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「私たちの生きにくさ ―障害のある女性として―」

「私たちの生きにくさ ―障害のある女性として―」

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(2013年6月23日(日))

【自分らしく生きるための工夫】

高山
さて、今のお話はおそらく氷山の一角だとは思いますが、障害のある女性にとって、今の社会がどれほど生きにくいかということが、伝わってきます。では、ここからは、どうすればこのような状況が改善できるのか、前向きなお話をうかがっていきたいと思います。まずは、ご自身で工夫されていること、できることなどがありましたら、ご紹介いただきたいんですが。
藤野さんはいかがですか。
藤野
性的暴行に受けそうになった、治療室で、ですけどね、そうしたこともあったので、なるべく閉鎖空間を作らないって事を工夫しています。割合としては女性患者さんが多いので、患者さんにいろいろな得意分野で手伝ってもらおうって心がけていて。いろいろ治療時間のなかで話を聞いてると、「私は花が好きだ」とか、「写真が好きだ」とか、「インテリア、こういう風にしてるんだよ」とか話を聞くと、「じゃ、この治療室を、こういう風にきれいにしてね」とか、カーテンを買ってきてもらったりとか、ちょっと玄関に花を植えてあるんですけど、今度どんな花を植えたらいいかというと、買ってきてもらったり。それから、写真を飾ってもらったり、それから、季節ごとに貼り絵とか切り絵とかやっている人がいるから、そういうのを一か月に1回もってきてもらうとか、そういうことで工夫したり。自分が助かっているのは、夜ご飯のおかずを届けてもらったりしています。それは本当に助かっています(笑)そんな工夫をしています。私も治療のなかで、「危ない目にあうこともあるんだよね」と話しをよくしているので。
高山
お話をなさるとわかって下さって、まめに顔を出して下さるとか。
藤野
そうですね。
高山
孤立しないというのは、大切なことですね。
藤野
私としても密室を作るってことは、相手に油断をさせることでもあるので、それはこちらも気をつけなくちゃいけないなとは、よく思います。
高山
やっぱり視覚障害の女性、はりだったりマッサージだったり、そういうことをお仕事になさっている方が多いので、情報交換とかもなさっているのですか。
藤野
そうですね。だから、いまは、わりと一人でっていう人は少なくなって、何人かでやるとか、ホテルなんかもマッサージルームを作ってもらって、マッサージをしてるなんていうことも、よく聞きます。
高山
大切ですね。
それから、藤原さんは、キーワードをご自分に持っていらっしゃって・・・。そういうのを聞いてるんですけれども。
藤原
はい、人からつけてもらったような感じなんですが。「当たり前からの脱却」という、ちょっと格好いいキーワードなんですけれども。女だからこうしないといけないって、私たちずっと子どもの時から言われてきていることっていっぱいあると思うんですね。で、それを自分のなかに、しっかりすり込んで、取り込んでしまっているっていうのが、あると思うんですよ。でも、「本当にそうなのかな」とか「自分て、なんでそんなふうに思うようになったんだろう」とか、自分に問いかけてみる。そして、昔から良い妻、賢い母でありなさいと、「良妻賢母」と言われますけれども、私はもう、逆になろうと思ってるんですね。で、夫とか子どものために自分を犠牲にするんじゃなくって、自分のために生きたいし、その姿を娘にも見てもらいたいなって思っています。
高山
制度として確立してもらいたいこと、確立できるんじゃないかなということってありますか。 藤野さんはいかがでしょうか。
藤野
はい。国連ではね、確か2006年だったと思うんですけど、障害者の権利条約っていうものができましたね。日本はまだ批准してなくて、国内法を整備している段階ですけど、そのなかに、複合差別というか、女性差別というのか、もっと国内法のなかに整備して欲しいなと思います。
やはり、制度というものを、それ以外に整備していくというのも、やっぱり必要じゃないかなと思います。
高山
そういったことを話し合う場がありますけれども、やはり男性が多いかなという印象があるんですけれども、皆さん、どう思われますか。
藤野
そうですね。視覚障害者の世界って本当にまだまだ女性が、もう少し活躍できるんじゃないかなと思うことはよくあるんですけどね。
高山
もっとこれからこうなって欲しいということについて、中山さんはいかがですか。
中山
私は、すごく言いたいことが2つあるんですけれども。
一つは盲学校の先生方にお願いがあります。もちろん、盲学校ですごいすばらしい性教育をしている学校もたくさんあると思うんですけれども、私の経験上、盲学校で複数学年をまとめて性教育をされたという思い出があるんですね。私は、そのとき一番下の学年だったのですけれども、さらにその中でも成長がすごく遅かったんですね。で、そのとき性教育をしてくださった先生が、他の子どもたち、複数学年みんな成長が早かったので、その成長の早い子どもたちを中心とした学習になってしまって。私には、体のことにしても、そういう現象が全然無いとか、男の子を好きになったことがないとかっていう状況の時に、「そういう事がある」っていう前提で教育されちゃったので、私は、「自分だけ病気じゃないか」とか「女の子じゃないんじゃないか」とか、結構、すごい深刻に2~3年悩んでいたことがあるんですね。なので、盲学校って個別にきめ細かい教育ができるっていうすごい素晴らしさがあるので、個別にその子の成長段階に合わせた性教育をして欲しいのと、あと今だと、性同一性障害とか、そうした性的な少数者のことも盲学校のなかでも教育してもらって、性の多様性というのも教育して欲しいなというふうに思ったのが一つですね。 もう一つは、障害者団体の皆さんにお願いがあるんですけど、若い人の団体離れって、今すごく簡単に言われるんですけど、私はそのなかで一つ言いたいことがあって、例えば障害者団体に女性部っていうのがありますけれども、料理教室とか生活訓練とかやるのも、もちろんすばらしいんですけれども、女性としての差別、いろんな差別があると思うんですよね、あと性被害のこととかを語り合える場所が欲しいです。そういうことを語り合える場所が障害者団体の女性部のなかにできれば、きっと悩みをかかえている若い女性たちも、もっともっと団体に入ってくるんじゃないかなと思いました。
高山
藤原さんはピアカウンセラーをなさっていますよね。
藤原
はい、ピアカウンセリングというのを、視覚障害者の方って、まだ知らない方すごく多いと思うんですよ。日本では、肢体不自由の方を中心に広がってきたものなので。ぜひ知ってもらえたらなと思うんですね。8月に神戸で、「女性障害者のためのピアカウンセリング」というのを一泊二日で行う予定にしてますので、リスナーの方にも良かったら、ぜひ参加して頂きたいです。また、女性障害者って限らなくても、東京とかでもいろんなセンターが講座を開催していますので、ぜひ一度行ってみてください。
高山
そうですね、まだピアカウンセリングのことって、そんなに知られていないですよね。この番組でもいつか機会があったら、ご紹介してみたいと思います。
藤野・
藤原・
中山
ぜひお願いします。
高山
話はなかなか尽きないんですけれども、最後にリスナーの方にお伝えしたいことがありましたら、ひと言ずつお願いします。藤野さん、いかがでしょうか。
藤野
性的被害って皆さんそれぞれ受けていると思うんですけど、なかなか表に出てこないんですよね。だから繰り返されてしまうって事もありますので、どんな形でもいいですから、声をあげてほしいなって。そういう被害にあったら、声をあげて訴えてほしいなと思います。
高山
そうですね。なかなか、声をあげることも非常に勇気のいることですけれども。
藤野
そうですね。
高山
とても大切ですよね。
藤野
そう思います。
高山
中山さんはいかがですか。
中山
はい、私は、今回は女性をテーマにした番組だったんですけれども、まず性の問題って男性も同じように被害を受けたり、いろんな問題も抱えていると思うんですね。で、障害者の性っていうと、肢体不自由者の方々は、かなり前から本を書いたりとか、声をあげたりしていたんですけれども、視覚障害者の性の悩みを語る声は、まだまだとっても少なかったと思います。で、これからは男性の視覚障害者の方々も、そしてまた、性的にいろんな意味で少数派にある視覚障害者のみなさんも、もっともっと自らの悩みとかを分かち合える、ありのままに生きられる社会になってほしいので、まず語り合うって事がすごく大切だと思ってて。私の願いは、障害者団体とかで集まりがあったときに、障害者と性を語る分科会とか、視覚障害者団体のなかでも、イベントとかあったらうれしいなと思いました。
高山
藤原さんはいかがですか。
藤原
そうですね。やはりそうやってつながっていくことって、すごく必要だと思うんですね。で、特に女性同士のつながりって大事だなと思うんです。もちろん、男性とつながらなくていいとか、そんな意味ではなくて、まず、女性同士って、障害がある・ないということでも分断されてるし、そのなかでもさらに、例えば「結婚しているかどうか」「子どもを生んだかどうか」。母であるかどうかって、男性が父親であるかどうかよりも、もっとなんか強調されるっていうか、分断されている気がするんですね。だから、まずは女性同士がつながっていくことが大事だし、複合的な差別っていうのは、何も障害女性だけじゃなく、性的マイノリティとか在日外国人の方とか、部落女性、そういった方々にもあるので、そういった二重三重の苦しみがあるっていうことは、2倍3倍の人たちと、実は共感しあえることだと思うんですよ。なので、そういった人たちとどんどんつながりをね。まず女性から。女性のパワーで、ぜひ変えていきたいな。そして、そういった苦しみを次の世代に引き継がないこと。それがすごく大切だなって思います。
高山
みなさんからお話うかがって、目からウロコというか、いろんな問題も分かりましたし。でも本当にこれはまだまだちょびっとなんですよね。もっといろんな話が・・・。また、そういったこともみんなで共有していけたらいいですね。 今日は、障害のある女性としてというテーマで、藤野喜子さん、藤原久美子さん、中山玲子さんと共にお伝えしました。みなさん、今日はどうもありがとうございました。
藤野・
藤原・
中山
ありがとうございました。

(スタジオトークおわり)

高山
三人の女性のお話、いかがだったでしょうか。男性、女性にかかわらず、また障害の種別や障害のあるなしに関わらず、番組をお聞き下さった皆さんからのご感想やご意見、ご自分の体験やメッセージなども、ぜひお寄せ下さい。番組専用のメールアドレスは、kiite★nhk.jp(★を@に変えて下さい) です。
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