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ろうを生きる 難聴を生きる「いざ水中世界へ!ダイビングスクールの挑戦」※字幕

    聴覚障害者の間で人気のレジャーとなっている、ダイビング。しかし技術を修得するには困難が伴います。筆談など文字情報だけでは、なかなか専門知識が身につかないのです。神奈川県葉山にあるダイビングスクールの代表・関田昌広さんはこの現状を変えようと手話を習得。手話でダイビング講習を行なっています。言葉の壁に阻まれなかなかダイビングを体験できなかった聴覚障害者たちと、彼らをサポートする関田さんの姿を追います。

    出演者ほか

    【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    いざ水中世界へ!ダイビングスクールの挑戦

    海の世界を自由に散策!ダイビングを楽しんでいる、こちらは…。

    「この魚は、ずいぶん私たちの近くを泳いでいるね。」

    「そうだね。」

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    手話でおしゃべりをする…そう、聴覚障害者です。一方、ダイビングを始めるには講習を受ける必要がありますが…。

    「みなさんバルブの向き合ってます?手前に回します。」

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    難しい用語を声・口話で説明されることが、聴覚障害者の大きな壁になっていました。

    聴覚障害のダイバー
    「海の中での命にかかわるスポーツですから、説明が分からないと不安な気持ちになります。」

    そこで始まったある試み。

    「説明を始めます。
    (耳抜きは)2秒ぐらいかけて“うーん”って。」

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    「手話」で、ダイビングの基礎知識と技術を、丁寧に教えるのです。二人三脚で水中世界を目指す姿を追いました。

    神奈川県葉山町。海がとてもきれいな、人気の観光スポットです。この日、海岸にやってきた女性2人組。ともに聴覚障害者です。

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    さっそくダイブ!海の中では、聞こえる人、聴者は、言葉で意思の疎通を十分に図れませんが、2人の場合は…。

    「この先へ、みんなでウミウシを探しに行こう!」

    「行きましょう!」

    「探すぞ!」

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    楽しいダイビングの前には、入念に装備を点検します。正しい知識を身につけていないと、命の危険を招くこともあるのです。このためダイビングをしたい人は、講習を受けて認定証を取得することになっています。しかし現状ほとんどのスクールでは、口話で講習が進められ、サポートはあっても筆談などに限られているのです。
    そんな中、葉山には4年ほど前から、手話による講習を行うダイビングスクールがあります。責任者の関田昌広さん。聞こえる人・聴者です。

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    手話を始めたのは、ある経験がきっかけでした。

    聴覚障害者の受講生が、ときどきやってきて筆談で講義するものの、カリキュラムを消化できないということが続いたのです。

    ダイビングスクール 責任者 関田昌広さん
    「何時間も何時間も書いて書いてやったが、結局なかなか理解されなかった。そのとき大変失礼だが、“僕の言っている日本語が、なんで理解できない?”と何回も聞いてしまった。」

    これで、手話が必要なのだと気づいた関田さんは猛勉強。聴覚障害者のためのサポートを始め、今年(2019年)神奈川県の登録手話通訳者に認定されました。大好きな海の世界は、聞こえる人も聞こえない人も垣根を越えて楽しめる場所のはず。その強い思いで始めた試みで、多くの聴覚障害者が学び、認定証を手にしています。

    聴覚障害者のダイバー
    「ほかのスクールだと、聞こえる人を優先に口話で説明することが多いので、そういう意味で、聞こえる人と同時に(手話で)理解できるので、いいと思います。」

    この日、新たな聞こえない受講者がやって来ました。関田さんの手話による講習が始まります。

    関田さん
    「注意ね、まずは呼吸を止めちゃだめ。ずうっと呼吸を続けていく。人間って、こう肺に空間があって、水の中に潜ると、この空間の圧力と、水の中の圧力、ちょっと差が生まれて、そのまま呼吸を止めて上がると、肺がぱあんって破裂するときもある。」

    杉本聖奈さん
    「止めると破裂する?」

    関田さん
    「破裂。そうそう。ぱあんってなるから。」

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    講習を受けていたのは杉本聖奈さん。普段はイラスト作家として活躍しています。実は聖奈さんは、海に特別な思いを持っています。

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    伊豆諸島でシュノーケリングをして以来、魅力に引き込まれ、海の作品を数多く制作するようになりました。

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    ダイビングもやりたくなったのですが、スクールはなかなか見つからなかったといいます。

    聖奈さん
    「聴覚障害があるので断られることが多くて、悲しい経験をしました。聴覚障害者は1人では危ないし、ほかの人にも迷惑をかけると言われました。」

    この日作っていたのは、海の世界への憧れを表現した作品。聖奈さんの夢です。

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    取材班
    「そのダイバーは誰ですか?」

    聖奈さん
    「私です。海の中は、私と同じように、聞こえない、音のない世界です。私と同じ気持ちで楽しんでいる言葉を使わない魚や生き物を見ていると、すごく楽しいです。いろいろな発見もあって、おもしろいです。」

    1年ほど前、手話で教えてくれる関田さんを知った聖奈さんは、この夏、受講することにしたのです。いよいよ海に向かい、実技の講習です。

    関田さん
    「(回す方向が)反対。」

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    特殊な器材の扱いを習います。

    関田さん
    「これは“B・C・D”という(器材)。リュックに近い。空気を入れて調整する調整が必要。浮き輪みたいな感じで、自分で調整して楽に泳ぐ。」

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    手話で細かく説明を受けられるので、分からないことはその場で聞き返せます。

    関田さん
    「ゆっくり歩く。」

    さぁ、海の中へ。

    関田さん
    「聖奈さん見て見て、“いーっ”だめ。リラックス!周りも、きょろきょろ見て。」

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    危険がないように関田さんが聖奈さんをリードし、ダイビングがどんなものなのか体験させます。

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    関田さん
    「耳抜きをやって、痛みはない?」

    聖奈さん
    「ないです。」

    関田さん
    「さっきいた魚だね。」

    楽しそう!!

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    講習を終えて家に帰ると、この日の体験をさっそくイラストに描きます。

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    2日目は、プールでの講習です。

    関田さん
    「おお、うまいな。」

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    関田さん
    「聖奈さん、ちょっと速すぎ。“はっはっは”じゃなくて、“すーはー”これぐらい。」

    次は、足ひれの使い方。

    関田さん
    「おお、いいよ、いいよ。」

    水中で様子を見ていた関田さんは、聖奈さんが膝を曲げすぎているのに気づき、手話で指摘。お手本を見せます。

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    聖奈さん、今度はスムーズに泳ぎ始めました。
    3日目は、ふたたび海へ。前回は関田さんが手を取って泳ぎましたが、きょうは聖奈さん1人で泳げるように練習します。プールと違って、微妙なうねりがあるからでしょうか。聖奈さん、なかなか体を水平に保つことができません。

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    関田さんは、手話と身ぶりで丁寧にアドバイス。

    関田さん
    「僕を見て、膝を開いて動かしたら、だめ!下半身を起こして水平に。足ひれを使って。」

    コツをつかんだ聖奈さん。だんだん体を水平にして泳げるようになってきました。

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    最後に、水中散歩を楽しみます。

    関田さん
    「カワハギの子どもだよ。」

    聖奈さん
    「かわいいですね。」

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    基本技能を習得した聖奈さん。あと1日の講習で認定証を取得できます。

    聖奈さん
    「大変でした。器材を背負って泳ぐと、バランスを取るのが難しいですね。1人では、まだ怖いけど、みんなと一緒に潜ると安心できます。認定証を取得したら、仲間といろいろな海を巡って、いろいろな人と手話で話したいです。」

    水中世界を仲間と一緒に楽しみたい。聖奈さんがイラストに描いた夢が、もうすぐ実現します。

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