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【出演者インタビュー】荻上チキさん「様々なセクシュアリティーが当たり前に存在していることの認知が大切」

2016年10月13日(木)

10月6日放送(10月13日再放送)
WEB連動企画“チエノバ”「LGBTとアウティング」
にご出演の荻上チキさんにメッセージをいただきました。

chiki_001.jpg《荻上チキさん プロフィール》
1981年生まれ。評論家。ニュースサイト「シノドス」編集長。メディア論をはじめ、政治経済や福祉、社会問題から文化現象まで幅広く取材し分析。著書に『ウェブ炎上』『ネットいじめ』『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』など。



―― 一橋大学で起きた事件は、LGBTの当事者だけでなく、報道によって世間でも大きな波紋を呼びました。今回の事件によって、LGBTを取り巻く今の状況が可視化されたと思うのですが、どのように考えますか。

今回の事件はいろいろなものを浮き彫りにしたと思います。LGBTへの注目がこれほど社会的に高まっていなければ、そもそも訴訟が起きただろうか、遺族が理解を示していただろうか、そして、これだけの報道で取り上げられただろうかということを考えると、「そうした問題提起ができる社会になった」と見ることができます。
そこから私達が考えられることは、この事件を通じて、LGBTに限らず、障害やルーツ、信仰など、様々な対象において、「本人の望まない情報を他者が広げて、誰かを傷つけることの重み」をもっと理解していくこと。そうした広い範囲で、本人の望まない情報をどういう風に扱うべきかを、しっかりと議論するひとつのきっかけにして欲しいなと思います。

―― 番組に寄せられたカキコミやTwitter、スタジオに出演された当事者ゲストのお話を聞いて、改めて「アウティング」についてどう考えますか。

当事者にとっては「あるあるネタ」で、それが日常的に起こっていても、事件が起こらない限り、社会に意外と知られていない問題が沢山あります。「アウティング」の問題も、1つの事件をきっかけに、社会で認知されつつある出来事だったりします。だから、そういった当事者の抱えている日常の中のよくあることという感覚と、社会の側の認識というものにものすごくズレがあるからこそ、「アウティング」の問題はより増強されて起こってしまうので、このギャップを埋めていくことがすごく大切なことだと、話を聞きながら思いました。


―― 今後、「アウティング」をなくすためには、どのようなことが必要だと思いますか。

まずはLGBTであることが、何かスキャンダラスなことであるとか、ゴシップの対象にならない社会にしていくことですね。例えば、異性愛者であることや、身長が百何十センチであること、そうしたことは、たいしたニュースバリューがない、単なる1スペックであって、その人の本質に関わるような何かでは無いわけです。しかし、セクシュアリティーは、他人を規定する、しかも少数の変わった人達だというような位置づけられ方を今の社会がしています。そうした位置づけがあるからこそ、「アウティング」が名指しをする暴力に変わってしまいます。そういう状況を変えるために、より日常的にそのセクシュアリティーが存在していることを当たり前に認知していく、そうしたことを教育やメディアがもっとメッセージを発信して、社会の理解を深めることが必要だと思います。

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