家族を生きる~盲ろうの夫とともに
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(2018年10月21日(日))
出演:渡井真奈さん(盲ろう者向け通訳・介助者)
司会:遠田恵子
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- 遠田
- 『視覚障害ナビラジオ』。お変わりありませんか?皆さん。遠田恵子です。
今週のテーマは、「家族を生きる」。視覚と聴覚に障害のある盲ろうの夫とともに生きる、渡井真奈さんのインタビューです。
渡井さんは、東京都の盲ろう者向け通訳・介助者として働く一方で、13年ほど前から、手作りの紙芝居などを持って、小学校や幼稚園をまわり、盲ろう者について知ってもらうための特別授業を行っています。
伝えたいと思っていることはどんなことなのか、夫とともにどんな暮らしを営んでいるのかなどを伺ってまいります。
- 遠田
- スタジオには、渡井真奈さんです。こんにちは。
- 渡井
- こんにちは。
- 遠田
- 今日は渡井さんの家族の物語、伺っていくんですが、まずは今、渡井さんが取り組んでいる、盲ろう者を知ってもらうための特別授業について聞いていきたいと思います。13年ほど前からということなんですけど、きっかけはどんなことだったんでしょうか?
- 渡井
- はい。私の夫が全盲、目が全く見えなくて、耳は難聴なんですね。それで主人と一緒に歩いていた時に、私が主人の手引きをしていまして、私の左手には息子、そのとき…まだ幼稚園に入る前ぐらいでしたかね。で、娘をお腹の上に抱っこして歩いていたら、その時通りかかった親子が、お子さんがたぶん小学校5年生ぐらいだったと思うんですけれども、通り過ぎた後に振り向いて、お母さんに向かって「あの人、何?」って聞いてたんですよ。聞くのは、お子さんは普通に思うことだと思うんで構わないんですけれども、それを聞かれたお母さんが、「見ちゃだめよ!」って言って、そのお子さんの手を取って急ぎ足で去っていかれたんですね。ちょっとショックを受けました。それを見て、子どもたちにわかりやすく、障害ある人のことを知ってもらうにはどうしたらいいかなあって考えまして。それで息子が幼稚園の年少のときに、先生に「今度父親参観があるんですけど、渡井君のお父さんのことを他の子ども達にどういうふうに説明したらいいかわからない」と相談されたんですね。それで、子どもにわかるには何がいいんだろうって考えた結果が紙芝居で、盲ろうの方、目と耳が不自由な人はこういう人なんだよっていうことを書いて、子どもたちに見てもらおうと思いまして。あと実際に盲ろうの方にもお二人、幼稚園とか小学校に来ていただいて、白杖の使い方とか、手引きをするときはどういう風にしたらいいとか、あと、盲ろうの方の特技をお子さんたちに見ていただいたり。
- 遠田
- 特技といいますと?
- 渡井
- ある盲ろうの方が、すごくルービックキューブが速いんですね。
- 遠田
- あの四角い、いろんな面をがちゃがちゃ回して合わせるものですよね。
- 渡井
- はい。あれに点字のシールが貼ってあるんですよ。手で触って、全面合わせることができるんですよ。
- 遠田
- ああ、それは子どもたちびっくりするんじゃないですか?
- 渡井
- もうすっごい盛り上がりますねえ(笑)。お子さんたちが飽きないように、楽しい雰囲気で進められるような内容でやっています。
- 遠田
- はい。そこで、手作りの紙芝居。今日実際にお持ちいただきました。これ大きなスケッチブックを紙芝居に仕立てて、1枚ずつめくっていく形になっているんですけれど、表紙には、小学生ぐらいでしょうかね、男の子が白杖を持った男性を手引きしている様子、「わたいまな」って、署名があるんですけど(笑)。渡井さんが手作りをしてる。
- 渡井
- はい。内容も考えて、絵も私が描きました。
- 遠田
- この二人連れは?
- 渡井
- 主人と、息子の大翔(ひろと)です。
- 遠田
- なるほど、じゃあどんな物語になってるのか、始まりの部分をちょっと読んでいただいてもいいですか?
- 渡井
- はい、わかりました。
【紙芝居の朗読】
「ヒロのパパ、盲ろう者ってどんな人?」
みんなのパパは、どんなパパ?
背の高いパパ、太ってるパパ、メガネを掛けてるパパ、おヒゲを生やしてるパパ。
いろんなパパがいるね。
ヒロのパパは、手に「白杖(はくじょう)」という白い杖を持って、耳に「補聴器」というのをつけているよ。
この白い杖は、目が見えなかったり視力の弱い人が持って、周りに危ないものがないかどうか、これで触って確かめるんだ。
とても大切なものだから、「触っていいよ」と言われたとき以外は触っちゃだめだよ。
目が悪くなったときは、メガネを掛けるよね。それと同じように、補聴器は、耳が遠くなった人がつけると、よーく聞こえるようになるんだ。
ヒロのパパみたいに、目と耳、両方不自由な人のことを『盲ろう者』というよ。
【朗読終わり】
- 遠田
- 始まりの部分一部ご紹介いただきました。絵がね。色鉛筆で描かれてるんですかね?
- 渡井
- はい、そうです。
- 遠田
- なんとも、淡い優しい色合いで。可愛らしい絵になっているんですけど、この続きはまた後ほど少しご紹介いただくとして、こうした紙芝居を見たり聞いたり、授業を受ける中で、子どもたちの反応というのはどうなんでしょうか?
- 渡井
- そうですね。まず「盲ろう者」っていう言葉を知らなかったっていうお子さんがほとんどですけれども、途中は、自分で実際に目隠しをして、耳栓をして、白杖を持って、点字ブロックの上を歩いてみるという体験もあったりして、足元に点字ブロックがあって、ここ行けばいいんだってわかってほっとしました、とか、そういう感想が聞けますねえ。
- 遠田
- やっぱり小さい人に授業をするのがいいんですね?小学生や幼稚園という。大人じゃなくて。
- 渡井
- そうですね。なるべく小さいうちから、子どもの時から障害のある人と触れ合うことで、特別な人じゃない、自分たちと一緒にいる、普通に暮らしてる人たちだっていう認識を子どもたちに持ってほしいなあと思ってます。