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ろうを生きる 難聴を生きる「新型コロナウイルス~ろう者・難聴者は今~」

    新型コロナウイルスにより、ろう・難聴者の暮らしにも、大きな影響が出ています。ろう学校の休校により、子ども達(たち)には手話で学べる場がなく、ネット教材は、字幕も手話もないものがほとんど。また、マスクをしている人が増えたため、番組には「口の動きが読み取れない、でも外してとは言いにくい」と悩む難聴者の声が多く届きました。ろう・難聴者が置かれている現状を伝え、今後どのような対応が必要かを考えます。

    出演者ほか

    【出演】日本ろう者劇団代表…江副悟史,【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    新型コロナウイルス~ろう者・難聴者は今~

    感染拡大が続く新型コロナウイルス。ろう者・難聴者の暮らしにも大きな影響を与えています。

    (スタジオ)

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    日本ろう者劇団 代表 江副悟史
    「『ろうを生きる難聴を生きる』、司会の江副悟史です。私自身ろう者で、実感していることですが、新型コロナウイルスの感染が拡大する今、ろう者・難聴者には、正確な情報が入りにくかったり、コミュニケーションの問題が生じたり、様々な課題が出てきています。
    3月には、多くの小中学校が休校になりました。ろう学校も例外ではありません。そこで、子どもたちの居場所に問題が生じてきています。ろうや難聴の子どもたちに、放課後や休日、場所を提供し、さまざまな活動を行う施設を取材しました。」

    (VTR)

    子ども
    「おはようございます。」

    三重県・津市にある、聴覚・ろう重複センター「ひまわり」です。

    ろう学校や地域の難聴学級などに通う子どもたちが利用しています。自閉症や知的障害を伴う子もいます。今月に入り、保護者からの要望が殺到したことから、毎朝8時30分から利用できるようにしました。ふだんは、定員10人を4人で見ることが多いのですが、この日は18人を6人で対応。スタッフを増員しました。連日、定員超過が続いています。

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    ひまわり管理者 金谷まどかさん
    「毎日バタバタしていて、そのつど起きる問題をそのつど考えて対応しているので、バタバタしすぎて何に困っているかまとめきれていない状態。」

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    ろうや難聴の子どもたちを専門に受け入れる施設はここだけ。子どもたちは県内全域からやってきています。大切な居場所です。

    男の子
    「ひまわり楽しい!ちょ~楽しい!」

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    保護者
    「ここだと友達がいる。気持ちを分かち合える子がいるから、安心して子どもたちが過ごすことができる。それでこちらを利用していますね。」

    定員超過の現状でも、聞こえない子を他の施設に預けるには大きなハードルがあると、保護者はいいます。

    保護者
    「どこも断られて。『預かるけどもスタッフは手話は使えないので』と言われて。コミュニケーション取れないところに預けると精神面でダメかな。」

    photo

    こうした状況のなか、施設は大きな課題に直面しています。子どもたちのコミュニケーション方法は、手話や口話などさまざま。さらにきめ細かなケアが必要な重複障害の子どももおり、スタッフが橋渡し役を担っています。

    「貸して。」

    「嫌だ。」

    子どもたち同士にトラブルが起きたときなどの素早い対応が難しくなってきているのです。

    ひまわり管理者 金谷まどかさん
    「子ども同士で片方の子が何かを言ったとしても、もう1人の子は聞こえてなかったりとか、まったく聞こえなくて手話で会話をしているお子さんもいますし。そういうときはスタッフが、そのつど仲介に入って、『この子はこうやって言いたいから、こうやってやりたいんだよ』とか言葉を代弁してあげたり、つないであげる役割は果たすようにはしているんですけど、今のところスタッフ数も足りなていなくて、なかなか細かく対応ができていない状態があります。」

    (スタジオ)

    江副悟史
    「もともと、ろうや難聴の子どもたちを受け入れる施設の数が少ないという課題が、ここにきて浮き彫りになっています。渡邊健二さんに伺います。渡邊さん、よろしくお願いします。」

    全国聴覚・ろう重複児施設協議会 渡邊健二会長
    「よろしくお願いします。」

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    江副悟史
    「子どもたちに様々な影響が出ているようですね。」

    渡邊健二会長
    「ろうの子どもたちがたくさん来ることによって、利用者が超過する施設もある一方で、利用者が減ってしまった施設もあります。通常の施設ですと、学校が終わった後にバスで送迎をするんですけれども、家まで迎えに行く、送るということもあるんですね。しかし学校が休校になったことで、遠方の家までバスで迎えに行くことができずに、施設に来れない子どもたちも多く、利用者が減るために100万円以上の減収が予想されるところもあります。コロナウイルスは目に見えないので、聞こえない子供たちにはそれを伝えることがなかなか難しく、ストレスが溜まっている子もみられます。」

    江副悟史
    「こうした厳しい現状の中、社会に求めたいことはなんでしょうか。」

    渡邊健二会長
    「聴者(聞こえる人)が通う施設というのはたくさんありますが、ろう者がコミュニケーションをとれる居場所が少ないんですね。手話ができる環境を大切にしたいと考えています。」

    江副悟史
    「ありがとうございます。子どもたちの問題は、居場所に加え、学びにもあります。特に手話で学ぶ、ろうの子どもたちは休校により大きな課題が出てきました。そこで、都内のろう学校では、ある取り組みをしています。」

    (VTR)

    0歳から中学生まで、およそ90人のろうの子どもが手話で学ぶ「明晴学園」です。この日は、休校中の子どもたちの家庭学習をどうするか、職員会議が開かれました。

    幼稚部 主任
    「3月6日までの1週間は課題の絵本の貸し出しは終わっているので大丈夫です。ただ、その間の手話の環境こそ大切なんです。本を読むだけではなく、親が聞こえる家庭もたくさんあるので、手話で話す環境をどうするか…。」

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    ろうの子どもたちにとって、「学校」は手話で学び、互いにコミュニケーションをとれる貴重な場です。

    小学部 主任
    「小学部の場合は見るだけじゃなくて、やっぱり会話をしなきゃいけないんですよね。」

    中学部 主任
    「そこが必要ですよね。やりとりがあるから話が深まるんですよね。」

    明晴学園 校長 榧 陽子さん
    「学校以外でも、安心して手話で通える場があれば良いと思っています。家庭学習でも手話で学べる教材が少ないので困っています。今回の休校だけでなく、夏休みなどの長期休暇の間に手話の環境が少なくなってしまうのは、以前からの課題になっています。」

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    特に言葉を育む時期には、手話での学びは重要です。そこで先生たちは、ある試みを始めることにしました。

    幼稚部 先生
    「丸く切るとツバキの花。こう切ると桜の花になる。」

    幼稚部 主任
    「いろいろな形で試してみようねっていうことね。」

    この日は、幼稚部の子どもに向け、折り紙での花の作り方を動画にし、配信します。

    幼稚部 先生
    「折り目の開いているほうを切ります。閉じているほうではありません。こっちを切りますよ、いいですか?」

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    実は、聞こえない子どもの9割は、聞こえる親から生まれると言われます。子どもたちが孤立感を抱えずに、手話に触れ、手話を使える環境を守ることが大切だといいます。

    幼稚部 主任
    「手話の力(を育むに)は、子どもたちが言われたことを理解することが大切です。だから(自ら動いてもらうような)動画を作っています。」

    (スタジオ)

    江副悟史
    「手話の環境というのは大切ですね。私の友だちの、お父さんたち、お母さんたちは、まだ手話が分からない聞こえる人が多いです。そんなとき、コミュニケーションの方法は非常に困ります。そんなとき、公園に集まって会話をすることで、手話の環境を提供するという助け合いをしています。明晴学園では、学校で制作した動画の一部を一般公開し始めたそうです。詳しくは学校のHPをご覧ください。
    今は、インターネットを使った教材の配信なども多くありますが、手話や字幕の付いていないものも多いですよね。NHKのウェブサイト、NHK for School では、自宅学習用にEテレで放送している関連動画を公開しています。そこでは、多くの動画を字幕付きで見ることができます。また、手話をつけた動画も公開しています。NHK for School からご覧ください。詳しくは、「ろうを生きる難聴を生きる」のHPをご覧ください。」

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    江副悟史
    「視聴者のみなさんからも、お便りが届いています。」

    神奈川県 50代 女性 わきにゃんさん
    “帰国者・接触者相談センターの連絡先が電話で、ファックス番号を調べるのに3日もかかってしまった。”

    江副悟史
    「帰国者・接触者相談センターは、各都道府県の保健所が窓口になっています。コロナウイルスに関する一般の相談は、厚生労働省がファックスとメールで受け付けています。メールやファックス受付を設けていないところは、ぜひ設置して、案内を明記して欲しいです。」

    江副悟史
    「続いて、もっとも多かったのがマスクに関する困りごとです。」

    愛知県 女性 優海さん
    “口を見せてもらうことが難しくなって、会話ができなくなりました。筆談や家族に通訳をお願いすることもありますが、どうしても心苦しいので、家に引きこもりがちになってしまいます。”

    江副悟史
    「難聴者のなかには、口の動きを読み取って会話する人も多くいます。今、どのような対応が望まれるのでしょうか。」

    (VTR)

    全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 理事長 新谷友良さん
    「みんなが大変な状況なので、どうしても(非常時は)数の多い人たちから優先的に対応していくというのは避けられないことかもわかりません。マスクがあるということがですね、非常に大きなバリアだということを社会の人たちにもまず知ってほしい。『私、聞こえないんですけども』とか『ご説明いただいたこと、よく分からないんですよ』といったときには、ぜひ筆談対応をやっていただきたいと。」

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    全難聴では、耳が聞こえない、聞こえにくいことを表すと同時に、理解や配慮を表す「耳マーク」の普及活動を行っています。このマークを利用した視聴者からは「レジで話しかけられた時に耳マークを見せると、ジェスチャーに切り替えてくれることが増えました」という声が寄せられています。

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    (スタジオ)

    江副悟史
    「ろう者も、マスクには悩まされています。テレビ放送に字幕が付いていなかったり、画面に映る人がマスクをしていたりすると、正確な情報が入ってこないという悩みは、私の周りでもよく聞きます。そこで、こんな取り組みもありました。」

    (VTR)

    マスクの悩みを知った、高知県の手話通訳が記者会見などを自主的に手話通訳し、SNSで共有するなど、工夫しているとのことです。

    (スタジオ)

    江副悟史
    「NHKでは、新型コロナウイルスからの感染を防ぐための正確な情報を動画公開していますが、そこに字幕と手話を付けた動画を、近日HPで公開する予定です。ぜひご覧ください。」

    新着ダイジェスト