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ろうを生きる 難聴を生きる▽手話であなたを笑わせたい 演劇グループ男組※字幕

    ろう・難聴者に大人気の演劇グループ「男組」は、手話で笑いを生み出す、ろうの5人組。ろう者なら“あるある”と共感してしまう失敗談や、手話による「ボケ」がファンから支持されています。この6月、コロナの影響で中止を余儀なくされた公演を1年ぶりに再開。1人でも多くのろう・難聴の客に笑ってもらいたいと、2年ぶりの新作に挑みます。手話でコメディを真剣に追求する男組の舞台裏に密着しました。

    出演者ほか

    【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    手話であなたを笑わせたい 演劇グループ 男組

    ろうの俳優5人が舞台で大暴れ。演劇グループ「男組」です。

    「このビール冷えてるかしら。」

    「冷たい!」

    「冷えているよ。」

    「ホントに?確認しなくちゃ。」

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    手話と体を張ったコミカルな演技!

    「早く手話をしなさいよ!」

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    そして、ろう者の日常を題材にした「あるあるネタ」が、多くの共感を集めています。
    結成して8年。チケットはすぐ完売するほどの人気で、全国各地にファンがいます。

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    しかし去年(2020年)、新型コロナウイルスの影響で公演が中止に。舞台に立てない日々が、1年以上続きました。動画投稿サイトで、配信も試みましたが…。

    男組 砂田アトムさん
    「(ファンが)YouTubeを見てくれたけど、いちばん大事なのは生で会うこと。人を肌で感じること。ろう者が一斉に笑うようなコメディを、ろう者がろう者に届けたかったんです。」

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    今年(2021年)6月、ようやく舞台を再開。コロナ禍で、笑いに飢えていたファンを楽しませました。

    ファン
    「男組の公演は全部見てきたけど、どれもおもしろくて、きょうも最高におもしろかった。」

    ファン
    「手話で表情もあって、字幕だと分からないんですが、表情がいっぱいあって、とっても楽しくて、ずっと泣き笑い。」

    1人でも多くの人を笑顔に。コメディに情熱を注ぐ、男組に密着しました。


    本番まで一か月を切ったこの日。稽古場で、熱い議論を交わす5人の姿がありました。
    演出・脚本を担当するのは、最年長44歳の砂田アトムさんです。メンバーは、30代から40代。俳優として舞台に立ちながら、手話講師やサラリーマンとしての顔も持っています。
    今回の公演は、新幹線の車内を舞台にしたドタバタコメディ。新作です。

    「これは白い新幹線。仙台行きは、緑色の新幹線!間違えているよ。」

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    主人公が新幹線を乗り間違えたところから、物語は始まります。
    そして、ろう者の日常を題材にした、「あるある」が詰め込まれています。

    「ねえねえ、この方も、ろう者なんですよ。」

    「そうそう『兄』だよ、『兄』。」

    例えば、中指を立てる手話。「兄」という意味ですが、聞こえる人は、けんかを売られたと勘違いし怒り出します。

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    砂田アトムさん
    「中指は僕の実体験なんです。中指を立てて、殴られたことがあるんです。そういう悲しかったことや、おもしろかった経験を覚えておいて、(作品のために)ためておくんです。」

    今回、主役を演じるのは、メンバー最年少の今井彰人さん、30歳です。
    持ち味は、この多彩な表現力。新幹線を乗り間違える、ドジな主人公にピッタリだと、初めて主役に抜てきされました。

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    5人だけの舞台では、他の役も掛け持ち。今井さん、今度は仮面をつけて登場し、「聞こえる人」を演じます。中指を立てる手話に、怒り出す男性役ですが…。演出のアトムさん、今井さんの演技に納得できません。

    砂田アトムさん
    「手をつかまれて、引っぱり出されるシーンの、殴られる…、というところまでが長い。そこを短くしてほしい。待った、待った。今のは慌てすぎ。もう1回やって。今のはいい、OK。中指を見つめる動き。さっきはすごく慌てていた。」

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    細かな動きやタイミングまで、緻密に組み立てていきます。

    砂田アトムさん
    「手話によっては、内容がおもしろくても、笑いは半減する。おもしろい内容と手話が、掛け合わされて最強になる。それぐらい手話は大事。(大事なのは)『間』。観客に考えさせる『間』。考えさせない『間』。不意をついたり、そういうことだったのかと思わせる。これには『間』が本当に重要。下手な間だと全部台無しになる。」

    そして、全身を使ったコミカルな演技も男組ならではの魅力。

    「聞こえます、聞こえます。いいですかー、岐阜県の有名なお寺があちらに!」

    体を張った笑いにこだわるのには、特別な理由がありました。

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    砂田アトムさん
    「(子どもの頃)楽しめたのは、志村けんさんの体を張った番組ぐらい。それ以外の番組は意味が分からないし、笑えなかった。ろう者が一斉に笑うようなコメディを、ろう者がろう者に届けたかったんです。」

    本番まで1週間を切ると、1日12時間以上も、稽古場にこもるようになりました。主役の今井さんも、気合十分です。


    自宅でも、舞台のことが頭から離れない今井さん。自主練するのに一番集中できるという場所へ向かいます。そこはなんとトイレ。自分の世界に入り、役になりきります。

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    そんな今井さんを、家族は応援しています。

    今井彰人さん
    「これ(公演)見に行く?お父さん、どこにいる? え? アトム? 違うよー。」

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    Q.公演は見に行きますか?

    妻 智子さん
    「行きます。」

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    今井彰人さん
    「2人とも来ます。(主役と言われて)夢を見たんです。オープニングでライトがついていって、4人を見たら、みんな動かずに前を向いている。これは夢なんじゃないかと思って、話しかけても反応がない。公演は失敗だと思ったところで夢から覚めた。それぐらいプレッシャーに感じている。」

    稽古も終盤。あの厳しかったアトムさんに笑みが。準備は整いました。


    迎えた本番当日。子どもからお年寄りまで、多くのファンが集いました。1年半ぶりの舞台。いよいよ開演です。

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    今井彰人さん
    「いたたたた。」

    「ちょっと待った。僕がかばんを置いたのはこっちだ。ぶつけたのはこっち(左足)だ。」

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    今井さんのボケで、出だしは上々。
    続いて「ろう者あるある」コント。初対面のとき、欠かせない質問といえばこれ。

    「ところで、どこの学校出身?」

    今井彰人さん
    「出身校ですか? 僕は群馬ろう学校です。」

    「群馬ろう学校か。僕は東京ろう学校。」

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    今井彰人さん
    「のどが渇きましたね。」

    そして、車内販売員が登場!演じるのはアトムさんです。

    砂田アトムさん
    「このビール冷えてるかしら」

    「冷たい!」

    「冷えているよ!」

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    砂田アトムさん
    「ホントに?確認しなくちゃ。冷たーい!」

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    「俺、冷たいって言ったよね。」

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    そして、主役の今井さんが、何度も練習したあの中指のシーン。

    (テレビ電話で話す ろうの乗客)
    「久しぶりだね。」

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    聞こえる人が、手話の意味を取り違えてトラブルに。

    (テレビ電話で話す ろうの乗客)
    「“兄”が苦手なんだ。“兄”は向こう。“兄”は向こうにいる方がいいんだよ」

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    大成功です。

    舞台終盤。登場したのは「男組」の公演ではおなじみのキャラクター。アトムさん演じる「手話通訳士」です。

    砂田アトムさん
    「岐阜県の有名な山々があちらに!」

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    車窓から山が見えると教えてくれるのですが、使命感が空回りし、おかしな手話を連発します。

    砂田アトムさん
    「(車内アナウンスが)聞こえます。(名所が)キタキタキタキター!」

    名所が近づいて「来た」を、方角の「北」と通訳し、みんな大混乱。」

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    砂田アトムさん
    「ホントにものを知らないわね。「北」=「来た」です。「キタ」の手話、他に何がある?」

    「正しい手話はこうだ。何かがやって『来る』の『来た』」

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    砂田アトムさん
    「あしたから新しい手話を覚えなさい!『来た』は『北』!覚えなさいよ!
    北(来た)北(来た)北(来た)北(来た)」

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    怒とうの90分が終わりました。

    「ありがとうございました。」

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    困難な時代だからこそ、笑いの力を信じたい。

    今井彰人さん
    「皆さんに会えて、本当にうれしかったです。本当にありがとうございました。」

    男組の挑戦は、これからも続きます。

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