新型コロナ・現場からの報告⑤ 盲ろう者の暮らしは今
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(2020年9月13日(日))
ゲスト:前田晃秀さん(東京都盲ろう者支援センター センター長、群馬大学 客員准教授)
司会:室由美子
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- 室
- 「視覚障害ナビ・ラジオ」。 みなさん、いかがお過ごしですか。室由美子です。
新型コロナウィルスが視覚障害のある人たちにどんな影響をもたらしているか、これまでシリーズでお伝えしてきましたが、今日は第5弾、「盲ろう者の暮らしの現状」をお伝えします。
情報の入手や移動、コミュニケーションにおいて「触る」ことが欠かせない盲ろう者にとって、コロナ下の生活は大変厳しいものです。
今日は、当事者や支援者の声から、盲ろう者の置かれた状況と必要な支援を考えます。
(スタジオ)
- 室
- スタジオには、東京都盲ろう者支援センター・センター長で、群馬大学 客員准教授の前田晃秀(まえだ・あきひで)さんにお越しいただいています。前田さん、宜しくお願いします。
- 前田
- 宜しくお願いします。
- 室
- まずは、盲ろう者について教えていただきたいんですけど、盲ろう者とは、視覚と聴覚の両方に障害のある人、つまりヘレンケラーのような人ですが、今、全国にはどれくらいの盲ろう者の方ががいらっしゃるんでしょうか。
- 前田
- 盲ろう者は、およそ1万4千人ほどと推定されています。視覚障害者が30万人ほどと推計されていますので、視覚障害者の20人に1人くらいは聴覚にも障害があると考えられます。
盲ろう者というと、まったく見えず、聞こえない全盲ろうの人をイメージされるかもしれませんが、全盲難聴や弱視ろうといった少し聞こえる人、少し見える人も、視覚と聴覚の両方に障害があれば、盲ろう者になります。
- 室
- ひとくちに盲ろう者といっても見え方や聞こえ方は人それぞれなんですね。
盲ろう者は、どのように、コミュニケーションをとっているのでしょうか。
- 前田
- 視覚や聴覚の障害の状態、障害を負うまでの経緯によって、コミュニケーション方法は様々です。少し聞こえていれば、聴覚を活用して音声を聞き取ります。少し見えていれば、手話を近くで見たり、拡大した文字を読んだりします。
ただ、視覚も聴覚も活用できない場合、残っている感覚は、味覚、嗅覚、触覚です。このうち、円滑にコミュニケーションをしうるのは、触覚になります。触覚を使う方法には、たとえば、手のひらに文字を書いてもらう手書き文字、手話を触って読み取る触手話、指にタッチする指点字などの方法があります。
- 室
- 手書き文字は分かりますが、触手話、指点字は初めて聞く人もいると思いますが…。
- 前田
- 触手話は、手話で話している人の手を、盲ろう者が手で触って理解します。指点字は、盲ろう者の手の甲に、手を重ねて、6つの指で点字タイプライターを入力するようにタッチして、盲ろう者が言葉を読み取る方法です。
- 室
- そうなると、手話や指点字が出来る人が必要になりますね。
- 前田
- はい、触手話や指点字の技術を身に着けた、通訳介助員と呼ばれる人がいます。
- 室
- 通訳をして、移動の介助もする人ですね、通訳介助員などを介して、「触る感覚」を使って、コミュニケーションをとっているということですね。
- 前田
- そうですね、全盲ろうの盲ろう者にとっては、触ることがコミュニケーションにあたって必須です。