとめにあたった全盲の弁護士、竹下義樹さんがゲストとして解説してくださいました。
竹下さんは、今から40年ほど前に、司法試験に点字受験を認めてほしいと支援者とともに運動し、点字は目で読むことと比べて時間がかかるので試験時間も長くしてほしいと訴えて、点字受験の扉を開いた方です。

その竹下さんが話していたことで印象に残ったのが、“合理的配慮”の出発点は当事者が声をだすことだ、ということでした。
これまでの、バリアフリー法などの法律は、障害者のために環境を整えてあげましょう、という法律でした。
そうではなく、一人ひとりがどういう配慮を望んでいるかを伝えてその対応を考えることを、法律できちんと守ることが大事なのだ、ということでした。
 

“合理的配慮”は、2年前に成立した改正障害者基本法で、日本では初めて法律に明記されました。
第4条に「差別の禁止」が新設され合理的な配慮がされないことが差別につながるとしました。
そして、この“合理的配慮”を実現するためにルールを定めたのが、今年6月に成立した「障害者差別解消法」です。
こうした国内法の整備が整ったことが、今回の障害者権利条約批准につながりました。


さて、それでも、“合理的配慮”とは具体的にはどのようなものか、何が不当な差別的取り扱いになるかなどは、まだよくわからないと言われます。
「障害者差別解消法」が成立したことで、来年度にかけて何が差別にあたるのか基本方針およびガイドラインが作られることになっています。

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今、それぞれの障害者団体は、具体的な事例を集める作業などにとりかかっています。
そして その後1年余をかけてこの法律と基本方針、ガイドラインの内容を周知徹底させ、2016(平成28)年度より施行となります。

 

▼障害者権利条約についてのブログ
【第1回】障害者権利条約が批准されます!
【第2回】障害者権利条約ってなに?
【第3回】合理的配慮
【第4回】手話は言語
【第5回】地域で暮らす
【第6回】教育と雇用
【第7回】自分で決める
【最終回】これからのこと
※「障害者差別解消法」「障害者虐待防止法」
 「障害者総合支援法」についての情報

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