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「ふれあい」の喫茶店にいらっしゃい

「ふれあい」の喫茶店にいらっしゃい

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遠田
七夕のカフェでは、こうしたたくさんのお客さんに混じって、井上さんのご家族の姿もありました。井上さんが盲ろうになって仕事を失い、絶望から希望を見出すまでを、いちばん近くで見てきました。この日初めてカフェ・タッチを訪れたという、妻の勝子(かつこ)さんに話を聞きました。勝子さんは聴覚に障害があります。通訳は、森田和子さんです。

【インタビュー】

井上勝子さん
  あのね、料理が趣味なんです。だからよく私の手伝いをしてくれるんですよ。前はね、すごく本当に明るい人だったんです。でもやっぱり視力が落ちてきたときには、ストレスがあって、本人も大変だったのか、明るい性格が少し変わってきましたね。でも、そんなときにこの友の会を知って、ここにお世話になるようになってから、以前の明るい主人に戻りましたね。それは私はすごく嬉しかったと思います。触手話で通じるようになってから、もうとても、元の主人に戻ってくれたと思います。やっぱり、信頼しあったり、理解しあって、盲ろう者も、自分と同じ障害を持ってる人がたくさんいらっしゃいますよね。なので、ここへきたら、楽しいんだと思います。でもやっぱりちょっと遠いんですよね。家から神戸まで通うのはね。だからちょっと通うのが大変というところは、ちょっとありますね。

【インタビュー終わり】

遠田
井上さんは兵庫県加東市の自宅から車と電車を乗り継いで1時間半ほどかけて、このカフェに通っています。ここにくれば、いつも仲間がいて迎えてくれる。ひとりでも多くの人にカフェ・タッチを知ってもらい、ふれあいの拠点にしたいと考えています。井上さんのお話、通訳は中村千鶴子さんです。

【インタビュー】

井上
このカフェ・タッチがなければ、社会参加っていうこともできませんし、ここがみなさんの集まれる場になると、コミュニケーションの輪も広がって、非常に楽しく、少しずつ、仲間が増えていったように思います。「あっ盲ろうってそういうことなんだ」「聞いたことありますよ」っていうふうに言っていただけるようになりましたし、コミュニケーションの量も倍倍倍、もう10倍ぐらいになったんじゃないでしょうか。楽しさも10倍になりました。本当10倍楽しいですよ。
遠田
今日は七夕なんですけれど、井上さんは願いごとを書くとしたらなにを書きますか?
井上
短冊に書いたんですね。家族が幸せになりますようにっていうふうに書きました。盲ろう者になって、家族ともコミュニケーションが取りづらくなって、非常に不満が溜まって、けんかも多くなったんですね。家族もやはり、子どもにあっても家内も、触手話ができるようになりましたので、それでコミュニケーションを取れるようになって、家族の状況も本当に良く変わりました。もしこの支援センターがなければ、たぶん家にひきこもって、家族とけんかばかりしていた毎日だったと思います。
遠田
今日はね、ご家族の方もいらしていますからね。
井上
家内と息子は、今は本当に良く理解してくれて、今日も遊びにくるって言ってくれたので、嬉しかったです。自分自身も、社会参加ができているということが、いちばん本当に嬉しいです。楽しいです。今後、セミナーを開いたり、また、夏休みの、盲ろう者体験教室を開いたりですとか、子供むけの体験教室を開くんですが、そういういろいろな交流の方法やイベントを通して、少しずつ盲ろう者のことを、世の中に広めていきたいと思っています。

【インタビュー終わり】

遠田
盲ろう者本人が運営に携わり、いきいきと働いているカフェ・タッチ。私が取材に行った日は、ベルギー在住の盲ろうの男性が訪ねてきていました。こんな場所をベルギーにも作りたいと、少し興奮ぎみに話していました。とにかく笑いが絶えない、温かい空間でした。このふれあいの喫茶店カフェ・タッチ、次回は9月13日金曜日の、夕方5時に開店します。事前の申し込みは不要で、どなたでも参加できます。真っ赤なエプロン姿の井上さんがあなたをお待ちしていますよ。