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働く聴覚障害者限定! 静かで熱い座談会【前編】

    働く「聴覚障害者」だけが集まって座談会を開催。医療現場・飲食店・IT業界など様々な分野で働く20代・30代の6人が参加しました。企画したのは聴覚障害のあるNHKディレクター・長嶋愛。これまで聞こえる人と共にどう働くかに悩み、同じ立場の当事者からヒントを得たいと、この座談会を開きました。「会議についていけない」、「飲み会がおっくう」など当事者が働く上での悩みを本音で語り合い、“これから”を考えます。

    出演者ほか

    高山久美子(ナレーション)

    番組ダイジェスト

    働く聴覚障害者限定!静かで熱い座談会 前編

    とある日、都内の一角で・・・。

    (参加者一同)
    「乾杯~」

    ある人たち限定の、座談会が開かれました。

    集まったのは、働く聴覚障害者。
    普段、なかなか話せない本音を語ってもらうことにしたのです。

    参加者は、医師や会社員など様々な職業につく6人。

    座談会を企画したのは、NHKで番組を制作する、ディレクター・長嶋愛。
    自らも聞こえないため、音声を文字に起こす通訳と一緒に働いています。

    そんな長嶋も、聞こえない立場での働き方に、悩み続けてきました。

    (長嶋)
    「会話についていけないということが起きて。
    意見も言えない、仕事もできなくなって、自信もなくなって、それこそ心が折れるみたいなことが出てくる」

    座談会では、参加者達が思いをぶつけあいました。

    (松田さん)
    「聴覚障害者は(会議に)参加しなくてもいいんじゃない?議事録があればいいんじゃない?と。
    何か違うんじゃないの?って思って」

    (大塚さん)
    「(お客さんから)びっくりされることが多い。
    『えっ?聞こえないの?困ったなあ』という顔をして、他の聞こえるスタッフを呼ばれる時もありました。
    最初のころは、心が折れてしまうことが何度もあった」

    聞こえる人がほとんどの社会で、聴覚障害者が働くには、どうすれば良いのか?
    2週にわたって、ホンネトークを繰り広げます。

    (長嶋)
    「今、聴覚障害者向けの番組をつくっていて、取材に行くと、働きにくいと悩んでいるっていう声が多い。
    実際の声を聞いてみたいって思って、今日は働いている聴覚障害者を集めて、自由にしゃべりたいって思ってます」

    6人はそれぞれコミュニケーション方法が違います。
    そこで、手話通訳・字幕モニターを使って、語り合うことにしました。

    (長嶋)
    「私が一番興味をもっているのが今川さん。
    お医者さんをどうやってやっているのか、想像ができなくて」

    (今川さん)
    「入院中の患者さんの病気について、検査や治療方法などをいろいろ考えて仕事をしています」

    今川竜二さん・31歳。
    都内の大学病院に勤務する研修医です。
    両耳が聞こえないため、手話通訳をつけたり、口の動きを読み取ったりして働いています。
    診察の時は、どうしているのでしょうか。

    (今川さん)
    「体の中で何が起こっているのか、その状況がわかれば、方法は何でもいいと思うんです。
    音以外の方法に変えて工夫をしてやっています」

    見せてくれたのは、ちょっと変わった聴診器。

    (今川さん)
    「この丸いところが聴診器になっていて、胸に当てると、この画面に同じように波形が出ます。
    音を目で見ることができるんです」

    (後藤さん)
    「たしかに、正確に判断できますもんね」

    (大塚さん)
    「今川さんの話を聞いて『びっくり!』の連続でした」

    (田村さん)
    「気になったんですけれども、カンファレンスや会議といった場面で、テンポ良く話しをしなければならない場面では、どうしていますか?」

    (今川さん)
    「今、正直に言うと、テンポ良く参加できる状況ではありません。
    情報は十分に取れるのですが、自分からタイミング良く情報を出すのはなかなか難しいです。
    ですが、例えば上司が気を遣ってくれるのか、『今川さんどう思いますか?』と聞いてくれることがあります。
    そういったときには、手話通訳を介して思う存分話ができます」

    (田村さん)
    「私自身はある程度は聞こえるんですが、その聞こえたことが正確に理解できたかどうかがわからないという状況が多い・・・」

    都内のコンサルティング会社で働く田村怜(りょう)さん、26歳。
    6歳から聴力が低下し、高校時代にほとんど聞こえなくなりました。
    今は人工内耳をつけて働いていますが、大人数の会議は苦手だといいます。

    (田村さん)
    「周りの状況を正しく理解できたときは、正しい発言ができるんですけれども。
    実はその話はもう終わっていたとか、話が変わっていたのに気付いていなかったという場合に発言をしてしまって、 『あなたは何を言ってるんですか』というようなツッコミを受けたりすることはあります」

    (今川さん)
    「僕も同じようなことがあります」

    (松田さん)
    「聴覚障害者あるあるですよね(笑)」

    (大塚さん)
    「そうそう(笑)」

    (後藤さん)
    「あるある。たしかに」

    (田村さん)
    「いま、一番こういう打ち合わせで困っているのは、他人同士の話がわからないことが多いです。
    例えばお客様同士が話している時に、あそこで何を話しているんだろうと。
    もし話している内容が分かれば、もっと自分も考えられることがありそうなんだけどなぁと思うことは、結構ありますね」

    (後藤さん)
    「僕も田村さんがおっしゃってる気持ちは分かります」

    都内にある、インターネット広告の配信会社で働く、後藤賢一さん、38歳。
    補聴器をつけ、口の動きを読み取って、言葉をつかんでいます。
    しかし、田村さんと同様に、大人数の会議が苦手だそうです。

    (後藤さん)
    「課のミーティングが約20人いて、ぶわーっとしゃべるので、追いかけられなくて、お手上げ状態です。
    聞き返したいけど、なんか、話を止めたらダメとか、ちょっと気を遣ってしまうので。
    皆さんもちょっと気を遣って、今の流れを止めたらだめだなと思って、ちょっと遠慮したりすることはあるんですか?」

    (長嶋)
    「あるある!」

    (松田さん)
    「ありますね」

    (大塚さん)
    「あるある、みんなありますよね」

    (松田さん)
    「あるあるだと思います。おっしゃるとおりで、聴覚障害者って、良くも悪くも我慢している人が本当に多くって。
    我慢して、もう『しょうがない』とあきらめる人も多くって。
    それに対して、何か違うんじゃないの?って思って」

    (大塚さん)
    「私の場合は会社で作ってくれた『耳が聞こえません』というバッジをいつもつけています」

    神奈川県内のコーヒーチェーン店で働く、大塚絵梨さん、30歳です。
    両耳が聞こえず、コミュニケーション方法は手話。
    店では工夫をしながら、接客をしているといいます。

    (大塚さん)
    「(お客さんから)びっくりされることが多いです。
    『えっ聞こえないの?困ったなあ』という顔をして、他の聞こえるスタッフを呼ぶ場合もありました。
    最初のころは心が折れてしまうことが何度もありました。
    聞こえないから『コミュニケーションは無理』って思われているのかなと思うと悲しくて、他のスタッフに代わってもらうことがたくさんあったんですけど 自分なりに工夫して・・」

    大塚さんが取り出したのは自分で考えた指さしボードです。
    注文に必要な言葉を、わかりやすく示したもの。
    お客さんに指を指してもらえば、注文は完了です。
    英語も加え、外国人にも対応できるようにしました。

    (大塚さん)
    「外国人のお客様は身振りだとスムーズに伝わるので、嫌な顔をしないで『OK!』と問題なさそうな顔をしてくださり、私も楽しくコミュニケーションができます。
    もしコミュニケーションができないときは英語で筆談することもあります」

    (後藤さん)
    「接客も方法があれば、できるんだなぁと思いました」

    (大塚さん)
    「やっぱり(友だちや知人から)『聞こえないから無理だよ』と言われることが多かったですね。
    でも、なんで無理って決めつけられるのか、私には意味が分からなくて」

    大塚さんが接客業を志したのには、理由があるといいます。
    それはかつて、客としてコンビニに行った時の苦い経験でした。

    (大塚さん)
    「店員さんは私を見ても、聞こえないことは分からないので、普通に話しかけてくるんです。
    私は話しかけられていることに気づかないので、会計の時に店員さんは不満に思ったのか、おつりを投げてきたんです」

    (後藤さん)
    「ひどい」

    (大塚さん)
    「また私がお店に行ったときに、聞こえないので何も分からないまま頷いていたら・・・
    お弁当を電子レンジに入れて温めている様子がみえて、『あっ、そういうことを言っていたのか』と分かったりとか」

    (後藤さん)
    「わかる」

    (大塚さん)
    「もし、ろう者がこういうお店で働いていたら、ろうのお客様がいらっしゃったときに手話で対応すれば、お客様に満足していただけるんじゃないかなと思って、今の仕事を始めました」

    (後藤さん)
    「素晴らしい」

    (今川さん)
    「大塚さんのお店に行ってみたい」

    (大塚さん)
    「ぜひ!」

    (後藤さん)
    「みんなでいこう!」

    (長嶋)
    「みんなで、ぜひ」

    (田村さん)
    「行きましょうよ」

    トークは仕事の話から職場の人付き合いの話へ・・・

    (後藤さん)
    「飲み会もちょっと悩んでまして、やっぱり最初は気を遣ってくれたりするんだけど、酔っ払うともう皆さんほら、 楽しい会話で盛り上がるので、『聞こえないので、もう1回教えて』って言いづらいし、僕はうつむいてしまいます。
    でも、過去に1回だけ、みんなも盛り上がってて、寂しくなって、抜け出したこともあります。
    で、翌日、上司からめっちゃ怒られました。
    『見てるからね』って言われて。『あぁ・・・』って。
    聞きたいんですけど、皆さんどうしているのかなって、気になりました」

    (田村さん)
    「もうどうにもならない時が多いですね。
    ホテルのバンケットを借り切った、立食形式のパーティーというところでもやるんですけれども。
    まぁ、近くにいる親しい人と話すということをするくらいで、いろんな人に、積極的につかまえにいって話しをするというのはなかなかできないです」

    (今川さん)
    「去年職場の飲み会に誘われた時のことですが『行きます!その代わりに通訳も連れて行っていいですか?』って聞いてみたんです。
    通訳を連れて行くようになって、みんなが話している内容が、本当によく分かるようになって、楽しくなったんです」

    (後藤さん)
    「やっぱ、ちがうんだ」

    (今川さん)
    「内容がわかると、本当に楽しくて。
    通訳がいなかった時は、本当に寂しかったですね。
    酔っぱらうと皆さん、じょう舌になるので、私ひとりだけ取り残されていました。
    もう、食べることに集中するしかない。
    飲み会の場というのはとても大事な場所だと思うんです。
    職場ではみんな、仕事についてのまじめな話が多いですよね。
    でもやっぱり人間は真面目なだけで生きるのは、ちょっとしんどいですよね。
    冗談でもいい、バカな話でもいい。
    そういう話ができる時間も、すごく大事だと思いました」

    (後藤さん)
    「その積み重ねで信頼関係が築かれるし、いざとなったら助けてくれるしね」

    次週予告

    まだまだ語り合いは続きますが、本日はここまで!
    後編は、働く上での悩みを、どうすれば解決できるか話し合います。

    来週もお楽しみに!

    (おわり)

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