生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

18 「未来のカルテを知りたい」

遺伝子の研究がすすむにつれて、病気になる前に診断できる病気が増えてくる。治療方法の研究はそのペースにおいつかないので、診断はできても治療法がないということがおこることになる。

ハンチントン病は、進行性神経変性疾患。30歳から50歳のあいだに発病し、舞踏運動、痴呆、精神障害、脳萎縮をきたし、死にいたる。一つの原因遺伝子による遺伝病であることが知られおり、この遺伝子をもっていれば必ず発病する。つまり、親のどちらかがこの病気であれば、子どもには50%の確率で遺伝していることになる。ベネズエラにこの病気の家系があり、その家系を調べることで原因遺伝子が第4染色体上にあることが判明、1993年に遺伝子が特定された。

遺伝子が特定されるまでは、両親のどちらかがこの病気で亡くなっている場合、子どもは遺伝している可能性はあるが、その確率は50%だった。ところが遺伝子検査をすれば、病気の遺伝子をもっているか、いないかがはっきりわかる。遺伝子を発見したマサチューセッツ総合病院のジェームス・グセラ博士は、「遺伝子の発見によって、ハンチントン病を事前に診断できるようになりました。遺伝子を調べることはいつでも可能です。本人になんの兆候がなくても、検査することができます。例え、兆候が現れる30年前であっても、遺伝子を調べればぴたりとわかり、30年後には必ず発病するのです。」という。

医師によっては、治療法のないこの病気について遺伝子検査をすることに慎重である。「患者さんは、ほんとうに遺伝学について理解してくるのではなく、病気でないことを確認したいので検査してくれといっている場合がある」という医師もいる。アメリカでは、「将来、発病する」と診断され自殺した例がある。妻がこの病気で亡くなったという男性が、娘の検査をこっそり依頼してきたという例もある。もし陽性だったら自分の胸にしまっておき、病気でないとわかったら伝えたいというのだ。

私たちは未来のカルテをのぞく手段をもってしまった。
あなたは、それをみたいと思いますか。

今は・・

2013年5月14日付けのニューヨークタイムズで、女優アンジェリーナ・ジョリーさんが(当時37歳)、できるだけ乳がんになるリスクを減らそうと自らの両方の乳房を切除する手術を受けたことを明らかにし、世界的に大きなニュースとなった。このなかでジョリーさんは、母親を56歳の若さでがんで亡くしたため不安を感じて遺伝子検査を受けたところ主治医から乳がんにかかる確率が87%と非常に高いと指摘されたとしている。
 アンジェリーナ・ジョリーさんのニュースは日本でも大きな反響をよんだ。

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