今月のトピックス 特集:世界の盲ろう者とともに
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(2018年9月30日(日))
ゲスト:福田暁子(あきこ)さん(全国盲ろう者協会評議員/世界盲ろう者連盟・前事務局長)
聞き手:宇野和博さん(筑波大学附属視覚支援学校教諭)、高山久美子ディレクター
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- 高山
- 今年は、ヘレン・ケラー没後50年。今日は「世界の盲ろう者とともに」と題して、
視覚と聴覚の両方に障害のある盲ろう者がかかえる課題について考えます。
スタジオには、全国盲ろう者協会評議員で、世界盲ろう者連盟で今年6月まで事務局長をつとめていらした、全盲ろうの、福田暁子さんにお越しいただきました。
福田さんは、一般校から大学、そして大学院に進み、ソーシャルワークを専攻。
その後、国内外の国際機関やNGO、大学などで働いてこられました。
弱視から全盲になり、その後難聴が進行して、現在は全盲ろうです。
ご自分の声で話され、私たちの声は、手話を触る「触手話」(しょく しゅわ)という方法で、通訳介助の方に伝えていただいています。
また、多発性硬化症のために、手足や、内部機能にも障害があり、人工呼吸器と胃ろう、
電動車いすを利用なさっています。
1.ヘレンケラー世界会議について
- 高山
- さて、今年は、6月に「第11回ヘレン・ケラー世界会議」がスペインで、
そして8月の終わりから9月にかけては、「アジア盲ろう者団体ネットワーク会議」が
千葉の幕張メッセで開かれました。
まずは世界会議のお話からお聞かせ下さい。
今年は、5年ぶりで、世界50カ国から、総勢530人の参加があったと聞いています。
今回のテーマはなんだったんでしょうか?
- 福田
- 自分たちの権利、自分たちの声、自分たちが道を開くというテーマで開催しました。背景には今まで盲ろう者が世界の様々な場面で取り残されてきたので、「誰も取り残されない!」という私たちの声を、そして私たちは道を開くという事を示すための集まりという意味でそのようなテーマで開催する事になりました。
- 高山
- 一番印象的だったものはなんですか。
- 福田
- とても印象に残ったものは、ドイツの発表でした。ドイツの盲ろう者と支援者の皆さん、その他関心のある皆さん、700名ぐらい集まって、デモを行ったという。それも、「盲ろう者の生活というものは収容所にいるのと同じ」って、そのような状況であるというのをアピールするために全員が足を鎖で繋いで、デモをしたというのが、とても印象的でしたね。
- 宇野
- 何かを求めてのデモだったんですか?
- 福田
- 「盲ろう」という固有の障害を認めて欲しいというのをアピールするためのものだったんです。盲ろうという言葉、また盲ろうという障害が、1つの固有の障害として認められていない国がほとんどなんです。重複の障害があるっていう枠組みの中では存在しているけれども、「盲ろう」は盲ろう者として特有の困難があるということを理解してもらう必要がいろんな場面で出てくるんです。
- 高山
- 他にも何か印象的だった事はありますか?
- 福田
- はい。2本の指を使って通訳を受ける方法がありました。宇野さんの手をお借りしてもいいですか?
- 宇野
- はい。
- 福田
- 宇野さんの左手を人差し指と中指をお借りして、あとの指は折りたたんでしまいます。ピースサインみたいな感じになりますが、
- 宇野
- はい。
- 福田
- 人間の指は節が2つありますので、つまり、3つのセクションに分かれていますね。で、1の点、2の点、3の点、4の点、5の点、6の点になります。
- 高山
- なるほど。
- 宇野
- 指先の方と、指の真ん中あたりと指の付け根の方で、6つの点を位置を変えて行うという事なんですね。
- 福田
- はい。これを話すのと同じスピードで打って、わかって、答えている様子が、とても感動しました。
- 宇野
- あーすごいですね。確かにちょっと私も「目からうろこ」っていう感じです。
- 福田
- そうなんです。指点字は初めて打ってもらっても、しばらく受信の練習が必要なんですが、このやり方であれば、少し遅い速度であるけれど、私自身も受信できたし。私はちょっとだけスペイン語を勉強した事があるので、スペイン語で会話をしたんです。そうしたらお互いに会話ができた事がびっくりで。
- 高山
- それは嬉しいですね。
- 宇野
- すごい。
- 高山
- やっぱりいろんな国で盲ろう者がどうやって話をするかっていうのを、みんな考えているんですね。
- 宇野
- 日本の盲ろう者大会でも、本当に様々なコミュニケーションがありますけれど、世界の知恵を集めているっていう感じがしますね。
- 福田
- そうですね。と同時に、盲ろう者がそれだけ孤立して、でも他の人と、なんとか伝えたいっていう気持ちがあるし、周りの人は盲ろう者となんとか話をしたいという気持ちから発明されたものっていうのが、世界各地にあって。指点字も日本で発明された1つの方法なので。世界の知恵と言えば知恵ですし、それだけ盲ろう者が伝えたいっていう気持ちの表れでもあると思うんですよね。