生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

17 「少しでも長く生きてほしい」

無脳症で生まれた赤ちゃんの延命治療をめぐって、母親と医師の間で裁判が起きた。

1992年10月、アメリカ、バージニア州で、ステファニー・キーン、またの名をベビーKとして知られている赤ちゃんが帝王切開で生まれた。無脳児であることは生まれる前に判明していた。出産後まもなく、ベビーKは呼吸困難となり、その度に人工呼吸器を取り付けなければならなかった。医師らは母親に、延命治療を続けても、本人にとって無益との判断から治療の打ち切りを打診した。しかし母親は、敬虔なクリスチャンで、彼女の宗教観からこの要求を拒否した。彼女は病院に赤ん坊の命を保つために積極的治療を要求した。母親と病院との論議は解決することがなく、妥協点が見いだせなかったため、病院はベビーKの治療を中止する許可を裁判所に求めた。
裁判での争点は、病院はベビーKが呼吸困難な状況時に呼吸維持をおこなう義務があるか、否かということだった。病院は、延命治療はベビーKに何の医学的利点をもたらすものではなく、よって倫理的にもそれをおこなう義務はないと主張した。しかし連邦地方裁判所、続いて連邦控訴裁判所においても、病院側の主張は認められなかった。そして連邦最高裁判所へ上訴されたが、1994年10月却下された。この判決より、ベビーKは、人工呼吸器の力を借りて、意識のないまま生き続けることが決まった。そして、生まれて2年半後の1995年4月、ベビーKは心停止で亡くなった。

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