ハートネットメニューへ移動

本文へジャンプ

盲ろう者の生活相談の現場から

盲ろう者の生活相談の現場から

全4ページ/1ページ目

(2014年1月12日(日))

ゲスト:前田 晃秀さん(東京都盲ろう者支援センター長)
高野倉 勇樹さん(弁護士)
司 会:青木 裕子
-------------------------------------

以下、「前田」は前田 晃秀さん、「高野倉」は高野倉 勇樹さん、「青木」は青木 裕子の言葉です。

【番組テーマ音楽】

青木
「聞いて聞かせて~ブラインド・ロービジョン・ネット~」、青木裕子です。
視覚と聴覚に障害がある盲ろう者は、情報を入手する方法が限られ、コミュニケーションや移動に大きな困難があります。
そのため社会から孤立しがちで、適切な支援がなされていないのが現状です。
きょうは、盲ろう者の置かれた現状と支援のあり方について考えていきます。

【番組テーマ音楽終わり】

青木
スタジオにお二人のゲストにおいでいただいております。
東京都盲ろう者支援センターのセンター長、前田晃秀さんです。
前田さんは、東京都の盲ろう者支援センター開設時から、盲ろうの人の支援にあたっています。
前田さん、どうぞよろしくお願いいたします。
前田
前田です。よろしくお願いいたします。
青木
もうお一方、弁護士の高野倉勇樹さんにおいでいただいております。
高野倉さん、どうぞよろしくお願いいたします。
高野倉
高野倉です。よろしくお願いいたします。
青木
高野倉さんは、第二東京弁護士会の高齢者・障害者総合支援センター「ゆとりーな」の運営委員会で障害者支援に取り組んでいらっしゃいます。
「ゆとりーな」は具体的にどのような活動をしているんですか。
高野倉
「ゆとりーな」では財産管理や虐待問題など、高齢者と障害者のかたがたに関する問題を取り扱っています。
具体的には法律相談や弁護士の紹介・派遣というのが主な活動です。
あとは無料での電話の法律相談というのを行っています。
青木
高野倉さんはどうしてこういう道にお入りになったんですか。
高野倉
私を含め若い弁護士、障害者に関心を持っている弁護士がたくさんいます。
そういった弁護士が中心になって、障害者のことにも取り組んでいこうということになりました。
その中で、東京都盲ろう者支援センターのほうに伺わせていただいて、盲ろう者体験という、アイマスクと耳栓をつけた盲ろうの疑似体験をして、そういった中で、盲ろう者というのが大変な状況におかれているんだなと、周囲の状況がわかりませんので、移動するというのも難しいですし、だれかが話していることもわからない。
コミュニ―ションが難しいという大変な状況にあるということを実感したので、そこから盲ろう者支援ということのお手伝いをさせていただくようになりました。
青木
なるほど。弁護士というお立場からすると、この盲ろう者支援というのは、今どのあたりになっているんですか。
高野倉
まだまだ始まったばかりというところになります。
ですので、法律相談などをして、弁護士に相談することができるんだということを、皆さんに知ってもらうというのが第一かなと思っております。
これから先は、自治体にアドバイザーとして弁護士を派遣して、こういった障害者福祉にかかわっていくということもやっていこうというふうに考えています。
青木
そういう段階だというところなんですが、さてその盲ろう者といいますと、目と耳に障害がある人というのはわかるんですけれども、具体的にはどんな障害で、どんなコミュニケーション手段で意思疎通をしているのかということなんですが、いかがでございますか、前田さん。
前田
盲ろう者は、見え方と聞こえ方の組み合わせで、大きく四つのタイプがあります。
一つは、全く見えず全く聞こえないという状態の全盲ろう。それから、見えにくく聞こえない状態の弱視ろう。
全く見えず聞こえにくい状態の盲難聴。それから、見えにくく聞こえにくい状態の弱視難聴。こういった組み合わせによって四つのタイプがあります。
こういった障害の状態によって、またコミュニケーションの方法が変わってきます。
少し聞こえているといった場合は、音声を直接聞き取るという方法を使いますし、聞こえないけれども少し見えていれば、手話を目で読み取ったり、あるいは筆談をしたりという方法を使います。聞くことも見ることも難しいといった場合は、例えば手のひら手のひらに文字を書く手書き文字ですね、こういった方法とか、あと指点字、それから触手話、こういった方法を使います。
青木
なるほど。本当にいろいろなコミュニケーションの方法があるとは言いましても、それぞれがとても違いますし、またどうなんでしょう、高野倉さん。
法律関係とか抽象的な内容になる難しい話とかになると、意思の疎通というのは難しくなるんじゃないでしょうか。
高野倉
そうですね、やはり難しくなります。
それを実感したのが、昨年平成25年に東京都盲ろう者支援センターのほうで、無料の法律相談ですとか、また、私が法律や人権に関する講演をさせていただいたんですけれども、その講演のときに、私が話した内容を通訳のかたが通訳をしていくわけなんですけれども、その通訳の方法というのも大体五つぐらいありまして、目で見る手話、そのほかに先ほどの触手話、そして指点字。
あとは補聴器のマイクを使って私のしゃべったことを復唱してもらうという方法。あとは手書き文字、手のひらに文字を書くという方法。
こういった5種類の方法を使って通訳をしていくということになりますし、それに加えて、私が用意した原稿を拡大印刷したものを読む。
あとはそれを点字に印刷し直したものを読む。そういったかたもいらっしゃいました。
なので、こういったいろいろな種類の通訳に対応できるように、話す内容、あと話すスピードを特に遅くしたりということをしました。
あと、どうしても抽象的なことはなかなかわかりづらいということがあるので、例えば「虐待」という言葉を使うときにも、単に「虐待」と言うだけではなくて、「これは意地悪やいじめのことです」というふうな言い換えをして、わかりやすいようにという工夫はしてみました。
青木
高野倉さん、そうすると皆さんの反応を見ながら、ここまでは大丈夫だなと思いながら、ずっと話を進めていくわけですね。
高野倉
そうですね。しゃべったあとに、しばらく私は無言の時間があります。
皆さんが大体理解してくれたかなというのを見たあとに、また次をしゃべり始めるというかたちですので、話す内容はとても少ないんですけれども、時間としてはやはり倍、それ以上かかりました。
青木
なるほど。では、実際に盲ろうのかたがどんなことに困っているのか、見ていきます。
一人一人の置かれた状況によって課題は違ってくると思いますが、取材に応じてくれた個別ケースから、抱えている問題と支援のあり方を考えていきます。
取材に答えてくれたのは川畑正志さん、78歳です。子どものころから目が悪かったのですが、小中学校は一般校で学んできました。
28歳のころから視力がますます悪くなり、点字の勉強をしてマッサージの資格を取りました。
その後、病院勤務のマッサージ師として安定して働いていた57歳のとき、突発性難聴で聞こえにくくなりました。
現在は箱型補聴器を装用し、大きな声でゆっくり話しかけてもらうことで、コミュニケーションを取ります。
今回の取材は、川畑さんの聞こえに合わせて、補聴器のマイクに向けて復唱する音声の通訳介助者を介してお話を伺いました。