
公開日:2020年5月20日
認知症疾患の中で代表的な「アルツハイマー型認知症」について、気付くポイントを考えてみましたが、その判断は難しいです。
病院で診療をしていると、病院に来る人は自分の変化に気付いている人ばかりです。自分の変化に気付かない人が、どのようにしたら気付くのかは、わかりません。
もの忘れ外来を受診する人を見ていても、「以前と比べて明らかに失敗が増えているにもかかわらず検査をしても異常とはいえない人」がいます。「単なる老化現象と思って受診した人に老化を超えた障害(認知機能障害)をみる」こともあります。
一つ言えるのは、「もの忘れがあって認知症を疑うようになってから、それまでの生活を変えてしまう人」がいて、そういう人は日課や生活リズムの変化から、戸惑ったり混乱したりすることが増え、それが不安を助長して、さらに失敗が増え、ますます不安になるという悪循環に陥ってしまうことがあるということです。そういうときは、意識して生活をもとのリズムに戻してみることで、失敗が減ることがあります。
心配しながらの生活は、好ましいものではありません。もしも心配があるなら、そっと一人で受診してみたらいかがでしょうか。
ありません。神経質な人はささいなもの忘れや失敗を過度に心配して、そのことが不安を助長し、ますます失敗が増えますし、楽観的な人はもの忘れを病気とはなかなか考えないと思います。
しいて言えば、「時間経過」でしょうか。「もの忘れが年単位でひどくなってきている」ようなら、認知症の可能性があるかもしれません。「確かにもの忘れはあるが、何年かたっても変わらない」ようであれば、認知症の可能性は少ないと考えられます。
しかし自分のもの忘れを、客観的に時間を追ってみていくことは難しいものです。やはり確かな方法は、医療機関で半年とか1年の間隔をあけて検査を行い、どのくらい悪化しているかみることでしょう。
人によって相談しやすいところは違うでしょう。友人に相談しやすい人もいます。妻や夫など配偶者が相談しやすいという人もいれば、娘や息子、嫁や婿などが相談しやすいという人もいます。
相談機関としては、おもに以下のところがあります。
○かかりつけ医
どの診察科でもかまいません。たとえば、高血圧が気になって通っている内科のクリニックに、定期的な診断のときに相談してみてもいいでしょう。虫歯の治療で通っている歯科クリニックでもかまいません。医師は必要だと感じたら、専門の医師や病院を紹介してくれます。
かかりつけ医がいない場合は、都道府県や政令指定都市のホームページに掲載している「かかりつけ医認知症対応力向上研修受講者」や「認知症サポート医」の名簿を参考に、医師を選んで相談にいくという方法もあります。
○地域包括支援センター
地域住民の心身の健康の保持や生活の安定のために必要な援助を行っているのが「地域包括支援センター」です。保健師(または経験ある看護師)、社会福祉士、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)がいます。医療機関の紹介や、さまざまな介護サービスの紹介、認知症カフェのような認知症の人の拠り所づくりへの取り組みなどを行っています。若年性認知症に関する相談も受け付けています。
自分の住んでいる地域の「地域包括支援センター」の場所がわからないときは、インターネットで検索するか、市区町村の役所に聞いてみましょう。なお、「地域包括支援センター」は、地域によっては違う名称を使っているところもあります。(たとえば、鹿児島県鹿児島市は「長寿あんしん相談センター」、愛知県名古屋市は「いきいき支援センター」という名称になっています)。
○認知症コールセンター
各都道府県や市区町村が設けている「認知症コールセンター」は、電話相談窓口です。認知症の本人や家族、身近な人などが抱える悩みを相談できます。
○市区町村、保健所・保健センター
認知症に関する相談窓口となる担当課があります。
○公益社団法人 認知症の人と家族の会
電話相談を行っています。詳しくは、「認知症の人と家族の会」のホームページで確認をしてください。
周囲の助言やサポートを受け入れる寛容さをもつことです。 自分は認知症ではないと言い聞かせて、自分で考えて自分でがんばって、今まで通り身の回りのことを自分だけでやろうとする人がいますが、無理をしていますので、失敗して自信をなくすことが多いように思います。まず、「自分は認知症である」と認めてしまったほうがいい。つまり、「自分は認知症でもいい」と許すことです。
自分が認知症であることが許せないと、自分をますます追い込むことになります。「自分は認知症でもいい」と許すことで、人の助言やサポートを受け入れることができます。忘れたり失敗したりするのは、怠けているからではありません。認知症の症状なのです。怠けているわけではないので、自分にムチを打ってがんばろうとすることには無理があります。それはかえって自信をなくします。それよりは人の助言やサポートを受け入れるほうが、それまでの暮らしを続けられるのです。

公開日:2020年5月20日
65歳未満で発症した認知症のことを言う
認知症は、高齢者だけでなく、若い世代でも発症します。なかには18歳で発症した人もいます。そのような、65歳未満で発症をした認知症のことを「若年性認知症」と言います。
高齢者の認知症の原因はアルツハイマー病が多いのですが、若年性認知症の原因となる疾患は血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、頭部外傷、感染症、脳腫瘍、変性疾患など多様であることも特徴です。
気になったら早めに専門医に相談を
若年性認知症の場合、仕事や家事に忙しい年齢であるため、職場や家庭での仕事の中での、認知機能の低下による失敗などがあることにより、「何かおかしい」と気が付きやすいようです。しかしながら、うつ病や更年期障害など、この年代に起こりやすい疾患ではないかと疑うことが多く、若年性認知症であるという診断に至るまでに時間がかかってしまうケースが多々あります。 これからの暮らしを考えると、早期診断・早期対応が望ましいと言われています。違和感を感じたら、認知症の専門医を受診しましょう。
最初に相談するところ
「若年性認知症かもしれない」と不安になったときや、「若年性認知症と診断された」あとに、相談できる代表的なところ(人)は以下です。
○医療機関のソーシャルワーカー
診断された病院やクリニックに所属している社会福祉士または精神保健福祉士のことを言います。
○地域包括支援センター
住んでいる地域にある、地域住民の心身の健康の保持や生活の安定のために必要な援助を行っている施設。ここにいる相談員は、保健師(または経験ある看護師)、社会福祉士、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)です。
○若年性認知症コールセンター
厚生労働省の「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」の中の若年性認知症対策の一環として設置されたコールセンター。 Tel : 0800−100−2707(フリーダイヤル)
○若年性認知症支援コーディネーター
若年性認知症の人やその家族などからの相談に応じ、適切な制度・サービスを紹介。さらに、本人の自立支援に関わる関係者のネットワーク調整を行います。全国の都道府県ごとに配置されています。
経済的な支援を受けられる主な制度
働き盛りの年齢であることから、経済的な困難に陥ることも。さまざまな形で経済的な支援を受けられるよう、以下の制度について確認をしましょう。
○自立支援医療(精神通院医療)
「自立支援医療」とは、精神疾患(認知症を含む)で通院治療している場合、医療機関や薬局で支払う医療費の自己負担を軽減する制度です。ただし、都道府県に届け出をしている医療機関での診察によってかかる医療費についてのみが対象となるため、確認が必要です。原則は1割負担。所得により1か月の限度負担額が決まっています。利用の際は、市区町村の障害福祉担当窓口にて申請します。
○障害年金
病気やけがをして、障害をもつようになったときに受け取ることができるのが「障害年金」です。初診日(障害の原因になった傷病について、初めて医師の診断を受けた日)が65歳未満であることが条件です。初診日の時点で加入している年金の種類により、受給できる年金の種類が異なります。
支給を受けるためには、年金事務所または市区町村の年金担当窓口での申請が必要です。受給にあたっては、いくつかの要件を満たすことが条件となります。
なお、配偶者や子どもがいる場合、条件を満たせば加算されます。
○精神障害者保健福祉手帳
精神疾患(認知症を含む)により、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある人が対象となります。市区町村の障害福祉担当窓口にて申請し、「精神障害者保健福祉手帳」を受け取ることで、税制の控除、携帯電話料金の割引など手帳に基づく優遇措置を受けることができます。
○傷病手当金
全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合に加入している本人(被保険者)が、若年性認知症などの病気や業務外のけがで仕事を休み、給料が支払われないときに、その間の生活保障をするための現金給付制度が、「傷病手当金」です。退職前に申請しておくことで、退職後も受給できる場合があるため、早めに職場の担当者に相談することをおすすめします。
○就学援助
自治体ごとに、家庭の事情に応じて、義務教育期間中の子どもの学習に必要な費用の援助を行っています。詳しくは、市区町村の教育委員会に問い合わせをしてください。
○児童扶養手当
ひとり親家庭になった人や、配偶者に重度の障害がある人で、18歳になってから最初の3月31日まで(中程度以上の障害のある児童は20歳未満まで)の子どもを養育している人が対象。支給を受けるためには、市区町村の子ども担当の窓口での申請が必要です。所得制限があります。受給資格者本人の所得額と児童の人数により支給額が変わります。
自立支援を受けられる主な制度
できるだけ今まで通りの暮らしを続けていくために、以下の制度の利用も検討してみましょう。
○介護保険
若年性認知症の場合は、特定疾病(介護保険利用の対象となる病気)となるため、40歳以降であれば介護保険を利用することができます。介護保険サービスの中でも、若年性認知症の人がよく利用しているのが、通所介護(デイサービス)、と通所リハビリテーション(デイケア)です。デイサービスの中には、働くこと(福祉的就労)に取り組んだり、社会貢献活動を行っているところもあります。利用の際には、地域包括支援センターまたはケアマネジャー(介護支援専門員)に相談を。
○障害福祉サービス
障害者自立支援法に基づく「障害福祉サービス」を受けることできます。若年性認知症の人がよく利用しているは、就労継続支援B型です。一般企業での就労が困難な人に、就労する機会を提供するとともに、能力などの向上のために必要な訓練を行います。定期的に通所することにより、生活リズムの維持や身体機能の維持も図れるという利点もあります。
若年性認知症の場合は、仕事、介護、収入、子育てなど悩みが多岐に渡る
高齢者の認知症に比べると、若年性認知症には以下の特徴があります。
- 発症年齢が若い。平均すると約51歳。
- 高齢者の認知症の人は女性が多いが、若年性認知症の人は男性が多い。
- 初期に目立つ症状が、認知機能の低下による自信喪失からの抑うつであるなど、認知症特有のものではないことが多く、正しい診断まで時間がかかることがある。
- 働き盛りで一家の生計を支えている人が多く、経済的に困窮する可能性がある。
- 子どもがいる場合でもまだ小さいため、介護は配偶者が集中して行うことになる。また、親の介護や子どもの療育と重なり複数介護(ダブルケア)となる場合がある。
- 子どもが若年性認知症になった場合は、高齢の親が介護者になる。
- 夫婦間の問題や、子どもがいる場合は養育の問題など、家庭内での課題が多い。
- 身体的機能は保たれている人が大半。
- 高齢者の認知症の人は、老化による身体機能の低下などを併せもっている。若年性認知症の人は、それぞれ人によって状況はさまざまであり、進行のペースも個人差が大きい。
今までのような暮らしを続けるためにはまわりの人の協力が大切に
今までしてきたことは続ける、ときには新しいことにもチャレンジしてみる…… そのようないつもと変わらない暮らしを続けていくことが、若年性認知症の人、高齢者の認知症の人の心とからだにとって、とても大切なこととなります。できるだけ自分らしくいられることが、いわゆる認知症の行動・心理症状を遠ざけ、経過をよいものとしていくことが、わかってきています。
本人の今の、毎日の暮らしを大切にしていくことに重点をおくならば、家族の協力は欠かせません。そのため、子どもにも病気のことを伝えなくてはいけない時期が来るでしょう。
どのように伝えたいのか、いつ伝えるのかは、本人とよく相談をして決めるようにしましょう。子どもの年齢や性格、その時の事情などによっても、伝え方や伝える時期も変わってくるでしょう。
そして、伝えるときに大切にしたいのは、たとえ子どもが幼かったとしても、子ども扱いするのではなく、「家族の一員として協力してほしい」ということを心から伝えることです。
一つの方法として、「お父さん、若年性認知症かもしれない」という段階から話し始めて、徐々に現状を伝えていくことも考えられます。話を聞いてから受け止めるまでに時間が必要なのは、大人も子どもも変わりません。病気については伝えるのが難しいところもあるので、若年性認知症の本人が語る講演会に一緒に参加してみたり、本で一緒に学んでみたりするのもいいでしょう。

公開日:2020年5月20日
薬は、認知症の進行をゆるやかにするためのもの
認知症を治す薬はありません。現在、「治療薬」となるのは、認知症の進行をゆるやかにするために、脳に働きかける薬です。「少しでも長くその人らしく暮らしてもらうこと」を期待して、医師はこれらの薬を処方しています。
現在、アルツハイマー型認知症に対して承認されている薬は以下の4種類です。
- アリセプト(一般名/ドネペジル塩酸塩)
- レミニール(一般名/ガランタミン臭化水素酸塩)
- リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ(一般名/リバスチグミン)
- メマリー(一般名/メマンチン塩酸塩)
これらは、症状や進行の度合いにより使い分けられています。通常は、少量から使用を始め、副作用が現れないか確認しながら維持量(効果が期待できる量)まで増やします。
薬以外の治療法
認知症の治療においては、薬だけでなく、環境調整や適切なケアなども非常に大切です。認知症の人にとって、穏やかな気持ちで安定した状態で過ごせることが進行を遅らせることに繋がります。その手助けのために、回想法や音楽療法などいろいろな心理療法が治療に用いられることもあります。
40歳から加入。条件次第で介護保険を使ったサービスを受けられる仕組み
家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支え合う仕組みが「介護保険」です。介護保険を使ったサービスを受けられるのは以下の人です。
- 65歳以上の、(原因を問わず)要支援・要介護状態*の人
- 40〜64歳の医療保険加入者で、初老期における認知症、がん、関節リウマチなど老化による病気(特定疾病**)が原因で要支援・要介護状態の人
介護保険の制度は、2000年に創設されました。制度を運営しているのは、皆さんがお住まいの市区町村(保険者といいます)。40歳になると、健康保険加入者は介護保険に加入します(被保険者となり、介護保険料の支払いをする義務が発生します)。
*要支援・要介護状態……具体的には、要介護認定の結果、要支援または要介護状態(要支援1・2、要介護1~5)であることが認定されます。詳しくは地域包括支援センターでご確認ください。
**特定疾病……以下の16種類です。初老期における認知症、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗しょう症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症、早老症、脳血管疾患、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病、閉塞性動脈硬化症、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患、脊柱管狭窄症、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症、がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
介護保険について詳しく知りたいときは、地域包括支援センターへ
介護保険について詳しく知りたいときや、「認知症かもしれない」「認知症と診断されたけれどこれからの暮らしをどのようにしていけばいいのか」と悩んでいたりするときは、地域包括支援センターで相談しましょう。
地域包括支援センターには、保健師(または経験ある看護師)、社会福祉士、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)がいて、地域住民の心身の健康の保持や生活の安定のために必要な援助を行っています。具体的には医療機関の紹介や、さまざまな介護サービスの紹介、認知症カフェのような認知症の人の拠り所づくりへの取り組みなどを行っています。若年性認知症に関する相談も受け付けています。
自分の住んでいる地域の「地域包括支援センター」の場所がわからないときは、インターネットで検索するか、市区町村の役所に聞いてみましょう。なお、「地域包括支援センター」は、地域によっては違う名称を使っているところもあります。(たとえば、鹿児島県鹿児島市は「長寿あんしん相談センター」、愛知県名古屋市は「いきいき支援センター」という名称になっています)。
「介護給付サービス」と「予防給付サービス」がある
介護保険によるサービスには、大きく分けて「介護給付サービス」と「予防給付サービス」の2種類があります。
市区町村の窓口や地域包括支援センターでは、相談に来た人(本人)の状況やサービス利用の意向を聞いたうえで、必要であれば「基本チェックリスト*」を実施し、その結果をもとに、要介護認定申請が必要か、事業対象者(要支援者に相当する状態等の人を想定)としてサービス利用することが必要かなどを担当者が評価します。
要介護認定が必要とされて申請をした結果、「要介護1〜5」の判定となった人は「介護給付サービス」を、「要支援1または要支援2」の判定となった人は「予防給付サービス」を受けることができるようになります。
「基本チェックリスト」を実施のうえ、「事業対象者」となった人は、「予防給付サービス」の中の介護予防支援(介護予防ケアマネジメント)、介護予防・日常生活支援総合事業/訪問型サービス(家事支援・身体介護)、介護予防・日常生活支援総合事業/通所型サービス(デイサービス)、その他の生活支援サービスを利用することができるようになります。
*基本チェックリスト……65歳以上の高齢者が、自分の生活や健康状態を振り返り、心身の機能で衰えているところがないかどうかをチェックするためのもの。地域包括支援センターまたは市区町村の窓口で活用しています。
要介護1〜5の人が受けられる「介護給付サービス」
介護給付サービスには、おもに以下があります。
○介護の相談・ケアプランの作成
居宅介護支援。介護を必要としている人が自宅で適切なサービスを受けるために、ケアマネジャー*がケアプラン(在宅サービス計画)を作成するとともに、サービス提供事業所との連絡などを行います。利用者の負担はありません。
*ケアマネジャー(介護支援専門員)……介護が必要になってもその人らしく生き生きと暮らせるように、介護相談にのったり、介護保険を利用したサービスの計画を立てたりします。ケアマネジャーは自分で選べ、途中で変えることもできます。
○訪問を受けて利用する
訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導(医師、歯科医師、薬剤師などによる療養上の管理や指導が受けられる)など
○通って利用する
通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)など
○短期間入所する
短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)など
○在宅に近い生活をする
特定施設入居者生活介護(介護保険の事業所指定を受けた有料老人ホームやケアハウスなどで生活をしながら介護を受ける)
○在宅での生活を支える
福祉用具の貸与、福祉用具購入費の支給、住宅改修費の支給
○施設に入所する
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、略称:特養)、介護老人保健施設(略称:老健)、介護療養型医療施設、介護医療院など。本人の状況により、申し込みが可能な施設の種別が決まります。
○地域密着型介護サービス
高齢者が認知症や中重度の要介護状態になっても、できる限り住み慣れた地域で生活できるようにするために市区町村から提供されるサービス。施設などの規模が小さいため、利用者のニーズにきめ細かく対応できます。認知症デイサービス(認知症対応型通所介護)、定期巡回・臨時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模デイサービス(地域密着型通所介護)、小規模多機能型居宅介護、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、看護小規模多機能型居宅介護などがある。
要支援認定を受けた人が受けられる「予防給付サービス」
予防給付サービスには、おもに以下があります。
○介護予防の相談・ケアプランの作成
介護予防支援(介護予防ケアマネジメント)。要支援状態の悪化防止や改善に重点を置いた目標を定め、利用者の自立に向けてサービスが提供されるように、地域包括支援センターの担当者がケアプラン(在宅サービス計画)を作成します。利用者の自己負担はありません。
○訪問を受けて利用する
介護予防・日常生活支援総合事業/訪問型サービス(家事支援・身体介護)、介護予防入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導(医師、歯科医師、薬剤師などによる療養上の管理や指導が受けられる)など
○施設に通って利用する
介護予防・日常生活支援総合事業/通所型サービス(デイサービス)、介護予防通所リハビリテーション(デイケア)など
○短期間施設に泊まる
介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)、介護予防短期入所療養介護(医療型ショートステイ)など
○在宅に近い生活をする
介護予防特定施設入居者生活介護(介護保険の事業所指定を受けた有料老人ホームやケアハウスなどで生活をしながら介護予防を目的に日常生活の支援を受ける)
○在宅の生活を支える
介護予防福祉用具の貸与、介護予防福祉用具購入費の支給、介護予防住宅改修費の支給
○地域密着型介護予防サービス
介護予防デイサービス(介護予防認知症対応型通所介護)、介護予防小規模多機能型居宅介護、グループホーム(介護予防認知症対応型共同生活介護 )
周囲の助言やサポートを受け入れる寛容さをもつことです。 自分は認知症ではないと言い聞かせて、自分で考えて自分でがんばって、今まで通り身の回りのことを自分だけでやろうとする人がいますが、無理をしていますので、失敗して自信をなくすことが多いように思います。まず、「自分は認知症である」と認めてしまったほうがいい。つまり、「自分は認知症でもいい」と許すことです。
自分が認知症であることが許せないと、自分をますます追い込むことになります。「自分は認知症でもいい」と許すことで、人の助言やサポートを受け入れることができます。忘れたり失敗したりするのは、怠けているからではありません。認知症の症状なのです。怠けているわけではないので、自分にムチを打ってがんばろうとすることには無理があります。それはかえって自信をなくします。それよりは人の助言やサポートを受け入れるほうが、それまでの暮らしを続けられるのです。
必要に応じて3つのサービスから選んで利用できる施設
施設への「通い」、短期間の「宿泊」、利用者の自宅への「訪問(介護)」を組み合わせることができる介護施設が、小規模多機能型居宅介護です。地域密着型サービスの一つ。住み慣れた地域で、必要に応じてサービスを選んで受けることができるのが大きな特徴です。緊急時に自宅訪問をしてもらうこともできます。利用に際して、この施設を運営する事業所に属するケアマネジャーが、今後の担当者となります(利用前までに担当していたケアマネジャーがいる場合は、変わることになります)。
なお、施設への「通い」、短期間の「宿泊」、利用者の自宅への「訪問(介護)」に加えて、看護師などによる「訪問(看護)」も組み合わせることができる「看護小規模多機能型居宅介護(略称:かんたき)」もあります。看護と介護の一体的なサービスを受けることができます。

公開日:2020年5月20日
経済的な支援を受けられる制度の利用を
経済的な支援を受けることができる制度などがあります。以下がおもな制度です。ほかにも、条件によっては紙おむつの支給などを受けられる制度もあります。どの制度を利用することができるかは、お父さんの年齢や心身の状態などによっても変わってきますので、まずは地域包括支援センターでご相談ください。なお、事前にお父さんの現在の経済的な状況(収入や支出)について把握しておくと、相談から申請までの過程で役に立ちます。
○介護保険
家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支え合う仕組みが「介護保険」です。介護保険を使ったサービスを受けられるのは以下の方です。
- 65歳以上の、(原因を問わず)要支援・要介護状態*の人
- 40〜64歳の医療保険加入者で、初老期における認知症、がん、関節リウマチなど老化による病気(特定疾病**)が原因で要支援・要介護の人
どちらの場合も、まずは要介護認定を受ける必要がありますので、お住まいの近くにある地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所にて相談をしてください。
*要支援・要介護状態……具体的には、要介護認定の結果、要支援または要介護状態(要支援1・2、要介護1~5)であることが認定されます。詳しくは地域包括支援センターでご確認ください。
**特定疾病……以下の16種類です。初老期における認知症、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗しょう症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症、早老症、脳血管疾患、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病、閉塞性動脈硬化症、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患、脊柱管狭窄症、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症、がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
○社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
社会福祉法人等がその社会的役割から、低所得で特に生計が困難である人について、介護保険サービスなどの利用者負担の軽減を行うものが「利用者負担軽減制度」です。所得によってはこの制度が利用可能な場合もあるので、利用を希望する場合は市区町村の介護保険担当窓口に問い合わせをしてください。
○介護保険負担限度額認定証
介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)の入所やショートステイを利用する際の食費・居住費(滞在費)については、本人による負担が原則です。ただし、要件を満たす人については申請(負担限度額認定申請)により年金収入の状況などに応じて、介護保険負担限度額認定証が交付され、それを施設に提示することにより負担軽減が受けられます。利用を希望する場合は市区町村の介護保険の担当窓口に問い合わせをしてください。
○自立支援医療(精神通院医療)
「自立支援医療」とは、精神疾患(認知症を含む)で通院治療している場合、医療機関や薬局で支払う医療費の自己負担を軽減する制度です。ただし、都道府県に届け出をしている医療機関での診察によってかかる医療費についてのみが対象となるため、確認が必要です。原則は1割負担。所得により1か月の限度負担額が決まっています。利用の際は、市区町村の障害福祉担当窓口にて申請します。
○高額介護サービス費
1ヵ月に受けた介護サービス(在宅サービスまたは施設サービス)の利用者負担の合計(同じ世帯に複数の利用者がいる場合は世帯合計数)が、利用者負担の上限を超えた場合は、市区町村の介護保険担当窓口にて申請することにより、超えた分が「高額介護サービス費」として支給されます。
○高額療養費制度
医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1ヵ月(その月の1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給するのが「高額療養費制度」です。上限額は、年齢や所得によって変わります。利用の際は、加入をしている医療保険の窓口にて申請します。
○障害年金
病気やけがをして、障害をもつようになったときに受け取ることができるのが「障害年金」です。初診日(障害の原因になった傷病について、初めて医師の診断を受けた日)が65歳未満であることが条件です。初診日の時点で加入している年金の種類により、受給できる年金の種類が異なります。
支給を受けるためには、年金事務所または市区町村の年金担当窓口での申請が必要です。受給にあたっては、いくつかの要件を満たすことが条件となります。
なお、配偶者や子どもがいる場合、条件を満たせば加算されます。
○特別障害者手当
精神または身体に著しく重度の障害をもつため、日常生活において常時特別の介護が必要な在宅の20歳以上の人に支給される手当です。利用の際は、市区町村の障害福祉担当窓口に申請をします。
○住宅ローンの団体信用生命保険
住宅ローンの契約時に「団体信用生命保険」に加入している人は、返済の途中で加入者が死亡または高度障害になった場合、残りのローンが弁済されます。金融機関によって契約内容が異なっていますので、確認をしてみてください。
介護者が倒れてしまう前に、早めに施設利用の検討を
介護をしている家族が疲れてしまったり、仕事や法事などで外泊したりするときには、介護保険サービスの一つであるショートステイを利用する人が多くいます。一人暮らしを続けることが難しくなってきたり、介護している家族が病気になってしまったりなどの理由から、介護施設入所を選択する人もいます。
本人が気持ちよく生活をするためにも、介護者が元気であることが大事です。もしも、今、介護者の負担が大きいなどの理由で、このままでは介護が難しくなることが予測できるのであれば、早めに施設の利用を検討してみることをおすすめします。
まずは一度見学を
初めての利用であれば、本人も家族も不安が大きいでしょう。そこで、まずは一度、見学をしてみることをおすすめします。ケアマネジャーと相談をして、本人に合いそうな施設をいくつか選び、できれば本人と一緒に、難しい場合は家族だけででも見学に行ってみましょう。
ここならば、という施設を選んだら、本人に説明をしましょう。
ショートステイは体験から始める方法も
施設が決まったら、ショートステイの場合は、体験してみましょう。まずは1泊2日からの利用をおすすめします。最初は、本人が乗り気ではないかもしれません。その様子を見ていると、家族も不安になることもあるでしょう。しかし、ほとんどの場合、回を重ねるごとに本人も徐々に慣れていくようです。ショートステイを利用したあとは、スタッフの人に施設での本人の様子を聞いておくことも、安心感につながります。
実際にショートステイを定期的に利用できるようになったときは、介護者がゆっくりと休むことを大切にするのであれば、家からの送り出しと迎えのことを考えると、2泊3日から3泊4日くらいにするとよいでしょう。
本人が望む暮らしができるように
ショートステイの利用と施設入所のどちらの場合も、施設において、本人が望む暮らしができるように、準備をしましょう。施設のスタッフには、本人の体調、好み、性格、習慣などを伝えておきます。可能であれば使い慣れた食器を持ち込んだり、部屋には馴染みのものを置いたりすることで、本人が安心して過ごせる環境を作るようにします。
デイサービスだけでなく認知症カフェなどの情報も集めて
最近では、いろいろなタイプのデイサービスが増えてきました。カラオケ、体操、ヨガ、料理、木工、卓球などができる施設もあれば、社会貢献的な活動・福祉的就労を行っている施設、保育園と併設されている施設もあります。時間帯も、朝から夕方までのタイプもあれば、午前中または午後の3〜4時間のタイプもあります。
まずは、本人が好きなことができるデイサービスを探してみませんか?
ただし、地域によっては、本人が気に入る施設がなかなか見つからないということもあるかもしれません。介護保険以外のサービスも確認してみることをおすすめします。たとえば、認知症カフェや体操教室などのコミュニティーで気にいるところが見つかるかもしれません。ケアマネジャーが情報を集める協力をしてくれますので、相談してみましょう。
ほかの施設に入居し、順番待ちをする方法も
介護施設の中でも自己負担が比較的安く、終身利用ができるといった理由から、人気があるのが介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」です。そのため、どこも入所待ちの人が多い状態です(ただし、ユニット型個室希望であるか、または一つの部屋に多数のベッドが配置されている多床室希望であるかによっても入所待ちの人の数は変わってきます)。
すぐにでも施設への入居を望んでいる場合は、ほかの施設に入居しながら、特別養護老人ホームへの入所の順番を待つ方法もあります。
施設はほかに、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、介護老人保健施設(略称:老健)、有料老人ホームなどがあります。
なお、同時に複数箇所の入所申し込みが可能です。

公開日:2020年5月20日
告知することが基本となると考えます。自分の病気が、どのような病気であり、治療法や予後を知り、将来、どのように生きていきたいかということを自己決定していくことは、どんな人であっても尊重されるべきであると考えます。その上でも、杓子定規に診断告知をすればよいという考えは違うと思います。以下は、告知を、告知された本人にとってプラスとするための工夫が書かれていますので、ご参考になれば幸いです。
本人の視点に立って考えてみる
認知症は、なかなか病識(自分が病気であるという認識)を得るのが難しい病気です。つまり、自分が認知症であるということに気づきにくいのです。ただ、なんとなく以前と違う、不調であるという感覚を本人がもっている場合も多くあります。
そうしたときに、単に「認知症である」と告知されたら、本人はどのように感じるのでしょうか。まずは、告知されたことで、本人にとってどのようなことが起こるのか、想像をしてみることが大事でしょう。
認知症のことが世間でよく語られるようになったとはいえ、まだまだ認知症に対する一面的な偏った見方をされてしまうことが多いのが現状です。だからこそ、認知症の告知をするかどうかは、本人の受ける精神的な衝撃を考えると、慎重に考えるべきことであると言えます。
医師と相談のうえ、医師から説明してもらう方法もあります。ただし、医師との信頼関係や、本人が認知症に対してどう思っているのか(恐れていたり、認めたくないと思っていたり……)ということを、本人から聞いたり、観察したりしたうえで、まずは医師にそのことをていねいに伝え、相談をして行うという慎重な取り組みが大切です。本人の知る権利を守りつつ、話せることまで話す、という方法もあります。
たとえば、介護保険のサービスを受けるためには、どうしても本人に告知しなくてはいけない、という場合もあるでしょう。そのときも、上記のように、慎重な取り組みが欠かせません。
告知をするときは、治療方針や今後の生活のことなども一緒に話をしてもらう
医師によっては、本人に告知をするとき、「直接脳を見ることができないので、確定診断(病理診断)は生きている間にはつかない」ことを説明し、そのうえで「臨床診断としては、アルツハイマー型認知症と考えます」と伝えることがあります。この伝え方は、医学的に正しい伝え方であるとともに、結果としてマイルドな表現となります。
ただし、どのような形で告知をした(診断を伝えた)場合でも、きちんとした治療方針、今後の生活で気を付けなければいけないこと、大事なこと(遺言など)があれば早めに考えておくことなどを、医師から一緒に伝えてもらわなければ、その告知は全く意味がないものとなってしまいます。
心地よさを感じてもらう
認知症が進み、意思を伝えられないような状態になったとしても、感情は残るといわれています。表情では確認できないかもしれませんが、本人にとって嬉しいこと、気持ちがよいことは何かを考えてケアをしてみてはいかがでしょうか。
まずは、お父さんが好きな音楽、香り、食べ物、仕事、趣味などを思い浮かべてみましょう。その中に、今のお父さんと一緒に楽しめるものがあれば、心地よさを感じてもらえるものがあれば、ケアに取り入れてみてはいかがでしょうか。音楽を流したり、仕事をしているときのお父さんの写真を見ながらみんなで話をしたり、医師と相談をして好きなものを一口でも食べてもらったり……。
触れるケアも、お父さんが嫌いでなかったとしたら、取り入れることもおすすめです。なでること、さすることで、気持ちが伝わることもあるのではないでしょうか。
痛みなどの辛さに気づいたら、早めに対応を
反対に、お父さんにとって辛いこと、嫌だと思うことは、しないことが大事です。また、たとえ痛くて辛くても、お父さんは自分から訴えることはできません。便秘がある、褥瘡ができてしまったなど、誰でもが苦痛と思うことに関しては早めに気づき、きちんと対応していくようにしましょう。
「お父さんの手を握ろうとしたけれど、手が冷たかったから温めた」というような、ささいなことでも、お父さんを思って考えてすることを積み重ねることで、お父さんの望むケアに近づいていけるのではないでしょうか。
ほとんどの人が目的や理由があって歩いている
認知症の人が、目的もなく、うろうろと歩き回ることを、いわゆる「はいかい(徘徊)」と言います。しかし、実際には、ほとんどの場合、何らかの目的や理由があって、外出をしています。
たとえば、「仕事に行こうと思った」「歩きたいから、歩き続けていただけ」という人もいました。娘さんの家に引っ越しをしてきた人は、「自分の家に帰る」と言って何度も外出をしました。それぞれの人には歩き回る理由があるのです。
歩き回る理由を、ぜひ、本人に聞いてみてください。道に迷っているときに聞いても、本人はその目的を忘れてしまっている可能性が高いので、できれば歩き始めたときに、「どこに行くのですか?」「どうして行くのですか?」などと聞いてみましょう。
「どこどこに行きたい」といったはっきりとした目的がある場合もあれば、よくよく聞いてみると、実は今いるところが不快であり、逃げ出したいという理由から外出したというケースもあります。目的や理由がわかれば、解決の糸口が見つかるでしょう。
「はいかい(徘徊)」ではなく、「外出中に道に迷う」という表現へ
「はいかい(徘徊)」という表現を取りやめた県や市があります。認知症の人の外出には、目的や理由があることが多いにもかかわらず、はいかい(徘徊)と表現することで、認知症の人の外出は危険という誤解や偏見につながる恐れがあるためです。新しく「外出中に道に迷う」といった表現をしています。
市区町村による高齢者見守りに関する情報を手に入れる
「はいかい(徘徊)」と呼ばれることが問題になるのは、まさに「外出中に道に迷う」ためです。歩き始めたけれど、帰れなくなってしまうのです。これは、今いる自分の場所や帰る道が分からなくなる「見当識障害」という症状が原因です。
このようなことが繰り返されるようになったら、一番考えなくてはいけないのが、本人の安全の確保です。遠くまで行ってしまい事故に巻き込まれてしまったり、夏場の炎天下などでは歩き続けて脱水状態になったりなど、生命の危険があります。
本人の洋服や持ち物に住所や家族の連絡先(携帯電話の番号など)を記載しておく、GPSなど本人の位置がわかるシステムを導入しておく、それぞれの市区町村が行っている高齢者見守りに関する情報を手に入れて登録が必要な場合はその手続きをしておく、といったことが必要になります。
また、急に本人を迎えに行ったり、探しに行ったりすることが起きてきたら、自分の職場の人には事情を説明しておくほうが、最近では同じ環境の人がいたり理解してくれる人が多かったりすることから、協力を得られやすいようです。
人によって失敗の理由は違う
認知症が進行してくると、尿意や便意を感じなくなったり、症状(実行機能障害や失行、失認など)が現れたりすることで、排せつが上手くできないことが起こってきます。
排せつの失敗の理由は人それぞれです。しかし、誰もが同じなのは、排せつの失敗により自尊心を傷つけられる、という事実です。
排泄がうまくできない理由を探り、できるだけ本人が失敗をしないですむようなケアを考えてみてください。
失敗の理由を探り、失敗しないで済む環境を整える
排せつがうまくできなくなる理由は、人によって違い、さらに理由が一つではなく、複数ある場合もほとんどです。まずは、本人の困りごとは何なのか聞いてみましょう。そして、よく観察をしてどんな動作が難しくなっているのか、どのようなところで困ってしまうのかを確認します。
排せつがうまくできない理由として、よくあることと、それに対してのケアの例を以下に記載しますので、参考にしてください。
- トイレの場所がわからない
トイレを探しているうちに我慢できずに、別の場所で排せつするなどが起こる。特に夜間は迷ってしまうことが起こりがち。トイレの扉に「トイレ」または「便所」など、本人が理解できる文字を書いた紙を貼ったり、トイレの電気をつけておいたりなど工夫を。トイレまでの通路に色付きのテープを貼っておく方法も。 - トイレに入ってからの動作(ズボンを下す⇒パンツを下す⇒便座に座る⇒排せつする)がわからない
できないところだけを手助けする。 - 尿意を感じない
定期的に声かけをしてトイレへと誘導する。本人の排泄リズムを知るために、医師に相談をして尿量を測るという方法も。
病気が潜んでいることも。医師に相談を
排せつの失敗が、病気から起こっていることもあります。認知症でなくても高齢者であれば、前立腺肥大症(男性の場合)や過活動性膀胱などの泌尿器科疾患が合併する場合もあります。また、便秘のコントロールがうまくいかず、下痢になってしまうことで失敗が助長される場合もあります。気になるときはかかりつけ医に相談をしましょう。
手に便がつく理由を考える
手についた汚れを落としたいとき、認知症の人は失行などの症状により、手の汚れの落とし方がわからなくなり、近くにあるものでその汚れを落としてしまうことがあります。トイレの壁に便をなすりつけたのは、手についた便を落としたかったからではないでしょうか。
問題は、便をなすりつけたという行為そのものよりも、なぜ手に便がついてしまったのか、という点です。もしかしたら、便が出そうで出ないときに手で摘便(肛門から便をかき出す行為)をしたのかもしれません。トイレットペーパーの使い方がわからず、お尻を手で拭いてしまったのかもしれません。まずは理由を探ってみましょう。
便が出なかったことが理由であれば、便秘にならないように医師に相談をして、排便のコントロールを行うといいでしょう。
トイレットペーパーの使い方がわからないことが理由であれば、本人がトイレに座った際に、切ったトイレットペーパーを渡して手に持ってもらうことで、自分で拭くことができる場合もあります。
どのような理由であれ、便が手についたことは、本人にとっては不快なこと、嫌なことであったことは間違いないでしょう。その気持ちに寄り添いながら、ケアの方法を考えましょう。
排せつの失敗を本人が気にしているときにはオムツを
排せつの失敗について、本人が恥ずかしいと感じているときは、さりげなく紙おむつをおすすめしてみましょう。
また、排せつの失敗が続くことで、「もしも外出先で失敗をしたらいけない」という思いから、行動範囲が狭くなってしまうことがあります。そこで、「外出のときだけでも紙おむつを使ってみませんか?」と提案をしてみるのもいいでしょう。
紙おむつも、下着のように薄くて色もさまざまなパンツタイプから約5回吸収できるパンツタイプなどまで幅広くあります。紙おむつ選びに悩んだら、ケアマネジャーなどに相談してみましょう。
本人が「紙おむつをしたくない」というとき
どうしても排せつがうまくいかず、紙おむつを使わなくてはならない状況になったけれど、「本人が紙おむつをしたくないというので困っている」ということがあります。
紙おむつを使いたくない理由は、人それぞれです。装着時の不快感、使うようになってしまった自分への不甲斐なさ、ケアを行う家族への申し訳なさなど。そのため、家族の助言を素直に受け入れられない人も多いでしょう。
本人の意思を尊重しつつ、家族以外の人から、本人に紙おむつの使用をすすめてもらうのも、よいきっかけになるかもしれません。デイサービスを利用しているのであれば、デイサービスのスタッフに現状を伝えして、たとえば施設での入浴のときにさりげなく本人に紙おむつをすすめてもらうなど、協力してもらうのもいいでしょう。
きっかけとなっているストレスに注目を
「暴言」であると思うようなことを言われることで、家族やまわりの人は、大変辛い思いをしていることと思います。
では、本人はどのような気持ちなのでしょうか。
暴言は、認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つです。これは、認知症の中核症状(記憶障害や見当識障害など)をもちながら、ストレスが重なることで起こると言われています。暴言を吐くお父さんには、何かしらのストレスがあるのかもしれません。影響を与えるストレスには、人によるストレス(嫌なことを言われた。自分の思いを聞いてもらえないなど)、環境によるストレス(寒い、暑い、うるさい、臭いなど)、薬(便秘薬、向精神薬など)の副作用によるストレスなどがあります。まずは、お父さんのストレスになっていることが何なのかを、本人に聞いてみたり、観察して探してみたりしましょう。ストレスの元になっているものを取り除くことで、イライラが落ち着き、暴言も少なくなる可能性があります。
なかには暴言の理由が、ストレスよりも認知症の症状との関係が深い場合があります。気になるときは医師に相談をしてください。
家族であればこそ、感情が先に立ち、つい強い口調で言い返してしまったりすることもあるでしょう。家族にもストレスが溜まり、体調を崩してしまうことがないように、辛くなってきたら早めに地域包括支援センターや、(介護保険サービスを利用中であれば)ケアマネジャー、利用しているデイサービスの担当者、通院している病院の医師や看護師などに、自分の体調も伝えて、相談してみてはいかがでしょうか。

公開日:2020年5月20日
本人の視点に立って考えてみる
基本は、同じものをいくつも買っても、「また買ってきた」「もう買わないでって言ったでしょ」などと、そのことをあからさまに指摘し非難することをしないほうがいいでしょう。
認知症による記憶障害から起こる場合は、いわば新しいことを脳の記憶のポケットに入れておくことが難しくなっていますので、「買ったものを忘れる」のではなく、「買ったこと自体を覚えておくことができない」ということが起こります。
そのため、本人が買ってきた同じものが目の前にたくさんあったとしても、「それは自分が買ってきたもの」と自覚することは難しくなります。そうしたときに、「また買ってきた」「もう買わないで」と言われたらどうでしょう。「なんでそんなことを言われるんだろう」と思うのではないでしょうか。そのような状態の中、皆さんにとっての現況を伝えても、そのことをめぐってけんかになってしまい、お母さんの精神状態は不安定になってしまいます。
同じものを繰り返し買うということが、前頭側頭型認知症の場合は常同行動(同じ行動を繰り返す)という症状から起こることがあります。その場合は、主治医と相談することが大切になりますので、もしも現時点で診断されていない場合は、医療機関(かかりつけ医やもの忘れ外来のある病院)にて診察してもらうことをおすすめします。
買うものによっては、工夫次第で本人の思いのままに
たとえば、いくつも買うものがニンジンのように、家族や近くの兄弟や親戚、近所の人に協力してもらって消費できるものであれば、買うことをやめてもらわなくてもよいかもしれません。
困ってしまう場合は、まわりの人に協力してもらう方法も
本人や家族が困ってしまう場合は、買い物先のお店の人に協力してもらう方法もあります。
お母さんがどこで、その買い物をしているかにもよりますが、買い物先が小さな商店であれば、そのお店の人に事情を話しておきましょう。そして、お母さんが買い物をしているときや会計のときに、「この〇〇は、息子さんに購入していただいているので大丈夫です」などと、お店の人から話をしてもらうというのはいかがでしょうか。
ある商店では、1日に2〜3回、同じ食品を買う方のことを心配して、その方のためのノートを用意したそうです。その方がある食品を購入したら、その方に日付と名前をノートに書いてもらい、また同じ日に来店して同じ食品を購入しようとしたときには、そのノートを見てもらい「先ほど一度、買われましたので、同じものがお家にあると思います」と説明をしているとのことでした。このような方法も試してみてはいかがでしょうか。
同じものを買ったということを伝える場合、身近な家族から伝えられるよりも、少し離れた人から伝えられるほうが、受け入れてもらえる場合が多いようです。
クーリング・オフ制度を使う
訪問販売、電話勧誘販売などの場合は、契約後一定の期間内であれば、無条件で契約が解除できる「クーリング・オフ制度」を利用できる可能性がありますので、消費者ホットライン(局番なしの188。つながらない場合は、平日の場合Tel : 03-3446-1623 受付時間は平日10時~12時/13時~16時)に電話をして、相談をしてください。
継続的に電話での商品の斡旋などがある場合は、迷惑防止対策機能付きの電話へ切り替えるなどの方法もありますが、この件についても消費者ホットラインや地域包括支援センターで相談することをおすすめします。
詐欺にあっているのでは思ったときは消費者センターなどに相談を
訪問販売や通信販売などでの買い物が続いているときは、詐欺にあっている可能性もあります。消費者ホットライン、地域包括支援センター、警察、法テラスなどで相談をしましょう。
「社会福祉協議会」の「日常生活自立支援事業」という支援サービスを利用する方法もあります。日常的金銭管理サービス(日常生活に必要な預金の払い戻し、預け入れ、解約の手続きなど)を行ってくれます。また、「成年後見制度」を利用する方法もあります。ただし、お金の出し入れに関しては制限が発生する場合がありますので、あらかじめ確認しておくようにしましょう。いずれの場合も、まずは地域包括支援センターで相談を。
本人の視点に立って考えてみる
身近な人から「ものが盗られた」「お金を盗まれた」と訴えることは、認知症の人によくあることです。「もの盗られ妄想」と言われています。おもな原因は、認知症の症状の一つである記憶障害です。
「大切なものだから、見つからないところにしまったおこう」と思い、しまうのですが、しまったこと自体を覚えておくことができないため、「通帳が(目の前から)なくなった」と思い、慌ててしまいます。捜しても、なかなか見つかりません。すると、「もうここにはない。誰かに盗まれたのではないか」と思うようになります。これは、皆さんの体験からも想像できることでしょう。
それだけでなく、認知症の人は、記憶障害や見当識障害、幻覚などといった症状があることにより常に不安な気持ちをもっているため、不安を解消するためにも疑わないではいられないような感情になることも考えられます。
まずは一緒に探す
「通帳がない。盗まれた」というときは、「盗まれたのではなくて、お母さんがしまったのよ」などと本人の言葉を否定することはできればせずに、「それは困ったね」と本人の気持ちに寄り添う言葉をかけましょう。そして、一緒に通帳を捜します。
捜していて本人が見つけたときは、「あってよかった」と一緒に喜びましょう。もしも自分が先に見つけた場合は、「ここにあった」と伝えると、「なぜそこにあったことを知っているの? やっぱり盗んだのね」とかえって疑われてしまうかもしれません。そこで、「こっちのほうも探してみたほうがいいよ」などと、さりげなく、見つけた場所のほうへと誘導するような言葉をかけ、本人に見つけてもらうようにします。
通帳のような大切なもの(しまいこんでしまうもの)は管理しておく方法も
本人の代わりに通帳を管理し、通帳のコピーを本人がよく見えるところにおいておき、「しっかりお金は管理されている」ことを説明するという方法もあります。もしも自分が信用されていないのであれば、通帳のコピーにほかの家族の名前を記載しておくのもよいでしょう。
ただし、その前に、ものが盗まれたということの背景にある本人の心配ごとがなんであるのかを、具体的に把握することも大切です。たとえば、「お財布の中にお金がなくて心配」ということから通帳をしまいこむのであれば、少額でも構わないので財布の中にお金を入れておいてあげることで、不安が少なくなり、様子が変わることもあります。
疑われて辛いときは……
本人にとって身近な人、もっとも近くでケアしている人が、「盗んだ人」と思われることが多く、「一生懸命お手伝いしているのに、疑われるなんて辛い」という声を多く聞きます。本人との関係性が以前より悪くなってしまった場合は、可能であれば一時的に本人と距離をとり、その間はほかの兄弟や親戚などにみてもらうのもよいでしょう。また、地域包括支援センターや、(介護保険サービスを利用中であれば)ケアマネジャー、かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。
本人の視点に立って考えてみる
その人が認知症であり、実際に運転することで事故を引き起こしてしまう可能性が高ければ、すぐに運転をやめてもらうのがいいでしょう。ただし、何の説明もなく、廃車にしてしまったり、鍵を取り上げてしまったりするのは、本人の精神状態を不安定にする可能性が高くなります。本人の思いを聞いたうえで、家族の思いや道路交通法(以下の*を参照)のことをぜひ本人に伝えて、話をしてみてください。話した内容を忘れてしまうかもしれませんが、話を聞いてもらったことや家族の思いを聞いたときの感情は残るでしょう。
長年車の運転をしてきた人であれば運転に自信をもっているのではないでしょうか。また、運転することがとても好きな人もいます。そのような人が急に「車の運転をやめて」と言われても、すぐに納得することは難しいかもしれません。
しかしながら、本人は認知症と診断される前から、記憶が曖昧になることなどから「いつもとは違う」ということは感じていたはずです。運転をしていても、もしかしたらハッとすることがあったかもしれません。「このままでは危ないかもしれない」「運転はやめたほうがいいのかもしれない」ということは、一度は思ったかもしれないのです。そのような本人の今の思いをまずは直接聞いてみたうえで、できることなら「やめさせる」のではなく、自分からやめられるような方向へと向かえるような声かけや環境の工夫を考えてみましょう。
本人が今まで運転をしていて楽しかったことをたっぷりと聞いたあと、「これからは車で出かけたいときは、できるだけ私が乗せていくから、遠慮なく言って」と言ってみたところ、「そうだな」と納得してくれた例もあります。
知っておきたい「認知症の人の自動車運転を禁止する道路交通法*」
2017年3月に施行された改正道路交通法*では、75歳以上のドライバーの認知機能検査が強化され、認知症であると診断された場合は、運転免許が取り消されるか停止されることになりました。
難しい場合は、医師や地域包括支援センターに相談を
「すぐに運転をやめてもらいたい状況なのに、本人が納得せず、運転をやめようとしないで困っている」という場合は、まずは、家族の中で誰が話をしたら聞いてくれるのか(息子がいいのか、孫がいいのかなど)話し合ってみましょう。妻の話を聞こうとしなかった人が息子とじっくりと話をしたら納得した、という例もあります。また、どうしても納得しないので、仕方なく車を地方の親戚に預けたところ、家に車がないため運転を諦めた、という例もあります。運転免許を返納するまでにはとても苦労をする場合が多いので、実際に体験した人の話を参考に、いろいろな形で試してみるのもいいでしょう。
認知症疾患医療センターなどに受診することを本人に提案し、「ここで運転できると証明してもらったら運転してもかまわないけれど、私は心配なの」と素直に話をしてみるのも方法の一つです。実際、医師から言われたことをきっかけに、運転をやめる人もいます。
認知症の種類や進行程度によっても対応は違ってきますので、なかなか上手くいかない場合は、認知症専門医に相談するとよいでしょう。
状況にもよりますが、近くの交番に相談したり、地域包括支援センターの認知症地域支援推進員などに相談し訪問してもらったりすることで、突破口がみつかる場合もあります。
本人の視点に立って考えてみる
万引きが、前頭側頭型認知症のように前頭葉機能低下に起因する場合と、アルツハイマー型認知症のように記憶障害や実行機能障害などにより支払い自体を忘れてしまう場合などがあります。
前頭葉機能低下に起因する場合は、脱抑制といって、自分の行動を抑えることができないという症状が現れます。このとき、その行動がまわりへの迷惑となることが理解できないことも特徴の一つです。そのため、まわりから見たら「ものを盗んだ」という反社会的な行為に見えることでも、本人にとっては「やりたいことをしただけ」であり、犯罪との自覚はありません。記憶障害や実行機能障害などにより支払い自体を忘れてしまう場合も、「段取りがわからない」といった症状から起こることであり、本人に悪気はありません。
どちらの場合も、まずは医師に相談をして、このことが認知症の症状から起こることであることを、本人は可能な限り、ご家族はしっかりと理解することが大切になります。
お店の人や警察に事情を説明しておく
近くの商店街やコンビニエンスストアでも、「父が認知症である」ということをきちんと説明しておかないと、認知症のお父さんが万引きにより勾留されてしまう場合もあります。最近では、認知症の人が増え、お店側の理解も進んでおり、対応できるところも増えています。まずは、周囲に認知症であることをオープンにし、協力を得られるようにしましょう。
具体的には、よくいくお店にお父さんが認知症であることを説明すると同時に、「父がお支払いせずに商品を持って返ってしまった場合は、必ずあとでお支払いをしますので、その節はお手数ですがご連絡ください」などと伝えておくといいでしょう。ほかにも、警察、地域包括支援センター、民生委員、町内会、近所の人などにも、お父さんのことを伝えておき、協力してもらうといいでしょう。
介護保険によるサービスを利用する方法も
離れているお父さんのところに、そう度々訪れることができないという事情もあり、そうしたなか万引きといわれることが続けば、家族も疲弊してしまうことでしょう。
ぜひ、地域包括支援センターに相談をしてください。介護保険を使ってデイサービスを利用することで、日中における心配は少なくなるでしょう。
一人で抱え込まずに、医師やケアマネジャーなどにも相談しながら、サービスを使ったり、ときには誰かに協力をしてもらったりしながら、本人と家族にとってよい方法を見つけていってください。
本人の視点に立って考えてみる
夕方になると妄想やせん妄など精神的に調子が悪くなる人はときどきいます。その人がどのような種類の認知症であるかということにもよります。
本人からすると、「家の中に誰かがいる」というのは、大変怖いことで、おびえるのは当然のことです。誰かがいるということを否定せず、本人が怖がっているのであれば、「私がいるから大丈夫。心配いらない」などの優しい声かけは重要になってきます。そして、なぜそのようになるのかを、まわりの人が理解をして、対策を考えていきましょう。
認知症の症状や意識障害によるものなどがある
「家の中に誰かがいる」と訴えていることが、認知症の症状の一つである「幻覚」に起因することがあります。
幻覚には、存在しないものが見える「幻視」をはじめ、「幻聴」「幻臭」などがあります。レビー小体型認知症の人にとって、幻覚は目立つ症状の一つです。アルツハイマー型認知症などほかの認知症の人にも幻覚は起こります。
また、「せん妄」が起因する場合もあります。せん妄とは、からだの病気などさまざまな原因で生じる意識障害です。症状は急に現れ、数時間から数週間で消える、一過性のものであることが特徴です。認知症の人は、脱水や発熱、下痢、薬剤の影響などにより、せん妄を起こしやすい状態にあります。
どちらの場合も、まずはかかりつけ医に相談をしてみましょう。
レビー小体型認知症のように幻視に起因した妄想の場合には、コリンエステラーゼ阻害薬(アリセプトなど)や漢方薬を用いることで速やかに消失する場合もあります。
また、本人の精神的なストレスや不安感から、妄想が強くなることも十分にありますので、何か本人にとってストレスがないのか考えてみることも重要でしょう。
幻覚が見えても、怖がったり不安になったりしなければ、問題はありません。