生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

27 「自分で致死薬を飲みなさい」

1998年3月24日、オレゴン州に住む余命2ヶ月と診断された80代半ばの乳がんの患者が、医師の処方した致死薬を自分で飲んで死亡したことが報じられた。彼女は、医師による自殺幇助を容認するアメリカで最初の法律「オレゴン州尊厳死法」に基づいて、安楽死したのだった。

オレゴン州尊厳死法では、医師は死を要請した患者に致死薬の処方箋を渡すだけであり、それを投与することは禁じられている。薬剤師が処方箋に従って致死薬を調合し、これを服用するかどうかは患者だけが決められるのである。

法律の主な要件は
1.患者は成人であること
2.意思決定能力があること
3.オレゴン州民であること
4.余命6ヶ月未満の末期患者であること
5.自由意思に基づいて致死薬の処方箋を依頼したこと
以上の5つの要件をみたしていなければならない。
そして医師には
1.意思決定能力をもつ末期の病状にある患者が、自由意思に基づいて要請をおこなっていることの確認
2.患者に対する病状の診断と予後についての説明、致死薬を服用することの危険性とその結果についての説明、患者の苦痛を和らげる看護や、ホスピス・ケア、痛みを緩和する医療など、他の選択肢についての説明
3.第三者の医師に1.と2.の確認を求めること
4.患者がうつ病などの精神状態である場合に、カウンセリングを受けさせること
5.患者が近親者に連絡するよう求めること
6.要請をいつでも撤回する機会を患者に与えること
以上の6つを義務づけている。
しかし、これらの条件にもかかわらず、さまざまな混乱が生じている。オレゴン州尊厳死法は法案の段階から、障害者などの弱者が不当な差別を受けるおそれがある、医師が致死薬を処方することは治療者としての医師の義務に反する、などの反論があがり二度の住民投票を経て施行された。
そして、法律の実施についても、州保健局が、患者の死亡証明書の全てを調査するのではなく、サンプル調査でよいとしていること。また、1998年2月、州の税金でまかなわれる健康保険制度で、自殺幇助に使用される薬代などの費用が支払われることが発表され反論が高まっている。
オレゴン州尊厳死法では、患者がいつどのように致死薬を飲むかについては、患者自身が決めることになっており、医師がその場に立ち会うことは義務づけられていない。しかし、反対派は、致死薬を飲んでも死にきれずに苦しむ場合があると警告している。

今は・・

2014年11月1日、オレゴン州でブリタニー・メイナードさん(29歳)が、自分の寝室で薬物を服用して亡くなった。メイナードさんは、この年の4月、医師から脳のガンで余命半年との告知を受けた。痛みなどの症状がひどくなるにつれて人間らしい最期を迎えたいといてオレゴン州に夫とともに転居、自ら死を選ぶとの声明を撮影した動画をインターネット上で発表しており、その動画は世界中で再生され大きな議論を巻き起こした。

ページトップへ