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ろうを生きる 難聴を生きる「一緒に山を楽しもう!」<字幕スーパー>

    いま、聴覚障害者の登山愛好家が増えています。その一方で、聞こえないことで危険を察知できず、事故にあうケースもあるといいます。手話通訳士で登山ガイドの資格も持つ細井裕子さんは、この現状を憂慮。手話通訳付きのアウトドア企画を始めました。番組では、細井さんが主催する企画に同行。聴覚障害者が山を楽しむ際に気をつけるべきことや、必要とされる技術について紹介。聞こえない人も楽しめる山の魅力を伝えてゆきます。

    出演者ほか

    【語り】高山久美子

    番組ダイジェスト

    一緒に山を楽しもう!

    険しい岩山をロープを伝って一歩一歩進む。山でしか味わえない難所を越えていく、だいご味。

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    楽しんでいるのは、耳の聞こえない人たちです。実はこれ、聴覚障害者向けのアウトドア企画での、ひとコマ。

    登山ガイド
    「見えてるか、こっちやぞ。頭注意、頭注意ね。」

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    手話通訳と登山ガイドが同行。落石や天気の急変などから身を守る方法や、専門的な用具の扱いを学べます。

    手話通訳
    「足が滑るので、しっかりつかんでから足元を見て。」

    最近は登山を楽しむ聴覚障害者が増えています。しかし、聞こえないため、必要な情報を事前に得られなかったり、とっさの危険を察知できず、事故にあうケースも出ています。そこで、手話通訳士の細井裕子さんは、大学時代から登山に親しんできた経験を生かし、この企画を始めたといいます。

    アウトドア手話企画 等高線 細井裕子さん
    「聞こえないことで、どういう危険が生じるか、その危険が生じたときに自分たちがどういう対応ができるか、全部、考えていけばいいと思うんですね。」

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    聞こえなくても、山を楽しみたい!聴覚障害者たちと、それをサポートする人たちの姿を追います。

    この日、開かれていたのは、大阪府の山岳連盟が主催する登山講座。聴覚障害者が対象で、20人以上が参加しました。

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    特に、聞こえない人が危険を回避するために大切な視線の置き方などを、講師の細井さんが詳しく解説します。

    細井裕子さん
    「まず上、岩がこうあって道があって、こうなっていたら、そこを見る。見ながら歩く。みなさん経験があると思うので、知識も重要だし、日頃、見る習慣というのも大事。そういう対応ができたらいいと思います。」

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    雪山をスノーシューで巡ったり、渓流をくだるキャニオニング。大自然を相手にすれば、楽しみとともに危険が伴います。だからこそ、専門知識を学ぶ機会が大切だと細井さんは考えています。

    細井裕子さん
    「ろうの人どうしで教え合うことはできると思うが、圧倒的なエキスパート、経験者の人や専門家から教えてもらう場所が、たぶんほとんどない。」

    専門店での用具選びも例外ではありません。店員と詳しいやり取りができないケースがあるのです。この日やってきたのは、細井さんの企画によく参加する濱田さんと川合さんです。

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    登山靴、用途に応じ、さまざまな種類が並んでいます。岩山などをアップダウンする登山では、自分の足にぴったりとフィットする感覚が、なにより重要です。

    店員
    「ここにストッパーが付いています。靴のひもを締めるときは、かかとに合わせて、靴のかかとに足のかかとを固定するような感じで、ひもを締める。」

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    店員
    「指先どうですか?」

    「さっきより当たらなくなりました。」

    店員
    「ひもを締めたときに、たぶん、かかとがね、後ろにいっていなかったのだと思います。」

    「ひとりで来るより、たくさん情報が得られるので、安心して買うことができます。(靴を)はいた感覚が、いつもと違ったので、すごくよかったと思いました。」

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    翌日の企画に向け、細井さんとコースの最終確認をする2人。日常生活では決して味わうことのない体験ができる山の魅力に、はまっています。

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    「初めて登った山は六甲山でした。六甲山は、しんどい山なんですけれど、達成感がものすごくあったので、それが気持ちよかったんです。」

    「うり坊、イノシシの子どもがワーッと走って逃げていくところを見たんです。そういった、ふだんと違う経験ができるのも、登山のだいご味かな。」

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    しかし、聞こえないことで苦い経験を味わったことも。

    「2人で旅行会社の登山ツアーに申し込んだんです。すると『障害のある人はお断りします』『ご遠慮ください』というようなファクスが来て、おかしいと思いましたが、しかたなくツアーの参加はやめて、結局、2人だけで登山に行きました。」

    「断られた理由は、聞こえないから、もし何か危険があったときにサポートができない、責任が持てないということで断られてしまったんです。」

    3月最後の日曜日。天候はまずまずです。

    細井裕子さん
    「よろしくお願いします。」

    この日の参加者は、みな聴覚障害のある人たち。

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    手話通訳士の細井さんと、登山ガイドが同行します。

    登山ガイド 岡田敏昭さん
    「お久しぶりの方もいらっしゃいますね。」

    今回登るのは、京都にある鷲峰山。標高680メートルあまり。険しい箇所もある山です。

    登山ガイド 岡田敏昭さん
    「きょうは過去に死亡事故も起きている、とても危険な岩場になっていますので、皆さんの命を守るという意味から、岩場を歩くときの特殊な操作のしかたをちょっと練習してから出発したいと思います。」

    まずは用具の使い方。筆談だけでは伝わりにくい細かな部分も手話で説明していきます。

    細井裕子さん
    「これの名前が、安全環付きカラビナといいます。自分の命を守るために使います。」

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    細井裕子さん
    「ここまで来たら、1枚を向こう側へ。もし、こうやっているときに滑ったとしても、もう1枚があるので止まることができます。」

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    いよいよ出発。3時間かけて、この山を登ります。山道を進み始めたとき、ガイドが、あるものを発見しました。

    登山ガイド 岡田敏昭さん
    「タヌキの“ためふん”があります。雄の縄張りですね。うんこをして匂いをつけるんでね、別の雄がもっと濃い匂いを付けて、雌がその匂いを嗅ぎに来ます。一番おいしそうな匂いのする雄が戻ってくるのを待って夫婦になります。」

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    聞こえる人向けのイベントでは、話についていけず、こうした豆知識を得ることができないといいます。
    ひとつめの難所がやってきました。手話だけでは、登りながらのやりとりは難しいため、字で示し、事前に詳しく説明していきます。

    登山ガイド 岡田敏昭さん
    「ここに注意事項を書きました。3点確保といいます。分かりますか?3点というのは、どれか。右足、左足、右手、左手、4つありますよね。そのうち3か所は地面についている、握っていると思ってください。2つはだめよ。」

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    登山ガイド 岡田敏昭さん
    「ここやな。ここ、いやですね。」

    切り立った崖が30メートル続きます。まずはガイドがロープを張りました。これを命綱にして降りていきます。

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    先ほど習ったとおりに命綱に器具を固定しながら慎重に進みます。

    参加者
    「本当はロープをつかんじゃ、だめっていわれた。ひとつずつ、しっかり岩をつかむんだね。」

    「おもしろい!危ないけど、十分に注意しながら降りきったときにはホッとしました。」

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    ここで、最後の難関が待ち構えていました。垂直の岩の壁です。

    細井裕子さん
    「鎖があるので、ここを登ります。ロープもあるから落ちても大丈夫。ここに来たら、ここをつかめるので、しっかり持って。あとはつかまるところを探し続けていると足が滑るので、しっかりつかんでから、足元を見て、足がかりを探します。」

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    参加者たちは、細井さんの手話の指示に従って、慎重に登っていきます。安全のため、崖の上にはガイドがついて命綱を確保。下からは細井さんが見守ります。

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    登山ガイド 岡田敏昭さん
    「すごいパワーの登り方やな。
    はい、がんばりました!お見事でした!」

    開始から3時間。無事に全員が登りきりました。

    細井裕子さん
    「はい、じゃあ等高線ポーズいきます。オーケー。」

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    「一番難しかったのは、垂直の壁だったところです。難しかったけれど、登りがいのあるところだったので、すごく楽しかったです。登りきれたので、すごく充実感があります。」

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    「やっぱり口話だけだと通じないこともあるし、筆談だと時間がかかるし、手話なら、いわれて、すぐに実践できるので、時間的にもスムーズだし、便利だと思います。」

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    山で感じる何にも代えがたい快感を、多くの聞こえない人に味わってほしい。山を愛する細井さんの願いです。

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