生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

16 「治療はしないで」

アメリカで、新生児治療について、大きな論争をよんだケースがある。

1982年4月、アメリカ、インディアナ州ブルーミントン病院で、一人の赤ちゃんが生まれた。この子は、その後ベビー・ドウとよばれるようになる。生後すぐにダウン症であることがわかり、食道閉鎖と気管食道ろうを合併していた。食道が正常に形成されていないため、ミルクを飲ませても胃には届かず、手術をしなければ餓死する。
医師たちの間では、積極的に治療するかどうか意見が分かれた。治療する場合、通常は食道の修復手術がなされるが、この成功率をめぐっても、85~90%ほどの確率で成功するという医師と50%という医師とに分かれた。二つの見解を与えられた両親は、治療をしないことが家族全体にとっての最善の利益になると判断した。それは、外科手術や栄養補給は一切おこなわず、痛みを取り除く薬だけを与えるという選択だった。そのような処置では、長くても1、2週間で死に至るとみられた。

ブルーミントン病院の管理者は、モンロー郡巡回裁判所に、両親の考えに従うべきかどうかについての判断を求め、裁判所は、両親は治療方針を決定する権利をもつと認めた。ところがモンロー郡検察局が、ベビー・ドウへの栄養補給、救命手術を求めてインディアナ州最高裁判所に上訴した。州最高裁がこれを却下したため、検察官は連邦最高裁判所の介入を要請するためにワシントンへ向かったが、訴訟手続きを開始できないうちに、生後6日目、ベビー・ドウは死亡した。

障害をもつ新生児が、救命のための治療を受けなかったことについて、あなたはどう思いますか。

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