ハートネットメニューへ移動

本文へジャンプ

盲ろう者のための本音ラジオ ―もっと毎日を楽しみたい編―

盲ろう者のための本音ラジオ ―もっと毎日を楽しみたい編―

全3ページ/3ページ目

(2014年8月24日(日))

《第三部 わたしたちの挑戦したいこと》

高山
さて、番組の残り時間も少なくなってきました。
後半は若い2人を中心に、2人がこれから挑戦したいことについて聞いてみたいと思います。まず荒さんからお聞かせいただけますか。
えー、私は今「コミュニカ」という全国の盲ろう者たちがつくっている雑誌があるんですが、その編集にかかわらせていただいています。その雑誌をグローバル化したりとか、何かこう、おもしろい企画をするのが目標です。あとは、大学院にも行きたいと思っているので、そのぉ、点字でテストを受けるのがすごく大変な作業になりますが、そこであきらめずに一生懸命取り組みたいなと思っています。
高山
荒さんは本もお書きになったと聞いているんですけれども。
えーと、私が聴覚を失った、視力を失っていく過程っていうのを、本には自分のそのときの気持ちとかをつれづれと書いています。で、今、大体でき上がったので、プロの方に編集してもらっているところで、えーと、本の表紙とかは、やっぱりフランスっぽくかわいい感じで、エッフェル塔とか、あとはマカロンを描いたりしたいなと思っていまして、盲ろうになってみて、エッフェル塔を触ると、東京タワーにしか思えないし、マカロンも、3段階マカロンとかあるんですけど、あれも触った感じだとハンバーガーが3つ乗っている感じで、でも、うーん、それでも好きなので、かわいさをわかってもらえたらうれしいなと思っています。
高山
本ができるのを楽しみにしています。
そして森さんは、卒業までに何年かありますけれど、学生時代のうちに挑戦してみたいこと、あるいは卒業してから挑戦したいことなど、お話しいただけますか。
先ほど1人旅のことを話しました。岐阜まで新幹線と高速バス、それから普通列車で帰ったことがあります。でも、まだ飛行機に乗ったことがありません。ですので、今度は飛行機に1人で乗ることに挑戦してみたいと思っています。それから、先ほど50音ボードやコミュニケーションに使えるカードについて説明しましたが、そういったものを含め、多くの盲ろう者がより安全で生活しやすい環境になるよう、いろいろ工夫をしていきたいと思っています。例えばコミュニケーションに使える道具の開発や、盲ろう者への支援をしていただける方の養成などもできればと思っています。
高山
ありがとうございます。福島さんが日本で初めて盲ろう者として大学に進学したころとは、また随分と時代が変わってきた気がしますけれども、今お2人のお話を聞いていかがですか。
福島
そうですよね、本当隔世の感。31年前ですけれどもね、私。
えーと、まず森君については、あの、お聞きになった方は、あのー、「えらい真面目なやつやな」というふうに思われたかもしれませんけれどもね、生まれつきのね、盲ろうの子供が大学に進んだっていうのが、いかにすごいことか。ヘレン・ケラーと同じことですよね。彼の真面目さの背後には、すごい大変な苦労があるんですね。だけど、まあこれからの課題は、やはりあのー、その真面目さ以外の部分を開拓することだと思うんで。まあ、私は大学教員なんであんまりこういうこと言うと、えー、語弊があるかもしれませんが、大学の勉強はまあほどほどにしてですね、森君にはまあ人生勉強をさらに続けていただく。具体的には、もっと恋愛経験を積んでいく。やはり、あのー、彼女をつくって、彼女と一緒に旅をするっていうのも、ぜひ実現してほしいなというのが、あのー、森君への期待ですね。
高山
なるほど。
福島
それは楽しみが倍になりますよ。
高山
あはははは(笑)そうですね。1人旅じゃなくて2人旅で。
福島
はい。荒さんについては、あの、荒さんも本当に、あの、目と耳だけでなくて、すごく重い病を抱えて生きてらっしゃるんで。で、彼女は、あの、さっき、ファッションのこととかおしゃれのこととかも話をしていましたけれども。たぶんね、荒さんが、あの、毎日生きていること、元気に生きているということ自体がすごくおしゃれなことだし、それが輝いていることなので、うーん、私たちはその、ずっとこれからも毎日おしゃれであってほしいなと思いますね。それが一番のすばらしいことかなと思います。
高山
そうですね。同感です。
3人の皆さん、そして通訳介助の皆さんも、きょうは本当にありがとうございました。
福島
はい、ありがとうございました。

(♪番組のエンドテーマ曲が流れてくる。バイオリンがメロディを奏でる。そこにアナウンスの声がかぶる)

高山
いかがでしたでしょうか?「盲ろう者のための本音ラジオ」。
ゲストは福島智さん、荒美有紀さん、森敦史さん、担当は高山久美子でした。

(追記)
2019年3月30日、荒美有紀さんが逝去されました。
心よりご冥福をお祈りいたします。