家族を生きる~盲ろうの夫とともに
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(2018年10月21日(日))
【音楽】
- 遠田
- ここからは、渡井さんが夫の秀匡(ひでただ)さんと、家族の物語をどんな風に紡いできたのかを聞いてまいります。秀匡さんは今年42歳ということですが、目が全く見えないということでしたよね。
- 渡井
- はい。生まれたときはまだ見えていたようなんですけれども、確か7歳ぐらいでしたかね、目が悪くなって、全く見えなくなって、耳の方は確か生まれつきの難聴だったと思うんですけれども、今は右側の耳だけ補聴器をつけて、家の中では音声で会話しています。電車の中とか、ちょっと騒がしいところだと、ワイヤレスのマイクを使って話をしたり、あとは指点字で会話をしたりします。
- 遠田
- 今お仕事は何をされてるんでしたっけ?
- 渡井
- 今、東京都盲ろう者支援センターというのがありますので、そこで盲ろうの方にパソコンを教えたり。ほとんどの盲ろうの方が、情報が入ってこない状態なので、メールもインターネットもできない方がかなり多いんですね。そういう皆さんに、点字で出る機械を操作する方法を教えたりする仕事をしています。
- 遠田
- お二人の出会いというのは、いつ頃どんな形だったんでしょうか?
- 渡井
- 出会ったのは私が大学生の時ですね。社会福祉学部だったんですけれども、大学の掲示板に、あるとき、東京の盲ろう者向け通訳・介助者養成講習会っていう貼り紙が出ていまして、これはなんだろう、ちょっと興味があるなあと思って、それで応募してみたいなあと思っていたら、次にその掲示板を見に行ったときに、その紙がなくなってたんですよ。「あれ?この間ここにあったのに、なくなっちゃってるなあ」と思って事務室に行って、「すいません、この前こういう紙があったと思うんですけど」って言ったら、事務の方が、奥から「これですか?」って言って持ってきてくださったんですね。で、「ありがとうございます」って言ってその場ですぐ電話をして。
- 遠田
- へぇー。
- 渡井
- 「講習会受けたいんですけどまだ大丈夫ですか?」って聞いたら、大丈夫ですって言われて、それでその講習会を受けたんですけれども、あの時もし私が、もうチラシがなくなってる、じゃあもういいやって諦めてたら、たぶん私の人生は全く違うものになってたんじゃないかなあと思います。
- 遠田
- そうですよね。その養成講座に行った先に、秀匡さんがいらっしゃったんですか?
- 渡井
- いたのかどうかちょっと私がはっきり覚えてないんですけど、向こうは覚えてたみたいで(笑)。講習会を受けて、交流会っていうのが毎月1回、今もあるんですけれども、その交流会に通ったりしてるうちに、今の、東京都盲ろう者支援センターのセンター長をされている前田さんと主人と私の3人で交流会の運営をすることになりまして、「来月はどういうことをしよう」とか、手のひら通信っていう会報誌があるので、それを作る作業とかをしていくうちに、主人の方から言われたんですけども。
- 遠田
- 言われた?
- 渡井
- メールで、「どうですか?」みたいな感じのメールが来た(笑)。
- 遠田
- 「お付き合いをしてください」っていうことでしょうか。
- 渡井
- はい(笑)。が来まして、そのときはちょっと最初、嬉しい半分、どうしようかなっていう、迷い半分っていう気持ちもあり、まだ大学生だったので。
- 遠田
- 秀匡さんも大学生?
- 渡井
- そうですね。たぶん、付き合うっていうことにOKをしたら、一生付き合うっていう気持ちでお返事しないと、ちょっと相手の方に失礼だなあと思ったので、「考えさせてください」っていう風にお返事したんですね。その後も普通に交流会とかを担当してやってたんですけれども、一緒にいるうちに、例えば、コーヒー飲みたいなあって思ったときに、主人も「ねえ、コーヒー飲みたくない?」って、「私も今そう思ったんだよね」みたいな感じで、気が合うなあっていうか(笑)。この人と一緒だったら、年とって…、昔でいうと、縁側で一緒に座ってお茶飲むみたいな(笑)、そういうイメージが頭の中に浮かんできて、大分待たせちゃったんですけど、最初に告白していただいてから10ヶ月ぐらいっていう。
- 遠田
- 10ヶ月!?それはほんとに、待たせましたね。
- 渡井
- (笑)。10ヶ月ぐらいしてから、OKというお返事をしました。
- 遠田
- じゃあ喜んでくださったでしょうねえ。
- 渡井
- そうですねえ(笑)。