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ろうを生きる 難聴を生きる「手話で楽しむみんなのテレビ!」<字幕スーパー>

    NHKの人気番組に手話をつけ、「ハートネットTV」で放送する「手話で楽しむみんなのテレビ!」。今回は「おはなしのくに」「ドキュメント72時間」。ろう者が監修・ろう者が手話で届けるエンターテインメント番組です。国内ではニュース以外の番組に手話をつける経験値は民放も含めほぼありません。プロジェクトチームの挑戦を追います。

    出演者ほか

    【出演】壇蜜,渡辺直美,【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    手話で楽しむみんなのテレビ!

    7月、NHKのスタジオで行われた収録。奥で太鼓をたたく男性と、手前には手話を使う男性。何の撮影をしているかというと…。

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    NHKの人気番組に手話をつけて放送する、手話放送プロジェクト。ニュースや福祉番組をのぞいて、これまでになかった試みです。

    こちらはイギリスのテレビ局が制作した、ろう者が手話でパラリンピックをPRする映像。音楽と一体化した表現、緻密な演出が大きな話題になりました。

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    演劇の世界では、ろうの俳優や聞こえる手話通訳が舞台に入り込んで感情豊かに表現。一人の役として劇中に組み込まれた演目も多くあります。

    今回のNHKのプロジェクトでもエンターテインメントとして楽しめるよう、さまざまな演出にチャレンジしました。より豊かな表現を目指し、監修をろう者に依頼。そして出演するのも、ろう者です。

    監修 廣川麻子さん
    「字幕だけではやはり細かい状況、雰囲気、ニュアンス、強弱、スピード感、それが伝わりにくい面があります。ですが、手話の場合だと、こういうふうに体全体で表現します。ですから、ことばの速さ、強弱、まさに喜怒哀楽といったものが伝わりやすくなります。」

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    今日はプロジェクトの裏側をご紹介します。

    今回、手話をつける番組は、昔話を個性的な出演者が一人芝居で演じる「おはなしのくに」。渡辺直美さんが演じる「きんたろう」と、壇蜜さんが演じる「つるのおんがえし」。子どもに大人気の長寿番組です。そしてもう一つ、熱烈なファンの多い「ドキュメント72時間」。取り上げるのは、とある老人ホームの3日間に密着した回です。

    プロジェクトが本格的にスタートしたのは6月。今回制作を担当する長嶋愛ディレクターは、自身も難聴です。

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    ろう、難聴、聞こえる人で組まれた合同チーム。声だけでなく、音楽はどう伝えるか?聞こえる・聞こえない、手話を日常的に使う・使わない、それぞれの立場から意見を出し合います。

    監修 廣川麻子さん
    「ろう者の場合は見てイメージするんですね。例えばライブが始まるとき、ステージライトがワーっと動いてバン!と止まるとワクワクするみたいな。『今からかっこいい人が登場するんだ』と期待しますよね。」

    長嶋愛ディレクター
    「音楽を手話で表現する。ちょっと何か違和感がある。よく分からないな。」

    番組中の「音」は、ほかにもあります。相撲をとっているときの太鼓の音。場面転換で鳴くウグイス。流れの激しさを表す、水の音。書き出してみると、10分の番組に、実に40ほどの音が入っていました。聞こえる人は音によって情景を想像したり、登場人物に心を寄せたりしているのです。

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    これらはどのように表現すべきか?

    長嶋愛ディレクター
    「聞こえる人も実は全部聞いているわけではなく、どうやら聞き流しているらしいという話を(通訳者の)茂木さんに教えてもらったので、『聞き流しているところは入れなくていいかな』なんて思ったんですよね。ただの水の音『コポコポコポ』とか『ゴー』みたいな音があるんだという部分は、字幕を入れてあげてもいいかなと思ったんですよね。
    今回の番組は聞こえない人(だけ)のために作っているというものではなくて、“新しいテレビの楽しみ方”みたいなのをやりたくて、ろう者の人も『今までより番組が楽しくなったな』と思ってもらいたいし、聞こえる人も『こういう番組の楽しみ方があるんだ』と見てもらえたらいいなと思っていて。」

    この日は、出演者が初めてカメラの前に立つリハーサル。役に応じた衣装をつけます。通常の手話通訳とは大きく異なる演出です。派手な動きもつけますが、元の映像の邪魔になってもいけません。出演する馬場博史さんの動きを、監修の江副悟史さんが見ながら、細かくチェック。表情、手話のスピード、視線の方向…。ワンカットワンカット、綿密な打ち合わせが続きます。

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    一人で何役も演じる番組ならではの工夫が入った場面があります。

    語り
    「行司のウサギが声をかけます。」

    ウサギ
    「ハッケヨイ、ノコッタ!」

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    監修 江副悟史さん
    「『ハッケヨイ、ノコッタ!』っていうところは、どうやら声がかわいい系らしいですね。こんな感じ。」

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    金太郎
    「かかってこい。」

    この場面、金太郎からウサギに声色が変化します。

    ウサギ
    「ハッケヨイ、ノコッタ!」

    聞こえるスタッフ
    「かわいい声。ウサギはかわいい声。」

    監修 江副悟史さん
    「『はい、どうぞ』みたいな、こんな感じ。」

    聞こえるスタッフ
    「そうそう。」

    監修 江副悟史さん
    「『どうぞ、どうぞ』みたいな。」

    何度も何度も繰り返し、声のニュアンスに手話表現を合わせていきます。
    音楽や効果音は、手話と小道具を組み合わせた表現をすることにしました。担当するのは、ろう者の竹村祐樹さんです。相撲をとるシーンでは聞こえる人にはなじみ深い「太鼓」の音が入っています。相撲だとすぐに分かり、場面により入り込むことができる音表現です。竹村さんが実際に太鼓をたたいて試してみます。

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    これに対し「もう少し工夫が必要ではないか」という意見が出されます。

    監修 廣川麻子さん
    「『応援している』っていう気持ちでたたくのか、設定を決めていただいたほうが表情を出しやすいと思います。」

    長嶋愛ディレクター
    「個人的には金太郎を見守る友達のような、天の声のような。」

    監修 江副悟史さん
    「行司のほうが、おもしろいと思います。
    相撲をしている様子、押し合っている様子に合わせて、太鼓をたたいている人もよろめいてみるといいと思う。ただ普通にたたいているだけならいらないかな。」

    そして、音楽の表現。物語の最後、立派な侍になった金太郎のバックで流れるBGM。

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    語り
    「こうして金太郎は立派な侍になりました。」

    まずは、どんな曲調なのか、聞こえない人たちに、聞こえるスタッフが説明します。

    聞こえるスタッフ
    「まずメロディーは『金太郎のテーマ』。それを楽器をかえて壮大に見えるように、聞こえるようにしている。いかにもラストっぽいよ。」

    長嶋愛ディレクター
    「ラストに…ほかの音楽よりここだけ可視化したほうがいいんだろうなっていうのは何かあるんだけど、その理由が説明できなくて。」

    聞こえるスタッフ
    「いや、そういうこと。最後だから、盛り上がるところだから。」

    長嶋愛ディレクター
    「ラストっぽいなっていう感じはあるんですね。」

    監修 江副悟史さん
    「指揮者がこういう感じで終わりますよね。曲の最後のところで。誰だったかな、小澤征爾さんのイメージですね。そんなイメージで竹村さんに表現してもらいましょう。」

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    はたしてどんな表現になるかは、見てのお楽しみ。

    迎えた収録当日。通常、離れたスタッフどうしは音声をつないでやりとりしますが、今回は、監修の江副さんが手話で直接指示を出せるよう、カメラをセッティング。スタジオにいる人とモニターを通じたやりとりをしていきます。

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    元の映像と合成するために、専用の青い背景で撮影。

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    これが切り抜かれて、画面になじんだ形になります。

    監修 江副悟史さん
    「渡辺直美さんのセリフが、まだ続いているんです。『金太郎は、お前かい?』のタイミングは合っています。」

    微妙な調整が続きます。

    監修 江副悟史さん
    「もう少しゆっくり表現してほしいです。」

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    語り
    「こうして金太郎は立派な侍になりました。」

    聞こえるスタッフ
    「はい、OK!」

    「つるのおんがえし」とあわせ、8時間かけて収録を終えました。

    できあがった映像を、立川ろう学校の子どもたちに見てもらいました。

    「見て見て!すごい顔!」

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    手話つきの映像を楽しんでもらえたようです。

    金太郎
    ♪まさかりかついで きんたろう〜

    渡辺直美さんご本人にも見てもらいました!はたして反応はいかに!?

    手話で楽しむみんなのテレビ。放送は21日と28日、夜8時。ぜひご覧ください。

    新着ダイジェスト