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放送内容

点字塾で広がる可能性~Z世代が開く未来~

2023年6月18日(日) [ラジオ第2] 午前7時30分〜8時00分
(再放送)2023年6月18日(日) [ラジオ第2] 午後7時30分〜8時00分
(再放送)2023年6月24日(土) [ラジオ第2] 午後3時15分〜3時45分

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放送内容


小汲さん(右)とオンラインで参加の山中さん

講演会の様子

大学の中庭で友人とくつろぐ小汲さん(中央)

 「視界は、少し前まではタピオカドリンクのちょっと太めのストローくらいだったんですが、今は普通のストローくらいになりました。」
 いかにも若者らしい例えで、自らの見え方を説明するのは小汲唯奈(おぐみ・ゆいな)さん(18)。この春、東京都立文京盲学校を卒業し、都内の大学に進学しました。小学4年生の頃、見えにくさを感じた小汲さん。受診したところ、網膜色素変性症と診断されたものの、その事実は本人には知らされず、教科書が読めないなら、家で覚えてくればいい、と努力で学校の授業を乗り切っていました。しかし、中学に入ると努力だけでは太刀打ちできず悩んでいたところ、病気の事実を知らされたと言います。高校は都立を一般受験しましたが、視野狭窄のために問題を解くのに時間をとられ、同時期に受験していた盲学校に進むことに。「どうして私だけ・・・」。そんな否定的な思いは、進学してから大きく変わることになります。視覚障害者が学ぶための環境が整った盲学校で、必要な配慮を受けることの重要性を認識。点字という新たな文字を獲得することで、学びの選択肢はさらに広がったと言います。しかし、大学進学を意識するようになったころ、小汲さんは再び壁にぶつかります。社会には、視覚障害者が学べる塾がほとんど存在しない、という現実でした。「視覚障害者を教えた前例がない」「専用の教材がない」と断られ続けたのです。小汲さんはこうした経験から、「点字塾」の設立に動き出しました。当事者はもちろん、一般の人たちもともに点字を学べる塾。学習機会の提供のほか、新たなコミュニティが生まれる場になるのではないか。今、そんな思いを胸に、講演や交流会を通して協力者を募る毎日を送っています。
 実は小汲さんが悩んだときに、いつも支えてくれた強力な相棒がいます。幼なじみの山中麻里江(やまなか・まりえ)さん。二人で、点字の英語をもじった「Braillies(ブレイリーず)」というチームを組み、様々な場で自分たちの思いを発信しています。二人の夢は、「“みかた”がたくさんの社会をつくる」こと。たくさんの味方(仲間)と、多様な見方(視点)を大切にしていきたいという意味です。小汲さんのこれまでと、点字塾設立への意気込みなどを聞きます。

【収録を終えて】  遠田恵子

 「目が見えないと、どうやって料理をするんですか?」「炒め物なら、音の変化ででき具合が分かります。」「他人と自分を比べて、落ち込むようなことはなかったですか?」「時間は誰にも平等に24時間。落ち込んでいる暇があったら、その分一歩でも前に進んでいきたいです。」
 5月末、水戸市で開かれたBrailliesの講演会。終了後二人の前には、話を聞いた高校生たちの長い列ができました。彼らの素朴な疑問に明快に答える二人。笑いを交えながらの質疑応答は、とても楽しそうでした。
 会場には、白杖をもった高校生の姿も何人か見られました。そのうちのひとり、男子高校生に講演の感想を聞いたところ、「自分と同じ世代の人たちが、積極的に情報発信していることに驚いた。当事者からの発信は重要。自分も何かやっていきたい。」と、少し興奮気味に答えてくれました。こうして思いは広がっていくのですね。
 小汲さんは言いました。「話を聞いてくれた人たちが皆“自分ごと”として受け止め、何か行動を起こしてくれたら嬉しい、そのために種をまき続ける」のだと。山中さんもまた、「視覚障害者と社会の懸け橋になりたい」と明確な目標を持っています。若さと情熱、そして確かな戦略。Brailliesの二人なら、きっと何かをやってくれるに違いありません。乞う、ご期待!

出演者

小汲唯奈さん(Braillies共同代表/大学生)
山中麻里江さん(Braillies共同代表/大学生)
遠田恵子(司会)

関連情報

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