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ろうを生きる 難聴を生きる「就活応援企画・前編~どう書く?自己PR~」※字幕

    いよいよ本格化する就活。企業への採用エントリーや面接が始まろうとする中、聞こえない学生たちは今、大きな不安を抱えていると言います。「聞こえないことがマイナスになるのでは?」「障害をどこまでオープンにする?」など…。前編では、企業に自分をどうアピールすればよいのか、“自己PR”に悩む難聴の学生に、企業の人事や就活を経験した先輩がアドバイスします。ポイントをおさえると、学生の自己PRにも変化が?!

    出演者ほか

    【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    就活応援企画・前編~どう書く?自己PR~

    まもなく就職活動が本格化するシーズンです。

    「NHKディレクター1年目の鈴木マクシミリアン貴大(きだい)です。」

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    おととしの今ごろ、私は就職活動の真っただ中。不安でいっぱいだった記憶が今も鮮明に残っています。

    今回、私は初めて聴覚障害のある学生たちを取材。すると、聞こえない学生ならではの不安があることがわかってきました。

    “聞こえないことはマイナスに見える?”

    “面接で手話通訳を希望すると 人事はどう思うの?”

    そこで今回、聞こえない学生の就活応援企画をたてました。
    学生と企業の人事やアドバイザーたちをつなぎ、採用にまつわる本音をぶっちゃけトーク

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    学生のお悩み
    「そもそも“聞こえない”ことが就活において不利になるのでは?」

    人事の回答
    「会社は“障害のあるあなた”を見ているのではなくて…」

    聞こえない学生の就活に必要な対策とヒントとは?
    2週にわたって探ります。


    今回、NHKに集まった参加者とリモートの参加者をオンラインでつなぎ 収録を行いました。

    参加者は、就活へ不安を抱える難聴の学生とろうの学生の2人。そのお悩みに答えるのは企業の人事や聞こえない先輩など4人のアドバイザーです。

    鈴木ディレクター
    「まずは河野さん」

    河野葉月さん
    「はい、私は自己PRについて悩んでいます。自分の強みについて聞かれたときに、聞こえないことに触れてアピールしていいのか。」

    大学3年生の河野葉月さんです。ふだんは補聴器をつけて口話で会話しています。今悩んでいるのは、企業に提出するエントリーシート。自分のことをアピールする時に難聴について どこまでオープンにするか迷っているといいます。

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    鈴木ディレクター
    「いま迷っている自己PRを、よかったら教えていただけますか?」

    河野葉月さん
    「はい。私の強みは、相手に寄り添う気持ちと積極性と考えています。また、他の大学の交流会であったり 語学留学・ボランティアなど、新しい環境に1人で積極的に参加し、積極的に人に話しかけていくことを心がけて、多様な価値観が身についたと考えています。」

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    鈴木ディレクター
    「ここでは聴覚障害については触れていないということなんですね。」

    河野葉月さん
    「はい。そもそも『聞こえない』ことが就活において不利になるんじゃないかというふうに考えてしまいます。」

    「聞こえないことを書くと選考で不利になるのでは?」というお悩み。果たして企業の回答は?

    日本IBM人事 D&I担当 杉田緑さん
    「私としてはエントリーシートの段階から、自己開示をしていったほうがいいと考えています。」

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    日本IBMの人事 杉田緑さんです。聴覚障害について書いてくれたほうが好印象だといいます。

    日本IBM人事 杉田緑さん
    「やはり企業と、受ける学生さんの立場を近づけていくファーストステップになりますので、そのうちから自身をさらして、こういった特性がある中で『私はこういうことができるんです』『こういうことをしたいんです』と、そういう思いを伝えていただければ必ず伝わると思いますので、聞こえないことを伝えてもマイナス評価にはならず、むしろ『伝えてくれてありがとう』というスタンスの企業が多いかと思います。」

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「当社も聞こえないということは、特にマイナス評価にはしていないです。」

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    NECで人事を担当する中山洋子さん。聴覚障害のある社員は、グループ会社を含めて200人働いています。障害のことを事前に伝えておくことは、入社後のためにも大切だといいます。

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「過去にも聴覚に障害のある方が応募してこられたことはたくさんあるんですけれども、その方たちはエントリーシートの段階から(聴覚障害があることを)書かれています。というのも、どのぐらい聞こえるのかなとか、会社はどういう配慮をしていけばいいのかなとか、そういうことを会社としても考えていくことができるので。ただ河野さんのPRの部分が全体的に盛り込みすぎていて、ふわっとした印象になっているのかなと感じました。」

    河野さんの自己PRには たくさんの強みが書かれていますが、エピソードが弱いといいます。

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「例えば1つに絞って具体的に深堀りしていく。そうすると最初の自分の強みである『寄り添う気持ち』ですとか、積極的なところが具体的に見えて、それが生きてくるんじゃないかなと思いました。」

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    河野葉月さん
    「具体的なアドバイスをいただいて、とてもうれしいです。『1つに絞る』というところなんですけれども、『障害』に絡めて強みを言ったほうが(企業は)障害のことも理解できるという感じですか。」

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「『必ず障害のことを書け』というよりも、河野さんが一番力を入れてきたことを書いていただくのが一番自分らしい面接ができるんじゃないかなと思います。」

    牧野友香子さん
    「河野さんにとって一番の強みが聴覚障害に関連しているものであれば、それをいっぱい書いてもいいんですけど。」

    難聴の牧野友香子さん。3年前まで大手企業で働く会社員でした。難聴ゆえに経験してきたエピソードは、企業への大きなアピールポイントになるといいます。

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    牧野友香子さん
    「『成功した 成功した うまくいった』ということばかりよりかは、逆に(聴覚障害にかかわる)失敗からどうリカバリーしたかとか、どんなふうに工夫したかということの方が、私は強みになるんじゃないかと思ったので、なるべく書きましたね。例えば小学校の時に、4人以上の女子の輪に入れなかったと。(友達の)言っていることが分からなかったけど、その時はとりあえず周りに合わせて笑うしかなかったけど、今だったら、例えばタイミングを見て(輪に)入るとか、『こういう場面は聞きにくいんだよね』と伝えるとか、今だったらできることってあるじゃないですか。企業で働く上で、実際うまくいかないこともいっぱいあると思うけど、『その場に応じて変えることができます』というのが『私の強み』みたいな感じで書きました。」

    鈴木ディレクター
    「聴覚障害から、ご自身のつらい経験や乗り越えてきた経験を書いて、それをプラス面として『自分はどうしてきたか』を伝えるのが牧野さんは良いのではないかと。」

    河野葉月さん
    「1つ質問いいですか?牧野さんに質問なんですけど、自分の障害を客観視することって すごく難しいなと思っていて。それって具体的にどうやったというのはありますか?」

    牧野友香子さん
    「河野さんにとっては当たり前のことをちょっと書き出してみて、聞こえる人や聞こえる友人に聞いてみてもいいかもしれないなと思いました。『どういうところがすごいと思う?』とか、ぶっちゃけて聞いていいんじゃないかなって思いましたね。」

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    牧野友香子さん
    「例えば『ノートテイクを入れて授業を分かるようにした』とか『手話を覚えた』とか『友達に障害のことを伝えた』とか、何かしら工夫をして生活をしやすくしてると思うんですよね。聞こえる学生や一般の学生が当たり前にやっていることを(工夫していることは)河野さんの強みになる部分だと思うんですよ。」

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「恐らく学生さんは『強み』って聞くと、特別なすごいものってイメージしてしまうと思うんですね。でも『強み』って本当に今までの経験の中でコツコツ真面目にやってきたことも強みにもなりますし、あんまり『派手なものがない』と考えなくてよいと思います。」

    就活をしていると何かと考えてしまう「強み」。
    実は何気ない日常の中から見つかるかもしれません。

    日本IBM人事 杉田緑さん
    「1つおすすめなのは、エントリーシートを出す前に会社のことをより知っておく。実は今の時代、同じ会社といってもいろんな仕事があったりして、その職種ごとに必要な強みって異なることもあるんですね。例えばこの会社では『対人力』が必要そう、この営業職では『コミュニケーション』が必要ということがわかれば、もう少し強みが具体的に書きものとして表れてくると思います。」

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    鈴木ディレクター
    「法戸さんが質問があるそうです。」

    法戸拓武さん
    「強みとして『今までの経験』を持ってきて話してくださいということでした。私の場合、ろう学校で起きたことになると思います。『聴者の中でその強みをどのように生かせるのか?』という質問があるのではないかと不安があるんです。」

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    大学3年生の法戸拓武さんです。高校までろう学校に通い、現在は学外で ろうの仲間と一緒にイベントを企画する活動を行っています。

    ろう者の世界で培ってきた経験が、企業へのアピールポイントになるかどうかを心配していました。

    NEC 人材組織開発部 中山洋子さん
    「聞こえても聞こえなくても(ろう学校の)同級生の中で一緒にチームワークを作りながら目的に向かって成し遂げていくというのは、聞こえていても聞こえていなくても経験をしていることだと思うんです。その中で自分が仲間とどういうふうに接してきたのか、うまくいかない時にどういうふうに働きかけをしてきたのか、そこをどう乗り越えてきたのかという経験は、社会に出てからも同じことだと思っています。ですので不安はあるとは思うんですけれども、決して全くの別ものではないと思っていいと思います。」

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    法戸拓武さん
    「わかりました。ありがとうございます。」

    鈴木ディレクター
    「ここまでお話を伺いましたが…」

    河野葉月さん
    「就活のサイトとか友人の就活の話を聞いてみても、皆書いていることが健聴だからできることがすごく多くて、それを真似して(自己PRを)書こうってなると(内容が)聴覚障害から離れてしまったり、聴覚障害のことを強みにして書くというのは、今までの自分からは想像できないことだったなと考えています。」


    収録から2週間後…

    河野さんの自己PRに変化が表れていました。

    「私は重度の聴覚障害を持つ。短期留学に行った際は、ホストファミリーの話していることが聞こえず、うまく意思疎通を図ることができなかった。そこで、音声を文字に変換するアプリを使用して相手の意図を読み取り(中略)
    また、学校内の現地の生徒に自分から英語を教えて欲しいと頼み、自分の語学力も向上も目指したことで、最終的にはホストファミリーと一緒に出かけられるようになった。こうして諦めずに、多方面からのアプローチで柔軟に対応することが私の強みであると考える。」

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    河野葉月さん
    「自分が納得がいく就職活動ができるように頑張りたいと思います!」

    就活生の皆さん 応援しています!

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    次回はいよいよ面接編です!
    面接に不安があるという ろう者の法戸さん。番組スタッフが面接官役になり、模擬面接を実施。その中で浮かんできた疑問や不安に答えます。
    聞こえない学生 必見です!

    新着ダイジェスト