「私たちの生きにくさ ―障害のある女性として―」
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(2013年6月23日(日))
【性的な被害について】
- 高山
- DPI女性障害者ネットワークがまとめた報告書には、障害のある女性が、性的な嫌がらせや、つきまといなどの危険な目にあっているケースや、障害への偏見や無知によって、恋愛や結婚を反対されたり、なかには中絶をすすめられたというケースも報告されています。
藤野さんは、調査結果をお読みになられてどう思われましたか。
- 藤野
- はい。視覚障害のことは何となく分かったんですけど、肢体障害者とか聴覚障害のことについては・・・。聴覚障害は、特につきあいがないので、とても、「こんなことで」というのがありました。そして想像以上に、性的被害って多いんだなあと感じました。
- 高山
- 藤原さんはこのアンケートに協力なさったほうでもあると思うのですが、この結果、どう思われましたか。
- 藤原
- はい、女性ネットの方の聞き取りとかも受けたんですね、そしたら私は「こんなこと、人に話すようなことでもない」と思っていた、愚痴みたいな事を、「へえそうなの」と聞いてくれるんですよ。それをこうした立派な報告書にしてくださって、なんかびっくりっていうか。やっぱり、愚痴って、あきらめから出ると思っていたんですけれども、それを口に出したことが共感を呼んで、こんな報告書になるんだなというのをうれしくも思いました。後で聞いた話では、あまりにも深刻すぎるのと、あと、載せたら「これはどこの誰とバレてしまう」というので、載せられなかった方もいると聞いています。
- 高山
- 報告書の中でも、特に多かったのは、性的な嫌がらせなんですけれども、これは日常生活の中で起こることもあれば、仕事中ということもありえますよね。藤原さんも日常生活のなかで、この性的な嫌がらせを受けたことがおありだそうですね。
- 藤原
- そうですね。自転車に乗った人に後ろから、いきなりお尻を触られたということがあるんですけど、相手の姿を確認できない、何が起こったのかなというのとで、恐怖で声が出ないということがありました。すごく悔しかったです。
- 高山
- 藤野さんもそういったご経験がおありとか。
- 藤野
- あの、私は障害者団体の役員などをしていて、夜遅いことがよくあるんですけれども、そのときにタクシーをよく利用します。ある時は、運転手さんが性的な話をするんですね、で、私の反応を見ているような感じでいたり。それからまた別の時は、眠ってしまった時などに、後部座席に乗り込んできたことがありました。車を人のいないところに止めて、多分性的暴行に及ぼうとしていたと思うんですね。で、私はそのときに、力は、結構マッサージなどをやっていて、あるんですよね、だから抑えつけて噛みついて。「連れて行きなさい」ということで、運転してもらいましたけど。
- 藤原
- 相手が刃物とかを持っていたらとか思うと。
- 藤野
- そんな余裕は・・・
- 高山
- 性的な嫌がらせというのを超えて、犯罪じゃないかって、本当に憤りをおぼえるんですけれども。
中山さんは、いかがですか。
- 中山
- 私は先天性の視覚障害者なので、小学生のころから嫌な思い出っていうのは、いくつかあるんですけれども。でも、障害のある子どもって、どちらかというと自分に自信がないので、どんなにつらい思いをしても、親や先生に迷惑をかけられないという気持ちから、苦しくても言えないっていうところもあるし、逆に、苦しい気持ちとかつらい気持ちを押し殺しちゃうっていうところが、結構あると思うんですね。 あと、障害があるっていうだけで、すごくやっぱり目立つ存在というのを、子ども心に知っているので、「学校でうわさになっても嫌だ」ということで言えなくって、私も友だちも、心の中に押し殺してしまっていました。たぶん、大人になって、そういう記憶がよみがえってきたりっていうことも、私も少なからず経験があります。
- 藤原
- 自分を責めるっていうほうにいってしまう。
- 中山
- うん、いくのいくの。
- 藤原
- 何だろうね、あれ。そんなことをされた自分が悪いみたいな。
- 中山
- うん、自分に非があるからっていうのが、すごいあって。
- 藤原
- 恥ずかしいっていうのもあるし、親に対しては。
- 中山
- でもなんか、とにかく私の経験は、細かいことを抜きにして「これは無いことにしよう」って。全部消しちゃう。だから大人になってから、出てくるんだよね。
- 藤原
- 絶対、本当に消えてないもんね。
- 中山
- 変なときに出てくるのよ、それが。あと、町中で気持ち悪いおじさんとかに会っても、「その人がナイフとか持ってたら怖い」って思う気持ちがあって。よく、子どもの、「怖い人に会ったときどう対応するか」っていうところで「大きな声を出しましょう」とかいうと思うんですけど、視覚障害者には、それは通用しないっていうか。「凶器とかもっていた時に、大きな声を出したら殺されちゃうんじゃないか」とか思うと怖くって声が出ないって事もありました。それから、一番最近で悔しかったことは、町中で気持ち悪い人に会ったんですけども、警察にいったときに「相手の顔が見えないのなら被害届は出せない。あなたが大きな声を出さないからいけないんでしょう」と、警官に結構きつく言われてしまって、ショックでしたね。
- 高山
- それはないですよね。
- 藤野
- 「一人で歩くもんじゃない」くらいに思っていると思うんですよね。
- 高山
- 藤野さんはお一人で治療院を開いていらっしゃると、何か、そういうことでお困りになることは、ありますか。
- 藤野
- はい。どうしても密室になるし、はりなどの治療の場合は、薄着になってもらいますので、とても危ないことはあると思います。私自身は以前に性的な暴行をされそうになって、悔しいとか悲しい思いをして、それ以来、男性患者はしなかったんですね。でもそんなぜいたくも言ってられなくて、不景気ですので。それからは紹介していただいて、男性患者さんは治療をしています。
- 高山
- かなり切実な問題ですね。
- 藤野
- そうですね。