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ろうを生きる 難聴を生きる▽聞こえないセンパイの課外授業 ろうの弁護士※字幕

    シリーズ「聞こえないセンパイの課外授業」の第3弾です!聞こえない学生の多くが抱える“進学や就職に対する不安や悩み”を、さまざまな分野で活躍するセンパイが解決します。今回は、旧優生保護法の被害弁護団に参加する、ろうの弁護士・松田崚さんが母校のろう学校で授業を開催します。生徒がコンビニでの買い物にチャレンジし「伝える力」を学びます。松田さんの白熱した授業は、今回が前編、2週連続で放送します。

    出演者ほか

    【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    聞こえないセンパイの課外授業 ろうの弁護士

    山形聾(ろう)学校を訪れる一人の男性。

    「お久しぶりです。」

    「大人になったね。」

    この学校出身のろう者、松田崚(まつだ・りょう)さんです。

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    松田さんは29才。日本に10人程しかいない、聞こえない弁護士の一人です。社会的に弱い立場にある人のために、力を注いでいます。旧優生保護法の被害弁護団の一員です。

    シリーズ 聞こえないセンパイの課外授業 第3弾!
    進路に不安を抱える後輩たちに、社会で活躍するためのスキルを伝授します。

    ろう学校の生徒
    「本当は、保育士になる夢でしたが、(大学は)音楽の関係で大変だったので諦めてしまいました。」

    「(卒業後はスーパーで)マスクをつけて働くので、コミュニケーションをとるのが心配です。」

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    不安を解消するポイントは「伝える力」。2週連続でお送りします。

    今回、授業に参加するのは13人。山形聾学校の中等部と高等部の生徒、さらに専攻科や卒業生も集まりました。

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    いよいよ、聞こえない弁護士、松田さんの授業が始まります。

    弁護士(ろう者) 松田崚さん
    「夢をかなえるために、途中で壁にぶつかることがあると思いますが、すぐに諦めず、壁を乗り越え、壊すための方法を考え、自分から行動してほしいというメッセージを伝えたいと思っています。」

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    松田崚さん
    「皆さん、はじめまして。私の名前は松田崚といいます。今日は夢をかなえる方法をいろいろお話ししたいと思っています。」

    “失敗”が伝える力を磨く!

    松田崚さん
    「聞こえる人とコミュニケーションが怖いという気持ちはありますか?苦手な人はいますか?」

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    まずは聞こえる人とのコミュニケーション力を試す授業。課題はコンビニでの注文です。
    挑戦するのは、難聴の平くん。一人暮らしに憧れる中学生です。

    松田崚さん
    「買ってきてほしいのはコーヒーとカフェラテです。1つずつでかまわないので、買ってきてもらえますか?」

    実は平くん、一人で買い物をした経験がほとんどありません。

    平くん
    「コーヒーください。」

    店員
    「コーヒー?はい。」

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    注文すると、店員から次々と質問が飛びます。

    店員
    「どうぞ。お砂糖、ミルクはご入り用ですか?」

    平くん
    「はい。ください。」

    店員
    「いくつですか?」

    平くん
    「2個。2。」

    店員
    「お砂糖2個ですね?
    ありがとうございました。」

    あれ?注文したのはコーヒーのみ。カフェラテがありません。質問に答えるのに精一杯で忘れてしまったようです。実はろう学校時代、松田さんにも同じような失敗があったといいます。

    松田崚さん
    「町のコンビニで、私が聞こえないことを知らない店員さんに声で話しかけられ、やりとりができなかったんです。そのときに、自分が聴覚障害を持っているということを認識させられてショックを受けました。その出来事は、今でも忘れられません。皆さんは、買い物で失敗をしたことはありますか?」

    鹿野さん
    「私は、前にお店に行ったときに(自分で使う)文房具を買ったときに、間違ってプレゼント用にしてしまいました。(店員が)少し早口で言ってきて、聞き取れなくて、そのままうなずいてしまい。」

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    松田崚さん
    「ありますよね。あるあるです!
    大切な情報を言われていることに気付かないまま、適当に返事をしてしまう。もし分からないままでいたら、本当はもらえるかもしれない物がもらえないという不利益を受けているかもしれません。失敗したからコミュニケーションを取ることを避けるのではなく、どうしたらコミュニケーションが取れるようになるのかを考えてほしい。」

    平くん、もう一度挑戦しまう。

    松田崚さん
    「焼き鳥を2本。それから、唐揚げ。」

    今度は事前にメモを取っています。失敗を生かせるのか?

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    平くん
    「焼き鳥2本をください。」

    店員
    「焼き鳥。袋、ご利用ですか?」

    平くん
    「え?もう1回言ってください。」

    店員
    「袋、ご利用ですか?」

    平くん
    「もう1回言ってください。」

    マスクで口の動きが見えず、会話が理解できません。

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    平くん
    「書いてください。言いたいことが分からないので、書いてください。」

    「筆談」という答えを導き出しました。

    平くん
    「あと唐揚げください。」

    店員
    「唐揚げ。はい。」

    松田崚さん
    「マスクしていましたね。どうでしたか?」

    平くん
    「マスクをしていたので聞こえにくかったです。」

    松田崚さん
    「次からは(可能であれば)『マスクを取ってください』って言ってみると、店員さんの言っていることがより分かるようになるかもしれませんね。」

    平くん
    「分かりました。」

    松田崚さん
    「同じような失敗は、みんなも、僕もしたことがあります。でも、そういう失敗から、次はどうしたらいいのか学んだ。うまくいく方法を見つけることができたんだよね。それが成功につながるんです。
    お疲れ様でした!」

    松田さんは現在、様々なコミュニケーション方法を使い分けて仕事をしています。簡単なやりとりはボードによる「筆談」。法律相談や裁判のときには「手話通訳」を依頼します。経験を積み、どんな方法でも相手に伝えられる力を身に付けることが、社会で活躍する鍵になるのです。

    続いては、夢を実現するための3つのキーワード。「人」「場」「情報」

    松田崚さん
    「皆さんが気になっていることを聞いてみたいです。どんな夢がありますか?」

    佐藤さん
    「ダンスはまだまだ勉強中ですが、最初の仕事(スーパーに勤務する)に集中したいと思います。」

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    原田くん
    「私は小学生の時に、バス通学をしていました。その時のバス運転士さんが、かっこよかったので、バス運転士になりたいと思いました。」

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    松田崚さん
    「もし、皆さんも夢を持っているなら、夢をかなえるために、人と会って相談するとか、一緒に夢を目指す仲間やフォローしてくれる仲間を作る。」

    松田さんが弁護士を目指すきっかけは「人」との出会いにありました。ろうの弁護士、田門浩(たもん・ひろし)さん。大学時代、たまたま講師として訪れた田門さんの話に松田さんは衝撃を受けます。聞こえなくても弁護士として活躍できる!田門さんの職場を何度も見学に行きました。

    松田崚さん
    「法廷で実際に田門先生が手話通訳を介して、捕まった人を弁護している様子を見て、ろう者でも困っている人や悩んでいる人をサポートできるのだ、と分かって感動したんです。」

    その後、10以上の大学院に進学の相談をしましたが、授業のサポートを約束する学校が見つかりません。そんな時、先輩の経験から、手紙という方法があるという「情報」を得て、実行します。

    松田崚さん
    「前もって行きたい大学院に問い合わせること。『私は聞こえないけど、弁護士になりたい。入学しても良いでしょうか?』という内容の文書を作って送りました。」

    「自分の障害」や「授業で必要なサポート」について分かりやすく説明。さらに、弁護士を目指す強い思いも書きました。「社会的弱者の味方としての弁護士」になりたい。

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    結果、無事大学院に入学。しかし、そこでの勉強の難しさや量は想像を超えるものでした。そんな時、支えになった「場」があります。毎月、足を運んだのが、ろう学生懇談会。様々な分野で夢を追う学生が集まる場で、互いの悩みを話し励まし合いました。

    松田崚さん
    「ろう学校の生徒も入れるので、他の地域の友達がほしいとか、悩みを相談したいと思ったら、懇談会に入ってみるといいと思います。」

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    そして2年前、見事、司法試験に合格。人と出会い、情報を集め、場を支えにして、夢を実現したのです。

    松田崚さん
    「情報が自然に入って来ない、分からない状態なので、自分から情報を取りにいく。求めることも大事だけど、まずは自分から動かないといけません。」

    松田さんと同じように動き始めている生徒がいました。

    原田くん
    「2年前にテレビで、日本で初めてバスの運転士になった、ろうの人がいるっていうのを聞きました。」

    バスの運転士として活躍している、ろう者、松山建也(たくや)さんです。

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    3年前、東京と羽田空港を結ぶ、路線バスの運転士になりました。聞こえる乗務員と一緒に接客もしています。

    原田くん
    「SNS、フェイスブックで連絡して、相談したことがあります。」

    松田崚さん
    「その先輩もみんなと同じように、聞こえないことで壁にぶつかってきた経験があります。それをどうやって乗り越えてきたのか、その先輩は知っています。だから一人で悩むよりも、先輩に相談し、アドバイスをもらってください。」

    原田くん
    「いつかは(松山さんのバスに)実際に乗ってみたいと思っています。」

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    次回は後編。ある事件をもとに、生徒たちが模擬裁判に挑戦します。お楽しみに!

    新着ダイジェスト