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ろうを生きる 難聴を生きる▽聞こえない子どもたちが伝える心のハーモニー※字幕

    去年6月、聴覚に障害がある子どもたちを中心とした合唱団、東京ホワイトハンドコーラスが活動をスタート。ここでは「手歌」という、この合唱団独自の表現方法で歌詞を伝えます。「手歌」とは、手話を交えながら、子どもたちが考えた表現で歌詞をパフォーマンスする方法。去年のコンサート、今年の練習の様子を交えながら子どもたちを指導するソプラノ歌手のコロンえりかさんと、ろうの俳優井崎哲也さんに活動について話を聞きます

    出演者ほか

    【語り】佐田明,高山久美子

    番組ダイジェスト

    聞こえない子どもたちが伝える心のハーモニー


    去年(2017年)、東京芸術劇場で、あるコンサートがありました。オーケストラや合唱団と一緒に舞台に立ったのは、聴覚障害のある子どもたちを中心とした11人のグループです。グループの名前は、東京ホワイトハンドコーラス。

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    手の動きがよく伝わるように、白い手袋をはめたパフォーマンスが特徴です。手話に加え、子どもたちが考えた表現方法で、歌の世界を伝えます。“手で歌う”子どものハーモニー。その世界を見つめます。

    今年(2018年)最初の練習の日。子どもたちが続々と集まってきました。参加するのは、幼稚園児から高校生まで。月に1・2回の割合で集まります。

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    ソプラノ歌手 コロンえりかさん
    「久しぶり。元気だった?」


    子ども
    「元気でした。」


    ソプラノ歌手 コロンえりかさん
    「よろしくね。」


    子ども
    「よろしくお願いします。」

    指導するのは、ソプラノ歌手のコロンえりかさん。そして、ろう者の俳優、井崎哲也さんです。

    このグループで使われるのが「手歌(しゅか)」と呼ばれる表現方法。手話を使いながら、歌詞の世界観を子どもたち自身が考えます。「手歌」は東京ホワイトハンドコーラスが独自で行っている表現方法です。

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    指導しているお二人に、今井翔馬アナウンサーが聞きました。

    今井アナウンサー
    「ホワイトハンドコーラスの皆さんは『手歌』というものをパフォーミングされていまして、この『手歌』っていうのは、どういうものなんでしょうか。『手話歌』とは違うんですか?」

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    ソプラノ歌手 コロンえりかさん
    「手話歌というのは、ろう者の方に伝えるために作られているわけではなく、表現が分かりにくいこともあるということなんですね。まどみちおさんの『小鳥』という詩は『小鳥は空で生まれたか』という歌詞で始まります。生まれるというのは手話だと“生まれる”、お産のイメージですが、小鳥は、このようには生まれないので、子どもたちは考えて、卵がパカッと割れるように『小鳥は空で生まれたか』という表現に変えました。」
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    俳優 井崎哲也さん
    「例えば『雪が降っている』。普通ならば こう表現します。そうではなく、ふわふわ降っているとか、いろいろありますね。子どもたちからは、いろんな意見がでます。例えば『こんこ』を表現するとき、音楽のテンポをコロンさんに確認して子どもたちに伝えると(彼らは)イメージを膨らませて(その様子を)表現してくれます。」
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    歌手であるコロンさんは、ヨーロッパと日本を中心に活躍しています。大学時代には「聴覚障害の子どもと音楽」について研究。現在もワークショップなどを行っています。

    ソプラノ歌手 コロンえりかさん
    「果たして、ろう者の方にとって音楽とはどういうものなんだろう、という疑問が若いときからありまして、ろうの子どもたちに出会ったときに『歌を歌って』とせがまれて歌ったことがあるんですね。本当に必死に目を見ながら歌ったのですが、子どもたちが何かを感じてくれて、お互いの中につながっているものがあることを直感的に感じました。『これは絶対、彼らと一緒に音楽を作る方法があるはずだ』と感じたわけなんです。」

    井崎さんは、「日本ろう者劇団」の代表代行を務めています。このコーラスには、コロンさんの依頼で参加しました。

    俳優 井崎哲也さん
    「今までの手話歌は、私たちろう者が見ると意味が分かりにくいところがあるんです。なぜなら、聴者の表現は手を動かしているだけで無表情なことが多いからです。もっと魅力的な手話表現があるはずです。ろうの子どもたちがいろいろと想像できるような、とっておきの表現を作りたいと思います。」


    ソプラノ歌手 コロンえりかさん
    「今日、全く新しい曲にチャレンジしようと思います。『上を向いて歩こう』。」

    この日、「上を向いて歩こう」の歌詞を、どういう「手歌」にすればよいのか、話し合うことにしました。歌詞の受け止め方は、人それぞれ。皆で意見を出し合います。

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    まず、最初の歌詞「上を向いて」の表現を考えます。

    俳優 井崎哲也さん
    「『上』はこれでOK?」
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    次は、「涙がこぼれないように」です。

    俳優 井崎哲也さん
    「手話だと『涙』『ない』『ように』。でも他にない?」
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    ソプラノ歌手 コロンえりかさん
    「泣いたことある?泣いたことある?」

    早速、一人の女の子が意見を言います。

    子ども
    「けんかしたとき、親に叱られて泣いちゃう。」


    俳優 井崎哲也さん
    「やって。」


    子ども
    「涙が出て、引っ込んじゃう。」
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    俳優 井崎哲也さん
    「私が、ワーッと叱ったらどうする?やってみて。」

    「泣く」という歌詞をどう伝えればよいのか、思い思いに表現します。それを基に「手歌」のイメージを練り上げていきます。

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    子ども
    「いい表現がいっぱいあるんだなと思いました。私もいろいろ想像して、できるように練習します。」


    子ども
    「歌というと、聴者が声を出すイメージだったけど、ろう者にはこんな表現があるんだと驚きました。私が泣くのは、怒られてショックを受けたときがほとんどです。だから、この歌詞にあった『泣く』という表現が思いつきませんでした。」

    東京ホワイトハンドコーラスの活動は、ある海外の取り組みがきっかけで始まりました。「子どもたちがオーケストラに参加することで、貧困や犯罪から守る」。そのプロジェクトは、1975年、南米ベネズエラでスタートしました。日本で始まったのは、2012年。最初は、東日本大震災で被災した、福島県相馬の子どもたちを支えるのが目的でした。そして去年、コロンさんをアドバイザーに迎え、聴覚障害がある子どもを中心とした合唱団が設立されました。

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    練習では“手で歌う”以外に、いろいろな方法で音楽を体験します。ピアノに触れたり、歌っているコロンさんの喉に手をあて、振動を感じたり。このような経験を重ねることで、聞こえない子どもたちは、音楽をより深く理解すると言います。

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    ソプラノ歌手 コロンえりかさん
    「ベネズエラの大平原の曲を練習していたときに、バイオリンとかホルンとかコントラバスとか、いろんな楽器に触れながら曲を聞いてもらったんですね。ある子が『大平原の色がよく見える』という表現をしていて、それには私も本当にびっくりしました。」


    俳優 井崎哲也さん
    「いろんな楽器に触る。そして響きを感じる、情感が伝わる。その上で『手歌』の練習をすると、全く表現が変わってくるんです。『手歌』にリズム感が生まれてくるんです。(『手歌』は)感動を表現することが大切だと思います。」

    子どもたちの目標は、12月に行われるコンサート。これから皆で新たな表現を作っていく。

    俳優 井崎哲也さん
    「さらに表現を大きく、例えば、脚も使う、こんなふうにですね。ろうの子どもたちだからできる、そんなものを探したいと思っています。今後『手歌』も含めて興味を持ってもらえるように、この活動が広がってほしい。そして『この歌いい!やりたい!』と思ってくれるような人を増やしていきたいです。」
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    ソプラノ歌手 コロンえりかさん
    「音楽を学んでいくなかで、生きる力だったり、美しいものに触れて心が目覚めたりとか、そういうことによって、子ども一人一人が自信を持って、最終的にはろう者の社会の中だけではなく、いろいろな人たちがいる社会の中で、一人の人間として、自分の尊厳と自信を持って一緒に生きていくことを目指しているところです。これからもう少し準備を進めて、ろうの子どもたちだけではなく、今まで障害があったから音楽はできないと思っていた人たちにも、ここだったら表現できるかもしれないという、そういう場に成長していけるように準備したいと思っています。」

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