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ろうを生きる 難聴を生きる「夢はプロのバレリーナ 2」※字幕スーパー

    生まれたときから両耳が聞こえず、人工内耳を着けている菊池海麗さん。クラシックバレエを習っている彼女は、聞こえる人・聴者とコンクールで競い、部門優勝した経験を持っています。常にハードルとなるのが、音楽と踊りのテンポがずれてしまうこと。海麗さんは去年秋、初めて、生演奏に合わせて踊ることになりました。演奏者と呼吸を合わせてうまく踊れるのか。本番に臨む海麗さんの姿を追います。

    出演者ほか

    【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    夢はプロのバレリーナ 2

    バレエ教室で練習に励む子どもたち。その中で、音楽に合わせて軽やかに踊る聴覚障害のある小学生がいます。菊池海麗(みらい)さん。両耳に人工内耳を着けています。メロディーを正確に把握し踊ることには大きなハンディがあります。

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    そのため、繰り返し曲を聴いて、体に覚え込ませるなど、努力を重ねてきました。数々のコンクールで、聞こえる人、聴者と競いあい、上位に入賞しています。
    いま海麗さんは、新たな挑戦をしようとしています。あるイベントで、初めて生演奏をバックに踊ることになったのです。演奏する人や指導者によってテンポが微妙に変わる、難易度の高いチャレンジです。

    菊池海麗さん
    「音楽に合わせて、お客さんに楽しんで見てもらって、自分も楽しめるように踊りたいです。」

    果たして、うまく踊り切ることはできるのか?
    プロのバレリーナになりたいという夢に向かって挑む、海麗さんの姿を追いました。

    岩手県にある、大学病院。耳鼻科の外来に海麗さんの姿がありました。

    菊池海麗さん
    「ボリュームを…」

    これから「マッピング」と呼ばれる人工内耳の調整を行います。

    言語聴覚士
    「じゃあ、これ、やります。」

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    マイクで拾った音を電気信号に変えて、脳に伝える人工内耳。3か月に一度、音の高さ、大きさなどを周波数帯ごとに細かく調整します。

    言語聴覚士
    「はい、これはボリューム1個上げてる。7、どう?」

    菊池海麗さん
    「聞こえやすいです。」

    海麗さんは3歳のときに右耳を、6歳の時に左耳を手術し、人工内耳を使うようになりました。ある日、母親に連れられて見学したバレエ教室で、音楽に合わせて優雅に踊る姿に憧れ、バレエを習い始めます。

    菊池海麗さん
    「バレエは自分の思いを伝える踊りなので、そこがすごく楽しいです。」

    海麗さんは現在週2回レッスンを受けています。技術的には上達してきましたが、ハードルもあります。

    武田由梨さん
    「遅い!」

    聞こえる生徒に比べると、どうしても踊りがワンテンポずれてしまうのです。

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    海麗さんを指導してきた、武田由梨さん。さらにバレリーナとして成長するために必要なことがあるといいます。

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    武田由梨さん
    「まだ、ちょっと音楽を待ってるというか、音楽と、ちょっとやっぱり遠い。そこを、難しいことですけど、どんどんどんどん、ちゃんと距離を縮めていくのに、血と汗と涙が必要ですよね。」

    海麗さんが音楽を自分のなかに取り込むため、していることがあります。スピーカーに手を当てて振動を感じることで、メロディーとリズムを覚えるのです。

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    耳の聞こえる祖母の春枝さんが練習をサポートします。

    祖母 春枝さん
    「トントンじゃなくて、バンバンとやって。こうじゃなくて。」

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    耳が聞こえない母の樹里さん。バレエの経験者です。

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    音楽に合わせて踊ることの難しさをよく知っています。

    母 樹里さん
    「聞こえないことで、やっぱりいろいろな工夫が必要だし、海麗がどうやったら踊れるようになるかというのを自分で考える。その工夫というのが、やっぱり大切だから。」

    4月、そんな海麗さんのもとに、ある依頼が舞い込みました。東京のイベントで、金管楽器の楽団の演奏をバックに踊ってほしいというのです。これまで海麗さんは、生演奏で踊ったことがありません。
    この日、学校から帰った海麗さんは、近くにある高校を訪れました。吹奏楽部の練習を見学させてもらい、人工内耳での聞こえの具合を確認しようというのです。

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    「聞こえた?」

    菊池海麗さん
    「聞こえた。」

    「うるさくなかった?」

    さらに海麗さんは、あることに注目していました。指揮者のタクトです。楽団全体をまとめ、テンポを決めているため、踊りの重要なガイドになります。

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    午後8時、海麗さんの1日はまだ終わりません。向かったのはバレエ教室。

    菊池海麗さん
    「おはようございます。よろしくお願いします。」

    当日の生演奏に対応できるよう、振付を徹底的に反復し、修正点を確認します。いったんテンポがゆるやかになって、再び戻る部分で、ずれが生まれていました。

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    菊池海麗さん
    「ここもちょっと遅れてる。」

    「うん、ちょっとね。よく知ってるじゃん。」

    菊池海麗さん
    「よく知ってます。」

    何度も何度も繰り返します。

    武田由梨さん
    「東京へ行ったら指揮者の人とやりとりしたほうがいいかもしれない。ものすごく、ずれていたら。もうちょっと分かりやすい指揮に変えてくれとか。」

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    これまでは、録音されたメロディーとリズムを体に覚え込ませることで正確な踊りを披露してきた海麗さん。不安を抱きつつも、新たな挑戦にひたむきに取り組んでいました。

    10月26日、いよいよ本番です。

    「みなさんご紹介します。バレエの菊池海麗さんです。はい、お願いします。」

    この日、海麗さんは演奏する楽団のメンバーと初めて顔を合わせました。

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    リハーサル開始。順調に踊りだしますが…、苦手なパートで、少し踊りがずれてしまいます。

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    「テンポは、どうですか。もっと早いほうがいい?」

    「もう少し早いほうがいい。」

    調整を重ね、指揮者、楽団と一緒に踊りを作り上げていきます。

    指揮者 飯吉高さん
    「あそこのちょっと遅くなって、1回ちょっと止まりそうになって、次に行くところも、さっきの感じで大丈夫?」

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    今回のイベントは、東京にある社会福祉法人が定期的に開催しているものです。「五感で楽しむ音楽会」と題して、障害のある人も、ない人も共に楽しめるイベントを目指しています。
    まもなく、海麗さんの出番です。

    司会
    「踊っていただく曲はタリスマンです。それではお願いします。」

    練習を繰り返し、修正を重ねてきたパート。

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    見事、踊り切りました。

    「よかったね。」

    踊りを見ていた聞こえない子どもたちが、海麗さんのもとにやってきます。

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    「これからも頑張ってください。」

    「バレエで一番大変なことは何?」

    菊池海麗さん
    「リズム(が難しい)。」

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    菊池海麗さん
    「私と同じくらいの小学生を元気づけられるのは、私もすごくうれしい。聞こえないからと、ちょっと不安になって、友達ができなくなったりしたことが私もあったので、そういうことが他の小学生たちもないように、元気づけられたら、いいなと思います。」

    自分の踊りに感動してくれたり、元気づけられる人たちがいる…。
    海麗さんは、またひとつバレエが好きになりました。

    新着ダイジェスト