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フェロモン×動物行動学

フェロモンといえば、“お色気”のこと?・・・実は、あまりよく知られていないフェロモンを深掘りすると意外な真実が…!

ある?ない? ヒトのフェロモン

  • ナレーション:増田明美さん
  • アニメーション:オタミラムズ
    声の出演:宮崎寛務さん・宮川美保さん

では、私たち人間にはフェロモンはあるのでしょうか?その答えを出すために、これまで多くの研究者たちが挑んできました。

ヒトのフェロモン研究物語。始まり始まり~
まずは、1970年代、アメリカの研究者。ある大学の寄宿舎で暮らす3人の女学生。

女学生1:「今度プール行かない?」
女学生2:「ごめん!私そろそろ生理なんだ…」
女学生3:「私は来週来そう」

ところが、共同生活するうちに…

女学生1:「今日生理で…」
女学生2:「私も!」
女学生3:「え!私もだよ」
3人 :「あれ…?そろってる!?」
研究者:「人間の女性には、一緒に暮らすと月経が同調するフェロモンがあるかも!」

“寄宿舎効果”と呼ばれるこの現象。真偽を巡って30年以上議論されましたが、未だ証明されていません。

一方、1990年代、スイスの研究者。男性の被験者を集めると…

研究者「男性のみなさん、このTシャツを2日間着続けてください」

男性たちが2日間着たシャツ。これを、今度は女性の被験者たちに…

研究者「女性のみなさん、このTシャツの匂いを嗅いで好き嫌いを教えてください」
女性3人 :「はい!」
女性1:「くんくんくん」
女性2:「これが好き!」
女性3:「私はこれ!」
研究者「ほとんどの女性が、自分と最も離れた免疫の遺伝子を持つ男性の匂いを選んだよ!子孫を残す相手を判別するフェロモンがあるんじゃない?」

しかし、別の実験では違う結果も。結局証明はされていません。

長年にわたり世界中の研究者たちが追い求めてきた“ヒトのフェロモン”。果たして、あるのでしょうか?

「ヒトには昆虫とか動物で見られるような、そういったフェロモンというのは恐らく存在しない。」そう語るのは、フェロモン研究をけん引してきた東京大学大学院農学生命科学研究科教授の東原和成さんです。

(東原さん)
「フェロモンって、そもそもあらがえるものではありません。だからフェロモンがもしあったとしたら、もう私たちは本当に理性とかは関係なく、本能的に行動が引き起こされてしまう。それは人間社会では、もう見られないわけです。」

フェロモンは、哺乳類の場合、主に鼻の中にある鋤鼻器(じょびき)という器官で受け取っています。しかし、人間は進化の過程でその機能が退化したのです。ということは、本当に人間にフェロモンはないんでしょうか・・・?

(東原さん)
「動物とか昆虫が使っているフェロモンとはちょっと違うかもしれないけれど、フェロモンに似たような作用というか、そういうレベルであれば、ヒトでも十分存在する可能性はあると思います。」

ヒトにとって、フェロモンに近い効果があるもの。それは“匂い”だと、東原さんは言います。その根拠となったのは、排卵期の女性のワキの匂いが男性にとって心地よく感じられるという実験。東原さんは、その匂い物質について更なる研究を進めているそうで…

(東原さん)
「排卵期の体臭。私たちは、そのにおい物質をある程度同定しまして、それは近い将来発表する予定でいます。行動じゃないけれど、気持ちの変化を引き起こすようなものが、匂いを介してお互いにコミュニケーションをとっていることは間違いないですね。それも、無意識のうちにですね。」

さらに東原さんは、母親が赤ちゃんの頭の匂いを嗅いだとき、絆を強めるホルモンが多く分泌されることも突き止めました。

(東原さん)
「やっぱり匂いって、もっともっと人間関係を含めてポジティブな意味で、すごく活用できる部分あると思うんですね。何気なく私たちの気持ちを落ち着かせたりとかですね、あるいは人間関係が良くなったりだとか、そういった世の中の争いをなくして平和にするっていうのに、もしかしたら匂いは使えるかもしれません。」

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