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ろうを生きる 難聴を生きる「夢はプロのバレリーナ」<字幕スーパー>

    3月に東北地方で開かれたコンクールで1位に輝いた聴覚障害者のバレリーナがいます。小学5年生の菊池海麗(みらい)さん。幼い頃人工内耳の手術を受けました。単純なピアノのメロディを聞き取って踊ることはできますが、複雑なリズムの音楽が苦手です。東京で開かれる大きなコンクールへの出場を決めた海麗さん。リズムの複雑な課題曲に苦労します。本番に向け練習に励む海麗さんと彼女を支える家族やバレエ講師の姿を追います。

    出演者ほか

    高山久美子

    番組ダイジェスト

    夢はプロのバレリーナ

    あるバレエ教室。練習に励む子どもたちのなかに、聴覚障害の女の子がいます。菊池海麗(きくち・みらい)さん、小学5年生。バレエを始めて4年になります。

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    いま両耳とも人工内耳を使っている海麗さん。聴覚にハンディはありますが、猛練習を重ねることでバレリーナとして著しい成長を遂げています。3月に開かれた、東北地方のあるコンクール。聞こえる子どもたちと競い、参加した部門で1位に輝きました。

    菊池海麗さん
    「バレエが楽しいから、もっと前よりも上手になりたいから。」

    海麗さんは、さらに大きな舞台に挑むことに…。全国からバレリーナが参加するコンクール。優勝者のなかには、その後、海外に留学した人もいる大会です。実力のある子どもたちを相手に上位に入ることができるのでしょうか。聴覚障害の女の子の挑戦を追いました。

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    岩手県盛岡市。菊池海麗さんは週3回、この町のバレエ教室に通っています。シンプルなピアノ曲ならば人工内耳で聞き取ることができるので、メロディーに合わせて踊れます。しなやかで、きれのある動き。

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    バレエ教室で指導する武田由梨(たけだ・ゆり)さんです。武田さんは海麗さんを「人を引きつけるセンスがある」と高く評価しています。

    バレエ教室 指導者 武田由梨さん
    「初めてコンクールに出したとき、衝撃でしたね。こんなに踊れるんだって思いました。表現力であったりとか、その内から出てくる人を魅了するような。すごい、ぱってお花が開いたみたいな踊りをして。」
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    しかし…海麗さんには課題もあります。それは不規則なリズムの曲を踊ること。今度のコンクールの課題曲も、途中でテンポが変わってしまいます。リズムを正確に聞き取ることができないため、どうしても体の動きがずれてしまうのです。指示されたリズムに体を合わせるのが精いっぱいです。

    バレエ教室 指導者 武田由梨さん
    「このカウント(でテンポ感)をちゃんと自分に入れないと。」
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    バレエ教室 指導者 武田由梨さん
    「音ずれっていうのは、バレエ界ではよくないんですね。音と動きがもう一緒じゃないといけないんですけど。たぶん、ずっと課題になると思います、海麗ちゃんの。改善策はいつも通りの練習そのままをずっと続けるしかない感じですかね。」

    家に帰ってからも復習を欠かさない海麗さん。苦手なリズムの練習をすることにしました。曲に合わせてタンバリンをたたき、リズムを覚えます。最初は合っていますが、曲が進むにつれ、ずれてしまいます。

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    祖母の春枝(はるえ)さん、聴者です。この日、練習を手伝いに来てくれました。

    海麗さんの母 菊地樹理さん
    「合ってる?」


    海麗さんの祖母 春枝さん
    「ちょっとずれた途中。だからもう一回やって。」

    スピーカーに手を押し当てます。音の振動を直接感じて、リズムを覚えようというのです。だいぶリズムがつかめてきました。

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    母親の樹理(じゅり)さん、聴覚障害者です。二人はふだん、口話と手話で会話をしています。

    海麗さんは3歳のときに右耳を、6歳のときに左耳を手術し、人工内耳を使うようになりました。補聴器をつけてもほとんど聞こえなかったことが、手術に踏み切った理由でした。

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    実は幼いころにバレエを習っていた樹理さん。海麗さんのように音楽に合わせて踊ることができず苦労した経験があります。それでもバレエを習わせようと思ったのには訳がありました。

    海麗さんの母 菊地樹理さん
    「バレエの世界って本当に厳しいので、(娘を)精神的にも気持ち的にも鍛えてもらってほしいなと思います。例えば聞こえなかったら先生に聞こえないと言う勇気とか、分からなかったら分からないと言う勇気とか。当たり前のことなんですけど、そこを教えてくれると思うので、バレエは。」
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    樹理さんの勧めで始めたことがあります。日々のレッスンで気づいたことを書き留めるようにしているのです。

    ディレクター
    「注意されたところとか、大事にしなければいけないところを書いている?」

    菊池海麗さん
    「あと、お母さんとか、ばあばからアドバイスをもらったことを書いたりしています。」

    ディレクター
    「これが理想のきれいなかたち?」

    菊池海麗さん
    「ここは手を高く上げない、とかを書いてある。」
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    菊池海麗さん
    「バレエが楽しいから、もっと前よりも上手になりたいからメモしてます。」

    この日、レッスン場に向かう海麗さんの姿がありました。課題曲のリズムを覚えられるようになってきたので、実際に踊ってみることにしたのです。最初のころに比べ、リズムと体の動きが大きくずれることはなくなりました。

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    しかし、祖母の春枝さんからある指摘を受けます。

    海麗さんの祖母 春枝さん
    「ちょっと待って、ここが…。」

    足が動くタイミングがワンテンポ速くなっていると注意されました。「足の動き出しのタイミングに気をつける」。本番を前に最後の修正点が分かりました。

    海麗さんの祖母 春枝さん
    「ここのあいだが、ちょっと数えられないから。」
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    菊池海麗さん
    「ちょっと足を上げて、上げるところに入るところがちょっとむずかしいけど、大体は分かります。」

    コンクールの本番がやって来ました。この日参加するのは小中学生や高校生など、およそ200人。全国各地のバレエ教室に通うダンサーたちです。聴覚に障害がある出場者は海麗さん、ただ1人。

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    武田さんは、舞台袖から海麗さんを見守ります。母の樹理さんは、観客席です。

    いよいよ、海麗さんの出番。

    「3019番。」

    滑り出しは順調です。苦戦していた足を上げる部分。リズムに合わせて踊ることができました。

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    武田さん、海麗さんを温かく迎えます。

    バレエ教室 指導者 武田由梨さん
    「いつもどおりでした。ちょっと点数が見えなかったので分からないんですけど。いつもどおり、よかったと思います。落ち着いてました。」


    菊池海麗さん
    「ちょっと緊張したけど、思いっきり踊れたと思いました。」

    競技レベルが高いこの大会で、25人中、見事6位。この秋に行われる全国選抜大会への出場権も獲得しました。

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    菊池海麗さん
    「(もっと大きな大会に)出てみたいです。(バレエが)もっと上手になりたい。」

    将来はプロのバレリーナになりたいという海麗さん。夢の実現のために、さらなる挑戦が続きます。

    新着ダイジェスト