生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

24 「人工呼吸器を外して欲しい」

植物状態の患者から生命維持装置の取り外しを、患者のプライバシーの権利に基づいて認めた最初の判決は、カレン・アン・クインランの例である。

1975年、ニュージャージー州に住む21歳のカレン・アン・クインランは、昏睡状態に陥り、病院に運ばれて人工呼吸器が取り付けられた。そして、植物状態であると診断された。カレンの両親は、彼女は植物状態では生きていたくないだろうと考え、医師に人工呼吸器の取り外しを依頼した。しかし、医師は、人工呼吸器を取り外すことは医師には許されてないと、その依頼を拒否した。

カレンの父親は、州の第一審裁判所に、自分を娘の後見人として認め、生命維持装置を停止させる権限を与えるよう求めた。しかし裁判所は、医療に関する決定は医療の専門家に委ねられるべきであるとして、生命維持装置の停止を認めなかった。

そこで父親は、州の最高裁判所に上訴し、1976年、今度はカレンの生命維持装置の停止は合法であるという、父親の訴えを認める判決が下された。 その理由として最高裁はまず、患者は望まない治療を拒否することをプライバシー権として憲法で認められているとした。その上で、治療を続けても患者に回復の見込みがなくなってくるある段階で、人々の生命を守るという公の利益よりも、患者のプライバシー権が勝るようになるとした。 また、裁判所は父親を、カレンに代わって彼女のプライバシー権を主張する後見人と認めて、父親に主治医を選ぶ権利を与えた。そして、後見人、家族および主治医の意見が、カレンの意識が戻る可能性がなく生命維持装置を取り外すべきと一致し、病院の倫理委員会も同意すれば、これを実行しても法的責任を問わないとした。

その後、人工呼吸器が取り外されたにもかかわらず、カレンは自発呼吸を始めた。そして、1985年、肺炎を併発して31歳で死亡するまでの9年あまり、意識を回復することなく植物状態で生き続けた。

植物状態の患者の延命治療を停止することは許されるでしょうか。このような場合、家族が患者本人の意思を判断することは認められるでしょうか。カレン・アン・クインランのような植物状態の場合には、これを死とみなしてもよいという意見がありますが、あなたはどう思いますか。

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