生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

30 「ヒトのクローンは許されるか?」

クローン羊を誕生させたロスリン研究所には、死んだ肉親や愛するペットのクローンを作って欲しいという依頼が届いた。また、アメリカ、オレゴン州の地域霊長類研究所ではクローン猿が誕生していたことが判明。これはすでに家畜の世界ではおこなわれていた、受精卵からのクローンだったが、霊長類としては初めてだったため、次はヒトのクローン誕生かと世界を震撼させた。
クローンが話題になると、ヒトラーのような独裁者のクローンがつくられるイメージが強調される。しかし、クローンはある特定の個体そのものの複製ではなく、同じ遺伝子をもつ個体のことである。遺伝子は同じでも、成長の過程で、まわりの環境により個性は特徴づけられていく。

1998年1月、アメリカのリチャード・シード氏は、不妊に悩むカップルのために人間のクローンをつくる計画があると発表した。しかし、この発表には、資金や技術の裏付けがないうえ、研究協力者がいないことも明らかとなり、空騒ぎにおわった。
しかし、ヒトのクローンが検討に値するケースもあるのではないかと主張する研究者も現れた。ヒトのクローンがもし、可能となればどんなことが起こりうるだろうか。

不妊で悩むカップルは、他人の精子や卵子を使うよりも、カップルどちらかのクローンが欲しいと願うだろう。シングルマザー、レズビアンカップルは、自らの体細胞と未受精卵から、自分と同じ遺伝子の子どもを持つことができることになる。
あるいは、突然事故で幼い子どもを失った両親は、その子どもと同じ遺伝子をもつ子が欲しいと願い、クローン技術が用いられるかもしれない。
臓器移植を待つ人は、あらかじめ自分のクローンをつくっておき、その臓器を利用することで拒絶反応が起こらない、最も安全な移植ができるようになる。そして死が間近に迫ってきたときに、自分と同じ遺伝子をもつ新しい生命をこの世に誕生させることで、復活再生の願いをかなえることにもなるのである。

新しい技術開発は、とどまることがない。はたして、ヒトのクローンをつくることは許されるのだろうか。

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