場面緘黙Q&A 発症の原因やメカニズムは?
場面緘黙を発症する原因やメカニズムは?
同じ環境や状況でも場面緘黙となる子どもとならない子どもがいますが、何が違うのでしょうか?場面緘黙を発症する原因やメカニズムについて知りたいです。
まだ研究段階ですが、「不安になりやすい気質」なども関係しているようです
原因や発症メカニズムはまだ研究段階ですが、子どもによって発症要因や症状に影響する要因が異なります。発症要因(原因)は、「不安になりやすい気質」などの生物学的要因、心理学的要因、社会・文化的要因など、複合的な要因が影響していると考えられています。
多くの子どもが、新しい刺激に脳が敏感に反応する「行動抑制的な気質(※1)」を元々もつという仮説が現在は有力です。不安が高まりやすく、行動が慎重となるため、環境に慣れるのに時間がかかります。中には、自閉スペクトラム症や言語障害、知的障害、協調運動障害、吃音などの神経発達障害やその傾向をあわせもつ子どももいます。トラウマや虐待は、発症の直接的原因としては否定されています。ただ、場面緘黙の子どもの中には、トラウマや虐待が影響している事例もあります。
場面緘黙の子どもは、自分が話すのを人から聞かれたり見られたりすることに強い不安を感じます。話そうとすると不安や緊張が高まりますが、話さないでやり過ごすと、不安や緊張の高まりを回避できます。そのため、話さないでいる行動が定着すると考えられています。
(※1) ジェローム・ケーガンは、乳児の気質に関する研究の中で、見知らぬ人や慣れない状況に適応するのに時間がかかる乳児を“行動抑制的”としています。全体の10~15%の子どもがこの気質を持つグループに属しており、近年の研究結果によれば、“その傾向は生涯続く”ということが示されています。日本でも、エレイン・N・アーロンの提唱したHSC(Highly Sensitive Child)という類似の気質概念が近年よく知られています。