「障害と法律・制度」 関連情報

もくじ

障害者を支える法律や制度

令和5年版「障害者白書」によると、日本には身体障害児・者は436万人、知的障害児・者は109.4万人、精神障害者は614.8万人。複数の障害のある人もいるため単純な合計にはなりませんが、国民のおよそ9.2%が何らかの障害を有していることになります。

障害者を支える制度の始まりは、第二次世界大戦後の占領期。戦傷病者などの救済が急務であったことなどから、1949年に「身体障害者福祉法」が制定されました。高度経済成長期には、経済成長の枠から外れていた障害者などの問題が表面化し、社会福祉の拡充が進みます。1970年には「心身障害者対策基本法」ができますが、障害者を施設に収容するなど“保護”に力点をおくもので、しかも精神障害者は対象外でした。

1981年の「国際障害者年」をきっかけに、障害者の社会参加を進めるべきという“ノーマライゼーション”の理念が広まります。1993年には、心身障害者対策基本法が「障害者基本法」に改定され、精神障害者も含めた障害者の基本的人権と尊厳を明記、日本の障害者福祉政策の基本を定めました。

さらに2006年、「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という合言葉をもとに、世界中の障害者たちが参加して「障害者権利条約」が作成されます。目的は、障害者たちが、差別を受けることなく、好きな場所で暮らし、学び、働くことができるという当たり前の権利の保障です。

日本は、2014年にこの障害者権利条約を批准。2016年には「障害者差別解消法」が施行され、障害者を不当に差別することを禁止、障害者が不便を感じないよう“合理的配慮”を求めました。2024年4月からは、行政や教育機関などだけでなく、民間の事業者もその提供が義務となりました。

障害者への強制不妊手術を認めた「旧優生保護法」

一方で日本では、障害者の人権を制限するような法律も、戦後長く存在していました。

1948年に制定され、1996年まで施行されていた法律「優生保護法」です。「第一条」に “この法律は、優生上の見地から、不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命・健康を保護することを目的とする”と定められています。つまり、障害のある子どもを「不良な子孫」と規定し、社会全体のためには、そうした子どもが産まれてこない方が良いという考え方(優生思想)に基づいた法律でした。その目的のために、遺伝性の疾患や知的障害、精神障害などがある人に対して、本人の同意がなくても強制的に不妊手術を行うことも認めていました。旧優生保護法による手術の被害者は、約2万5000人に上るとされています。

1996年に優生保護法はようやく改正され、名称は「母体保護法」に変わり、障害者への強制不妊手術など、優生思想を背景とした条文は削除されました。しかし実態調査や補償の議論などは行われず、被害を受けた人の問題は放置されました。

2024年現在、被害を受けた人たちが国に謝罪と賠償を求める訴訟を起こしていますが、司法の判断は分かれ、裁判は長期化しています。

相談窓口・支援団体※NHKサイトを離れます

当事者団体・支援機関など
障害者情報ネットワーク ノーマネット

障害のある人が必要とする幅広い情報を収集・提供するとともに、 利用者同士が必要な情報交換をするためのネットワークです。

特定非営利活動法人 日本障害者協議会(JD)

障害当事者の団体、家族、施設、社会福祉、教育、医学・リハビリテーション関係など、さまざまな団体が加盟している団体です。「完全参加と平等」「ノーマライゼーション」の実現を目的に、障害の種別や立場を乗りこえて活動しています。

認定NPO法人 DPI日本会議

身体障害、知的障害、精神障害、難病など、障害種別を超えた約100団体が加盟する当事者の集まりです。地域の声を集め、国の施策へ反映させ、また国の施策を地域へ届ける事を活動の鍵としています。

ピープルファースト

「私たちは『障害者』である前に『人間』だ」。1973年にアメリカ・オレゴン州の会議で当事者が発した言葉をきっかけに、世界中に広まった当事者運動です。困難を抱えていても地域で当たり前に暮らせる社会をつくるために活動しています。

きょうされん(前身:共同作業所全国連絡会)

1977年に各地の共同作業所によって結成された組織です。現在は、就労系事業、グループホーム、相談支援事業所など、障害のある人が生きていく上で関わるすべての事業を対象に、約1,860カ所が加盟。障害のある人が安心して地域生活を送れることをめざし活動を続けています。

障害者福祉に関する法律
障害者基本法

1970年に制定された「心身障害者対策基本法」が、1993年に大幅に改正・改題されたもので、あらゆる障害者福祉政策の基本を定めた法律です。障害者の基本的人権と尊厳を明記し、「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化、その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される」ことと、国や地方自治体の責務を明らかにしました。その後も改正が重ねられ、2004年の改正では障害者差別の禁止などが、2011年の改正では共生社会の実現などが盛り込まれています。

身体障害者福祉法

1949年に制定された、日本で初めての障害者に関する法律です。当初は傷痍軍人を中心に、病気や事故による障害が原因で職業能力が損傷されている人を訓練によって社会復帰させることを目的としており、重度の障害者は施策の対象となっていませんでした。その後、時代に応じて改正が重ねられ、現在では自立と社会経済活動への参加を促進することを目的としています。

知的障害者福祉法

1960年に制定された「精神薄弱者福祉法」が前身となっています。当時、知的障害者の福祉は児童福祉法(1947年~)のもとで行われており、18歳以上の人への対応が課題となっていたために作られた法律です。その後、1998年の改正で「精神薄弱」という用語が「知的障害」に変更されました。知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、援助や必要な保護を行い、福祉を図ることを目的としています。

精神保健福祉法

1950年に制定された「精神衛生法」が、1987年に「精神保健法」となり、1995年に現在の名称となったものです。「精神衛生法」の時代は、入院医療を中心とした治療体制を拡充していくものでしたが、「精神保健法」に改正された際、社会復帰の促進へと大きく舵を切りました。現在の「精神保健福祉法」では、①精神障害者の医療および保護、②社会復帰の促進および自立と社会経済活動への参加促進、③精神障害の発生の予防と国民の精神的健康の保持増進、の3つを目的としています。

発達障害者支援法

2005年施行。この法律により、それまで支援の対象とされていなかった「発達障害」が初めて障害として位置づけられました。法律では国民に対し、発達障害についての理解を求めるとともに、国や地方自治体に必要な支援を講じるよう定めています。この法律に基づき、都道府県や指定都市において「発達障害者支援センター」が設置されています。

障害者虐待防止法

2012年施行。養護者(家庭内)/障害者福祉施設従事者等/使用者(職場)による障害者への虐待行為を定め、発見した人には通報を義務づけています。この法律により、自治体には通報の窓口となる「障害者虐待防止センター(市町村)」や「障害者権利擁護センター(都道府県)」が設置されています。

障害者総合支援法

2013年4月1日施行。それまでの「障害者自立支援法」(2006年~)を改正したもので、障害の程度や心身の状態などに応じて受けられる福祉サービスを定め、障害者の日常生活・社会生活を総合的に支える法律です。施行から3年かけて、対象となる障害者の定義を広げたり、サービスの対象範囲を拡大したりするなど、段階的な施策が講じられてきました。2016年の改正では、「生活」と「就労」に対する支援の充実や、障害児のニーズの多様化への対応などが盛り込まれ、2018年4月1日から施行されています。

障害者差別解消法

2016年4月1日施行。国や地方自治体、事業者などに対し、障害者に対する差別をなくすための具体的な対応を求めた法律です。例えば、障害があるということだけで、正当な理由なくサービスの提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような行為を禁止しています。また、障害者から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合には、“合理的配慮”を行うことが求められています。

障害者雇用促進法

1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」が前身となっています。1987 年の改正で名称変更された際、対象に知的障害者が加えられました。法律では事業主に障害者雇用を義務付け、企業の規模に応じて法定雇用率を定めています。2006年からは精神障害者も対象(雇用義務はない)となりました。2016年の改正で、障害者差別の禁止や合理的配慮の提供義務などが盛り込まれ、2018年4月からは精神障害者の雇用も義務化されました。

【関連事項】 障害者権利条約

2006年に国連総会で採択された、さまざまな政策分野における障害を理由とした差別の禁止と合理的配慮を求めた条約です。日本は2007年に署名、以降国内法の整備を進め、2014年に批准しました。その遵守のため、障害者の権利擁護、社会参加の機会の拡大など、さらなる環境整備を進めていく必要があります。

(民間の支援団体等については、番組の取材先を中心に掲載しています)

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