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マスターベーション×言語学

マスターベーション、自慰、オナニー、セルフプレジャー・・・なぜこんなにたくさん呼び名があるの?辞書編さん者の飯間浩明さんと、その豊かな言葉の世界を辿ります!

「神さまの前で・・・!?」

  • ナレーション:高山みなみさん
  • アニメーション:冠木佐和子さん

統計によると男性の94.2%、女性の56.6%が経験しているマスターベーション(2020年日本家族計画協会 調べ)。年齢や性別にかかわらず性欲があるのは自然なこと。一方、マスターベーションのことを、人前では話しづらいという人も少なくないようです。「言語学的にみると、この『話しづらさ』こそが、言葉の豊かさを生み出している」と言うのは、長年、日本語を見つめ続けてきた辞書編纂者(へんさんしゃ)の飯間浩明(いいま・ひろあき)さんです。

(飯間さん)
「類語辞典を見ると…自慰、自涜、皮つるみ、手淫、独悦、大悦、腕てんごう、ひとりてんごう・・・・いろいろ考えだすなと思います。人前で言わない、ひそかに使う言葉だから、自分たちだけの表現が出てくるんですね。ただ、初めは隠語のつもりで使っていても、友達が同じように使って、みんなが使うようになったら、もうその言葉は秘密に使えなくなってしまうと。それでまた新しく人に分からないような言葉を作り出すんです。」

マスターベーションを表す隠語の中で、最も古いと言われるひとつ、「腕挙(かいなげ)」。
今からおよそ1000年前の、神様に捧げる神楽歌に出てくる言葉です。

おのれさへ 嫁を得ずとてや
捧げてはおろし や
おろしては捧げ や
腕挙(かいなげ)をするや

農作業をしている独身の男が傍らにカニを見つけ、「お前も嫁がいないから、ハサミを上げたりおろしたりして腕挙(かいなげ)をしているのか」という場面。

(こんなことを神様の前で歌っても大丈夫なんですか?)
(飯間さん)「陽気に歌ってくれるとむしろ神様は喜ぶんじゃないでしょうかね。そうやって神様を楽しませるっていう。古代は性をおおらかに歌うっていうことが、まあごく一般的でしたね。」

江戸時代には、「五人組」という隠語があったそうです。

(飯間さん)「『五人組』は、江戸時代の制度ですよね。自慰行為をするときの手の指が5本だから、それを五人組というふうに擬人化してるわけです。そこに親しみを感じさせるという、そういう印象を受けますね。」

しかし、明治時代になると西洋の影響を受け、マスターベーションを表す言葉の雰囲気が一変します。その代表的な例が「自涜」と「手淫」です。

(飯間さん)「涜というのは『けがす』という意味ですから、自分を汚すという言葉です。性的快感を得ることを汚すという文字で表現してるということで、あんまり陽気な感じはしないですよね。どっちかというと、『陰キャ』ですよね。」

当時の西洋医学では「マスターベーションは心身に悪い」と考えられていました。
その影響で生まれた「『陰キャ』な言葉」が小説などで使われ、広まっていったのです。

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