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ろうを生きる 難聴を生きる「振動と光で“音”をつかめ!」<字幕スーパー>

    「音」を「振動と光」に変えて知らせる装置「Ontenna」。開発者の本多達也さんは大手電器メーカーで研究を続け、今年7月実用化にこぎつけました。現在は全国のろう学校で活用方法をアピールするなどしています。さらに取り組んでいるのが、スポーツイベントへの応用。卓球Tリーグで装置を使い、聞こえない人に試合の臨場感を味わってもらおうというのです。聴覚障害者に「音」を届けたいという本多さんの姿を追いました。

    出演者ほか

    【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    振動と光で“音”をつかめ!

    卓球、Tリーグ、日本最高峰の試合を観戦するのは、ろう学校の聞こえない生徒たちです。

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    大興奮!
    実は、発売されたばかりのある装置を使って、より臨場感を得て楽しんでいます。「音のアンテナ」=「オンテナ」と名付けられたこの装置。「音」を光と振動に変えて伝えます。

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    大きな音がすると大きく振動。小さな音がすると小さく振動。256もの振動と光のパターンを作りだし、音の特徴を伝えます。選手のプレイの音、観客の歓声。装置を着けた子どもたちは、会場と一体になって楽しめるのです。

    ろう学校の生徒
    「装置のおかげでいつもより卓球を楽しめました。」

    この装置を開発したのは、大手電器メーカーの社員、本多達也さん。聞こえる人、聴者です。

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    装置の開発リーダー 本多達也さん
    「音教育は、やっぱり小さいころにするのがよくて、そういう意味でも子どもたちに届けたいという思いが強い。」

    いま、全国のろう学校を回っている本多さん。装置は聴覚障害のある子どもたちに何をもたらせるのか、その姿を追いました。

    この日、本多さんは装置を携え、岐阜にある、ろう学校を訪ねました。

    「きょうは遠いところから、お疲れさまでした。」

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    本多さんの会社では、全国のろう学校に無償で装置を提供。授業に活用してもらうことで、子どもたちに「音」の魅力を知ってもらいたいと考えています。

    「これから音楽の授業を始めます。」

    「きょうは『オ・ン・テ・ナ』を使って、音楽の授業をやってみましょう。」

    音楽のビートに合わせて、装置が振動するようにセッティング。これを使って、みんなでダンスをしようというのです。

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    今度は先生がリズムに合わせて、コントローラーのボタンを押し始めました。複数の装置を同じタイミングで振動させることができ、よりはっきりとリズムを伝えられます。

    本多達也さん
    「装置を使ってどう思ったか聞かせてほしいと思います。」

    ろう学校の生徒
    「装置があるとないとを比べると、あるほうがリズムをつかめて、うまく踊ることができました。」

    「リズムが分からなくなって、歌詞が捉えられないときに、(装置の)リズムで歌詞に戻れて踊れるので、あったほうがうれしいです。」

    「髪に着けて激しく動くと落ちてしまうので、クリップをちょっと強くしてもらいたいと思いました。」

    本多達也さん
    「アドバイスありがとうございます。」

    ろう学校の生徒(全員)
    「ありがとうございました。」

    本多達也さん
    「こちらこそ、これからもよろしくお願いします。」

    本多さんが装置の開発を思い立ったのは大学時代。情報技術を学んでいたある日。偶然、聴覚障害者の道案内をし、友人になりました。写真の左側がその男性です。

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    彼らに音を届けたい—。そんな思いで研究を始め、試作品を製作しました。その後、現在の会社に入った本多さんは研究を継続。試作機を、ろう学校で使ってもらうなどして、試行錯誤を続けてきました。

    本多達也さん
    「聴覚障害者の方、ろう者の方に音を届けたい、音を感じてほしい、いろんな世界を広げてほしいという思いはあるんですけど、この装置があることで、耳の聞こえる人と聞こえない人が一緒になって楽しめる場をつくりたい。」

    この先、装置をどのように普及させていくのか。開発チームが意見を出し合っていました。7年をかけた研究の成果が詰め込まれた装置。楽器のリズムや鳥のさえずりなど、聴覚障害者が感じることのできない、さまざまな音を振動と光に変えて伝えることができます。
    イベントに装置を貸し出す事業も始めています。観客の歓声や応援の音楽など、臨場感を伝えて、楽しんでもらおうと考えているのです。

    本多達也さん
    「まずラリー音ね、卓球の球の音。」

    今回は、卓球、Tリーグの公式戦で実証実験を行います。

    本多達也さん
    「この前、ろう学校に行ったときも、卓球のリズムを聞きたいという、ろうの子どもたちの意見が結構多くて、それをうまく伝えられたらなと思って、ラリー音というか、コンコンコン。」

    「これは第一ですよね。」

    8月、開発チームは東京・立川市にある競技場へ向かいました。

    Tリーグ担当者
    「ここに音を拾うマイクがあるんですね。選手がすぐ近くでプレイをするので、臨場感を伝えるという意味では、音がすごく大事な要素ですし、会場が盛り上がる要素なので、そこをちゃんと伝えたい。」

    卓球台の下に設置されているマイク。ここで拾われた音を音響機器に入力。音の大きさや周波数を調整してから、コントローラーに送ります。よけいな雑音はカットします。

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    この日、本多さんは立川ろう学校の生徒を招待していました。みんな、卓球部の部員です。

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    本多達也さん
    「僕たちのチームで作っている、これ(装置)を使って、皆さんに卓球のリズムを感じてもらいたいなと思っています。」

    まもなく試合開始。会場の一角に陣取った生徒たちは、さっそく装置を身に着けます。
    選手の靴が床をこする音、ボールの音、そして歓声。より臨場感が増す音だけに反応するよう、手動で細かく調整を加えます。

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    一方、観客席には本多さんの姿が。装置が的確に振動しているか確認していました。

    本多達也さん
    「反対側のサーブの“カンカンカン”という(音)がなかなか採れない。マイクの問題かな?」

    さらに、試合の合間に湧き上がる手拍子。装置がリズムを伝えることで、聞こえる観客と一体になって応援することができました。「音」を感じることによって、より迫力をもって楽しめることになった試合。2時間があっという間に過ぎました。

    ろう学校の生徒(全員)
    「ありがとうございました。」

    本多達也さん
    「また来てね。」

    ろう学校の生徒
    「球を打つインパスクトの瞬間を感じられました。」

    「装置のおかげで、いつもより卓球を楽しめました。」

    試合から1か月後、本多さんは立川ろう学校を訪ねました。

    本多達也さん
    「こんにちは。」

    卓球部です。Tリーグの試合のように卓球台にマイクを設置。練習にも装置を活用してもらおうというのです。

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    球が落ちた瞬間に打ち込む練習。音が聞こえないため、タイミングを取るのが苦手な子が多くいました。装置があれば、球が卓球台に落ちたとき振動するので、微妙なタイミングを習得する手助けになります。

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    続いては、連続して相手とボールを打ち合うラリーの練習。テンポ良くラケットを振るのが大切です。装置の振動でリズムを感じ取ります。

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    ろう学校の生徒
    「装置を着けるとラリーのテンポが分かるので、あんなふうに打てるようになれればと思いました。」

    本多達也さん
    「子どもたちの笑顔や反応が僕らの力の源になっているんだなと改めて感じました。少しでも苦手なところを意識するきっかけができたのは、すごくうれしかったですね。」

    聞こえない人たちに「音」を届けたい。音を感じて、笑顔になってほしい。本多さんは、これからも装置の改良のための研究を続けていくといいます。

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