家族を生きる~盲ろうの夫とともに
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(2018年10月21日(日))
- 遠田
- 今お子さんが二人になってるんですよね。
- 渡井
- はい。大翔は、もう高校2年生になりまして、下の娘は中学2年生。「心」に「結ぶ」と書いて、「みう」と読むんですけれども。心結(みう)の方は、耳のほうが、やはり主人と同じようにちょっと難聴があるので、補聴器を両耳つけていて、車イスを使っています。
- 遠田
- 実は、先日そんな渡井家を訪問して、一家団欒を取材した音があります。
娘の心結ちゃん、この夏一人でオーストラリアに短期留学に挑戦したということで、みんなでおやつを食べながら、また留学に行きたいという話題で盛り上がっていました。その様子、ちょっと聴いてみましょう。
【録音】
- 真奈
- パパ、エクレアとワッフルあるよ。
- 秀匡
- じゃあエクレアで。
- 真奈
- エクレア食べる?
- 秀匡
- はい。 じゃあホームステイの話?
- 心結
- ん?
- 真奈
- ホームステイの話だって。
- 大翔
- ああ、いいじゃん。
- 心結
- ホームステイしました、オーストラリアに。
- 秀匡
- じゃあ、また行きたいの?
- 心結
- オーストラリアには行きたい。
- 大翔
- 二人が1回行って良かったとことか、どこだっけ?
- 真奈
- ああ、スイス行ったよね?パパ。
- 秀匡
- どこ?
- 真奈
- スイス。
- 秀匡
- ああ、行ったねえ。
- 真奈
- 行ったねえ。
- 大翔
- 食事がいいとか言ってたっけ?
- 真奈
- ヒロが、食事がいいとか言ってたっけ、って。
- 秀匡
- そうそうそう。
- 大翔
- じゃあスイス行けば?
- 心結
- 行ってらっしゃい(笑)
- 大翔
- またオーストラリア?
- 心結
- 安心。
- 大翔
- 安心?
- 秀匡
- 知り合いが・・・。
- 大翔
- ん?知り合い、いるの?
- 秀匡
- 僕の、知り合いの知り合いがカナダに住んでいるから。
- 真奈
- (笑)
- 大翔
- 遠くない?知り合いの知り合いなの?
- 心結
- 怖っ、もうほとんど初見じゃん。
- 真奈
- 初見・・・他人ね(笑)。
- 心結
- (笑)
- 大翔
- 知り合いの時点で、もう他人だけどね。
- 真奈
- あはは(笑)、まあね。
【録音終わり】
- 遠田
- 一家の様子をお聴きいただきました。ヒロくん16歳?
- 渡井
- はい。
- 遠田
- 思いの外、声も落ち着いていて。うまーく家族の話をまとめているような印象があったんですけども、なんか、ヒロくんが頼もしかったですね。いつもああいう感じなんですか?
- 渡井
- そうですねえ、主人も難聴で娘の方もちょっと補聴器なもので、主人と娘の会話がうまくできないことがあって、そこに私とか大翔が入って、こうだよ、こうだよって(笑)、ちょっと家の中でも交通整理をしてるような感じなんですけれども。
- 遠田
- なるほど。そのお子さんもね、今中学生と高校生で、小さい頃ほど手がかからなくなったと思うんですけどね。どうでしょう、ここまで振り返って。大変だったなあって思うことって、何かありましたか?
- 渡井
- うーん。私は、結構普段から楽天的に考える方なので、あんまり自分的には、大変だったなあとは思ってないんですけれども。息子の方は、小さいときは野球部にも入ってたので、他のお父さんだったら一緒に公園に連れてって走ったりとかいうのが、息子にはなかったので、そのかわりと言っては何なんですけど、私が外で一緒にキャッチボールしたり、あと、小さいときお祭りに行ったらレンジャーショーがあって、子どもをみんなお父さんが肩車して見せてるんですけど、その様子を見て私も、大翔を肩の上に乗せて、「ヒロ、見える?見える?」って言いながら、お父さんたちに混じって一生懸命肩車したりとか、そういうことはありましたね。
- 遠田
- この細身の体で(笑)。
- 渡井
- いえいえいえ(笑)
- 遠田
- そういう他のお父さんとヒロくんのお父さんの違いとかを、ヒロくんに尋ねる場面というのが、さきほどご紹介した紙芝居の中にありました。そこを一部読んでいただけますでしょうか?
- 渡井
- はい。
【紙芝居の朗読】
みんなは出かけると、パパに手をひかれるよね。でも、ヒロの場合は逆で、お出かけするときは、パパの手をひいてあげるんだ。
パパが危なくないように、「手引き」をするんだよ。
前は、横に広がって、自分の好きなように歩いていたから、ちょっと危なかったけど、今は、パパのスピードに合わせながら、車の通るときや狭いところは前後で歩けるようになって、ヒロは、手引きが上手になってきたよ。
ある日、ヒロのママは聞きました。
『ヒロは、肩車してくれるくらい体が大きくて、目が見えて、ちゃんと聞こえるパパのほうが良かった?』
ヒロは答えたよ。
『ううん、ヒロは、ヒロのパパがいい。
ときどき、おならプーするけど…ヒロは、ヒロのパパが一番好き!』
だってパパは、たった1人の、ヒロのパパだもんね。
パパ、いつも一緒にいてくれて、ありがとう。
【朗読終わり】
- 遠田
- これは、実際に、渡井さんがヒロくんに聞いた話をそのまま紙芝居にしていらっしゃる…。
- 渡井
- そうです。
- 遠田
- 「ヒロのパパがいい」っていうのを聞いたときっていうのは?
- 渡井
- ほっとしましたね。別のパパが良かったとか言われたらどうしようっていう気持ちがあったので。