ハートネットメニューへ移動 メインコンテンツへ移動

ろうを生きる 難聴を生きる「就活応援企画・後編~面接の極意~」※字幕スーパー

    聞こえない学生の「就活」に関する疑問やお悩みに、企業の人事や大学教授が回答する企画、後編。今回は、「手話で面接を受けたい」という“ろう”の学生の悩みについて考えます。模擬面接をしてみたところ「手話通訳を介した会話がうまく伝わるか不安」「面接官の質問を深読みしてしまう」といった悩みが浮上。面接で手話通訳をつける際のポイントや本番の注意点とは?

    出演者ほか

    【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    就活応援企画・後編~面接の極意~

    いよいよ就職活動が本格化するシーズンです。

    NHKディレクター1年目の鈴木マクシミリアン貴大です。
    おととしの今ごろ、私も不安いっぱいの中で就活を経験しました。そのころの気持ちも記憶に新しく、取材をするなかで気づいたのは 聞こえない学生のための情報が少ないということでした。

    そこで立ち上げたのが、聞こえない学生の就活を応援する企画です。NHKを拠点にリモート収録、学生たちの不安や疑問にアドバイザーたちが答えます。

    「そもそも『聞こえない』ことが就活で不利になるのでは?」

    前回は就活の第一関門、エントリーシートの自己PRについて考えました。

    後編は次のステップ 面接。

    「コミュニケーションに時間がかかると、マイナスに見られてしまうのではないか。」

    ろうの学生が抱える面接への不安にお答えします。


    参加者は前回に引き続き、就活中の学生、難聴の河野さんとろうの法戸さん。

    photo

    一緒に考えるのは、企業の人事や大学教授など。

    photo

    鈴木ディレクター
    「それでは、リモート先にいらっしゃる法戸さん いかがですか。」

    法戸拓武さん
    「面接の方法なんですけれども、手話を希望しています。そこについて不安があります。」

    photo

    大学3年生の法戸拓武さん。日常会話は手話。高校までろう学校に通い、現在は聞こえる学生と一緒に大学生活を送っています。

    聞こえない学生の進学率は、この14年でおよそ1.7倍。就職活動においても、チャレンジできる職種が年々広がってきているといいます。

    photo

    その一方で「面接」に不安があるという法戸さん。状況を知るため、事前に模擬面接を実施しました。

    面接官役
    「それでは面接を始めます。」

    photo

    面接官役は番組スタッフが担当します。

    面接官役
    「法戸さんは、ご自身の強みはどんなところだと考えていますか。」

    法戸拓武さん
    「私自身の強みは共感力です。」

    面接官役
    「自分が共感できているかいないかを判断するのは難しいんじゃないかなと思うんですけども。」

    法戸拓武さん
    「そうですね。共感というのは簡単に見てすぐわかるというものではないと思うんですね。その人の行動を見たりとか、例えばしゃべり方を見たりとか、話す内容を考えたりとか…」

    難しい質問にも堂々と答え、不安を抱いているようには見えませんが…。

    鈴木ディレクター
    「法戸さん、模擬面接を受けてみていかがでしたか。」

    法戸拓武さん
    「手話通訳者がついての面接というのは1対1ではなく、第三者を介すことになります。自分の考えていることが違う形で相手に伝わってしまうのではないかと思います。それに加えて考えすぎてしまうというところが いろいろあったなと思いました。質問された内容を深読みしすぎてしまうということがあるんですね。」

    模擬面接を通じ見えてきたお悩みは2つ。1つ目は「手話が正しく伝わっているかどうか不安だ」というもの。そして2つ目は「面接官の質問を深読みしてしまう」ということでした。

    photo

    まずは1つ目のお悩みについて、アドバイザー陣が解決策を提案します。

    筑波技術大学 加藤伸子教授
    「もしも手話通訳を使って面接をされたいということであれば、前もって通訳の方と十分面談する時間をとっていただければなと思います。」

    筑波技術大学の加藤伸子教授です。大学で教べんをとるかたわら、多くの聞こえない学生の就職活動を支援しています。加藤教授は、手話で面接を行う場合、事前の打ち合わせが大切だと考えています。

    photo

    筑波技術大学 加藤伸子教授
    「自分の手話表現をどんな日本語にかえてほしいのか。あるいは自分の書いた内容を、通訳の方はどんな手話表現で表してくださるのか。お互いに確認いただけると、コミュニケーションがずいぶんスムーズになっていくかなと思います。あるいは『ちょっと どうかな?』と思ったら、手書きで書いていただいてですね、書いた物を指さしながら説明いただくと、内容が伝わりやすくなるのかなと思います。」

    photo

    法戸拓武さん
    「相手と私の方で手書きでやりとりをすることになると、時間がかかって面接の時間が延びて、迷惑がかかるのではないか。もしこの人が会社に入ったら、コミュニケーションに時間がかかると見られてしまう心配があります。」

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「そこは不安に思わなくて大丈夫です。あくまでも面談というのは法戸さんご自身を知るという場なので、時間をかけてでも、やはり理解をしていきたいと考えていますし、実際 面接を設定する時に、聴覚(障害)の方ですと、書いたりとかする時間も含めて、少し長めの設定ということもさせていただいています。当社でいくと、手話通訳を介さずに会社と応募者と直接のコミュニケーションというのをとらせていただいております。その理由としましては、入社をした後にですね、日常の業務の引き継ぎですとか、そういったところというのが口話であったり筆談であったり、チャットというふうなコミュニケーションの取り方になっているので、面接のときに入社後の環境と同じような形でお願いしているということがあります。」

    photo

    日本IBM人事 D&I担当 杉田緑さん
    「面接において真に必要な場面があれば、企業側が手話(通訳)を手配することもあり得ます。ただ入社後については、手話(通訳)を手配できるイベント(場面)というのは限られている企業が多いと思います。」

    photo

    杉田さんたちの会社では、聞こえない社員とのやりとりをチャットや音声認識アプリで行うことが多いといいます。

    また、ある調査によると多くの企業でコミュニケーションの手段として筆談を用いていることも分かりました。

    photo

    日本IBM人事 D&I担当 杉田緑さん
    「じゃあ(面接)当日、伝わりきらない部分をどうしていくか、そういったときに第三者を挟んだコミュニケーションを続けながらも、例えばチャットで同時に質問してみるというのも、一つ 手として ありだと思います。実際このコロナ禍で在宅勤務が進んでいく中で、チャットでいろんな質問をやり取りするケースはこれまで以上にすごく増えていて、それは逆にチャンスだと思うんですね。あらゆる企業で日常になってきているところも多いので、そこはぜひ前向きに捉えていただければと思います。」

    photo

    法戸拓武さん
    「自分の場合、筆談もできますし、手話通訳を付けていただいてのコミュニケーション どちらもできるので、その場面によって考えていきたいと思いました。」

    筑波技術大学 加藤伸子教授
    「ご本人が自分の話しやすいような環境で、十分に自分の思いを伝えられるということも、とても大切なことかと思います。じゃあ、どういう方法が良いのか相談をさせていただくとかですね。そこも少し丁寧にやり取りしていただけるといいのではないかなと思いました。」

    手話通訳を希望してもよいし、チャットを選択してもよい。大切なのは自分の考えを伝えやすい方法を学生自身が選ぶことだといいます。

    photo

    法戸さんのお悩み2つ目「面接官の質問を深読みしてしまう」というものです。

    鈴木ディレクター
    「僕も就活をしていた時、緊張して面接官の質問の意図をはき違えて答えてしまったことがありました。」

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「一つ私も、多くの聴覚障害の社員の方と接していて思うのが、聞こえる側が口話で話をしていることに対して、たくさんいろいろ類推してくれているなと思うことがあります。ですので、文字に書くですとか、パソコンで打つとか、なるべくテキストのやり取りをさせていただいているんですけれども…。」

    法戸拓武さん
    「すみません、ちょっと訂正していいですか?いま自分が話したことと少しズレが生じているように思います。先ほど話した『深読み』というのは、質問された言葉の真意というか、どういう意図で質問されているかを深読みしてしまうということです。」

    photo

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「例えばいま、このやり取りのように、違うんです 自分が言いたいことはこういうことなんですということを言うのは、コミュニケーションの一環だと思っています。」

    日本IBM人事 D&I担当 杉田緑さん
    「いま中山さんのお話にもあったように、聞き返すことは全く悪いことではありません。ご自身はこういうふうに理解したけれども、それでも正しいですかと。そういった認識合わせってすごく大事だと思います。実際に会社に入った後もですね、さまざまな専門ワードがいろいろあって、分からないことって最初多いんですね、障害の有無にかかわらず。そういったときに、ご自身はこういうふうに理解して、明日までにこういうことをしていくつもりだけれども、それで正しいですか?そういったコミュニケーションができると、やっぱりこの先の仕事っていうのが すごくしやすくなると思います。」

    面接の途中でも分からないことがあったら確認する。自分の考えを明確にするのもコミュニケーションの一つです。

    photo

    最後に、企業から学生へ エールをいただきました。

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「今年の新入社員の方で私の後輩として働いている方が、まさにろうの方なんですけれども、当社単体では75人ぐらい、グループ全体では200人くらい聴覚障害の方が働いていらっしゃるんですけれども、会社はですね『障害のあるあなた』というのを見ているわけではなくて、これまで障害とともに生きてきた『今のあなた』というのを見ているわけなので、『今のあなた』というのを見せていっていただければなと思います。」

    photo

    日本IBM人事 D&I担当 杉田緑さん
    「弊社の中で聴覚障害のある社員の中では、専門性を認められて海外のお客様を支援するために南アフリカまで数か月間出張されていた方もいます。インターン生などを見ていても、最初は『私はこれができないんです』というところから始まって、その特性、聞こえないという特性がある中で、何が強みでどんなことがしたいのか、徐々に自信を持って伝えられるようになっています。ぜひ皆さんも、やりたいことをやってみる。そんな前向きな姿勢を持って取り組んでいただきたいと思います。」

    photo

    法戸拓武さん
    「きょう学んだことや知ったこと、例えばコミュニケーションの取り方を生かして、ろう者である自分をもっと強く出して企業の面接を頑張りたいと思います。ありがとうございました。」

    鈴木ディレクター
    「皆さん、ありがとうございました。」

    photo

    新着ダイジェスト